欧州を中心に大半のリーグにとって、シーズンの半ばに当たる冬の移籍市場。各クラブは優勝争いや欧州チャンピオンズリーグ(CL)、欧州リーグなどの国際大会への出場権獲得、あるいは残留争いを見据えて陣容の整備に取りかかった。シーズン前のような抜本的なチームの再編にはなかなか踏み込めないにせよ、戦力のてこ入れ、負傷者の穴埋めなどで選手の入れ替えが行われる。一方で、この時期のJリーグなどは開幕前となり、新シーズンへの戦力補強を行うタイミングとなる。

 FIFAのまとめによると、男子の国際移籍は5,863件に上った。2021年冬は2760件で、それに比べると2倍以上。右肩上がりで件数は増えている。移籍金の総額は23億5000万ドル(約3549億円=1ドル151円で換算)に達し、そのうち欧州のクラブが支払った移籍金が約3分の2に相当する17億4000万ドル(約2627億円)、欧州のクラブが受け取った移籍金は18億8000万ドル(約2839億円)となった。移籍金も2021年は5億9400万ドル(約897億円)で、2023年から2024年は減少したが、全体としては増加傾向にあるといっていいだろう。

2025年冬の国際移籍件数(FIFA公式サイトより)2025年冬の国際移籍における移籍金(FIFA公式サイトより)

 移籍情報専門サイト、Transfermarktによると、この冬の移籍金の最高額はアストンビラ(イングランド)からアルナスル(サウジアラビア)に移ったコロンビア代表FWジョン・デュランの7700万ユーロ(約120億円、1ユーロ156円で換算)。エジプト代表FWオマル・マルムシュがアイントラハト・フランクフルト(ドイツ)からマンチェスター・シティー(イングランド)に引き抜かれた際の7500万ユーロ(117億円)が2位で続き、ジョージア代表FWフビチャ・クバラツヘリアがナポリ(イタリア)からパリ・サンジェルマン(フランス)へ移籍した7000万ユーロ(約109億円)が3位となった。100億円超えの「ビッグディール」は3件で、2024/2025シーズン開幕前にあったフランス代表FWエムバペのレアル・マドリード(スペイン)入り(実際にエムバペの移籍は移籍金ゼロではあったが)のようなスーパースターの移籍は見当たらなかった。

 日本勢ではセルティック(スコットランド)でゴールを量産していた古橋亨梧が、欧州五大リーグへとステップアップ。レンヌ(フランス)へ1200万ユーロ(約18億7000万円)といわれる移籍金で移った。なかなか日本代表に定着できない理由の一つにスコットランド・リーグのレベルの低さを指摘する声もあっただけに、よりレベルが高いリーグに身を置いて代表の森保一監督へのアピールを狙う。日本人関連では上田綺世の同僚だったメキシコ代表FWヒメネスが3200万ユーロ(約49億9000万円=この冬10位の移籍金)でACミラン(イタリア)へと旅立った。上田にとっては定位置獲得のチャンスが広がったといえるだろう。

 また、英メディアによると、ブライトンの三笘薫にはサウジアラビアのアルナスルから6500ユーロ(約101億4000万円)と言われる移籍金での獲得の申し出があったが、ブライトン側が拒否した。アルナスルにはポルトガル代表のスーパースター、40歳のクリスティアノ・ロナルドが在籍しているとはいえ、27歳と選手として最も脂の乗っている三笘の年齢やリーグ自体のレベルを考えれば、プレミアリーグでプレーし続けるのが自然な選択といえるだろう。

 そのほか、Jリーグから欧州にはパリ五輪世代の選手が多く挑戦することとなった。伊東純也、中村敬斗がいるスタッド・ランスには柏から関根大輝が加入。山田楓喜は東京Vからポルトガルのナシオナルに新天地を求め、大畑歩夢も浦和からベルギーのルーベンに移籍した。

2025年冬の国際移籍におけるイングランドと日本の移籍金比較(FIFA公式サイトより)

 ただ、日本の動向を見てみると、残念ながら世界との格差は一目瞭然といえる。日本のクラブが国際移籍に支払ったのは1080万ユーロ(約16億8500万円)で、世界全体の0・5%にも満たない。移籍件数(獲得)は71件。例えば、世界のサッカーをリードしているイングランドは190件の移籍(獲得)で6億2200万ユーロを費やしている。Jリーグは国際競争力を高めるために、2026年からシーズンを欧州主要リーグに合わせて8月開幕に移行する。とはいえ、放送権ビジネスを基盤としたリーグの規模、世界的な人気に支えられたスポンサー集めなど、Jリーグのクラブがすぐさま太刀打ちはできない現実が移籍市場のデータからも改めて浮き彫りとなった。

inside.fifa.comより、2025年冬の移籍マーケットを振り返ります

VictorySportsNews編集部