文=池田敏明
国を挙げてのアスリート発掘事業がスタート
2020東京五輪とその先のスポーツ大国化に向け、国を挙げてのアスリート発掘事業がスタートする。4月19日、スポーツ庁の鈴木大地長官が、「ジャパン・ライジング・スター・プロジェクト」(略称:J-STAR Project)の開始を明らかにした。
同プロジェクトは日本スポーツ振興センターから受託された日本体育協会が、都道府県体協などと連携して行うもので、五輪は中、高校生世代、パラリンピックは中学生から30代までが対象。今後は拠点県を決め、6月には体力測定の結果などを含めたエントリーを開始する。 初年度は五輪が重量挙げなど7競技、パラリンピックはボッチャや水泳など5競技が対象。7月には書類選考を通過した対象者が測定会を行い、適性を見極める。スポーツ庁がアスリート発掘事業 6月エントリー開始、7月測定会 (スポニチアネックス) - Yahoo!ニュース
公益財団法人日本体育協会(日体協)が独立行政法人日本スポーツ振興センターから委託を受け、公益財団法人日本オリンピック委員会、公益財団法人日本障がい者スポーツ協会日本パラリンピック委員会などと連携しながら実施するもので、幅広い人材の中からそれぞれの競技に適した人材を選抜し、育成してくプロジェクトだ。対象競技はオリンピック競技が水泳(飛込)、ボート、ウェイトリフティング、ハンドボール、7人制ラグビー(女子)、自転車、ソフトボールの7競技種目で、中学生・高校生年代が対象。パラリンピック競技はボッチャ、水泳、パワーリフティング、車いすフェンシング、自転車の5競技種目で、中学生年代から30歳代までが対象となる。
似たようなプロジェクトとしては、日本サッカー協会(JFA)が2003年にスタートさせたスーパー少女プロジェクト(現・女子GKキャンプ)が挙げられる。なでしこジャパンでGKを務められる大柄な女子選手の発掘・育成を目的として創設されたもので、参加者のサッカー経験は問われず、バスケットボールやバレーボールなど長身選手の多い競技のアスリートも参加している。03年の参加者の中から山根恵里奈がJFAアカデミー福島入りし、身長187センチとなった現在はジェフ千葉レディースに所属し、なでしこジャパンでもプレーするなど、一定の成果を得ている。
課題をクリアし、“ダイヤの原石”を発掘できるか
J-STAR Projectは参加希望者の応募から選考が始まる。全くの競技素人でも、身体能力が高く、適性が備わっていると判断されれば五輪に出場できるかもしれないという夢のようなプロジェクトだが、十分に機能させるためにはいくつかクリアすべき課題もある。
まずは応募という選抜方法だ。これだと身体能力に自信のある人間や競技経験者が多く集まり、とてつもない能力を秘めていながら、それを自覚していない逸材を取りこぼしてしまう可能性が高くなる。将来的にはスカウト網、情報網を整備させる必要があるだろうし、学校で行われるスポーツテストの結果なども、重要な参考資料として活用できるようにしなければならないだろう。
また、選抜する側に才能を見抜く確かな“目”が備わっているか、という問題もある。対象となっているのは、いわば競技人口が少ないマイナー競技。どんな資質を持っている人間がその競技に適性があるのか、的確に見抜けるようになるためには、これからデータを蓄積し、その精度を高めていかなければならないだろうし、対象競技間での連携も取らなければならない。
リオデジャネイロ五輪で日本は12個もの金メダルを獲得したが、アメリカの46個、イギリスの27個、中国の26個とはまだまだ大きな開きがある。小さな町や村で育った少年がスカウトされてトップアスリートになり、五輪で金メダルを獲得する――。そんな日が来ることを期待しつつ、このプロジェクトに注視していきたい。