文=福嶌弘

ウソかホントか……結婚した選手が活躍できないジンクスとは?

 身体が資本となるプロ野球選手にとって、生活をサポートしてくれる妻の存在は必要不可欠。そのため、晩婚化が進む現代の日本においてもプロ野球選手の婚姻率は高い。参考までに、2015年度の日本人男性の平均結婚年齢は31.1歳(厚生労働省調べ)だが、2017年で31歳以上となる選手の9割以上はすでに結婚している。

 ちなみに2016年オフから2017年シーズン前には20代前半の選手の結婚が相次ぎ、すでに30人以上の選手の入籍・挙式が発表されている。そのたびにスポーツ新聞の紙面を賑わせた。

 生涯における伴侶を得ることで野球に集中できるようになるため、野球選手にとって結婚はメリットが多。一方で、プロ野球界には「結婚した年の翌シーズンは活躍できない」というジンクスもある。

 果たして、結婚したばかりの選手が活躍しづらいのは本当なのか――過去の事例とともに検証してみよう。

意気込みが空回り!? レジェンド選手たちの結婚後のシーズン成績

©共同通信

「プロ野球選手の妻」として、最も知名度があるのが落合博満(元中日など)の妻、信子夫人だろう。1983年のオフに結婚すると、落合は2度の三冠王に輝き、大打者へとステップアップしていった。他にも世紀のトレードと呼ばれた中日への移籍でプロ野球史上初の年俸1億円の選手となり、さらに監督時代の偉業など、信子夫人の“あげまんっぷり”は枚挙に暇がない。

 しかし、さすがの落合にも新婚時代にはプレッシャーがあったのか、オフに結婚して迎えた1984年は無冠に終わっている。打率.314、33本塁打、94打点と主軸打者として優秀な成績ではあるが、首位打者を獲得した前年と比べると打率は2分近く下降。その結果、外国人史上初の三冠王に輝いたブーマー・ウェルズ(阪急)の後塵を拝することになった。

 この頃の落合について信子夫人は後に、「当時は食が細く、体力をつけさせるのに食事面で苦労した」と著書で明かしていたが、結婚初年度は「プロ野球選手の妻」としての落合の食生活をコントロールするのに苦心していたのかもしれない。

 信子夫人同様に知名度のあるプロ野球選手の奥様と言えば、野村克也(元南海など)の奥様、沙知代夫人。野村と交際している当時は双方ともに結婚している状態だったため、この関係が遠因となり野村は在籍していた南海から追われることになった。

 それでも、南海退団後の翌1978年の4月に入籍。このとき、野村はロッテに移籍していたが、肝心の成績は大きく下降。南海ラストイヤーとなった1977年よりも出場試合数は半減、本塁打はわずか3本しか打てなかった。
 沙知代夫人と結婚した当時、野村はすでに43歳。選手としてピークを越えていたことは確かだが、あまりに突然の成績下降にプロ野球選手と結婚の“ジンクス”を感じずにはいられない。

 結局、野村は結婚してから一度も100試合以上に出場することなく、結婚から2年後の1980年を最後に、現役を去った。しかし、引退後には監督として当時弱小だったヤクルトを率い、4度のリーグ優勝&3度の日本一を達成している。さすがは、野村克也である。

 その野村の教え子のなかで最高傑作と言えるのが古田敦也。ID野球を引っさげた野村ヤクルトの申し子とも言うべき存在で、入団2年目の1991年にはセリーグ史上初の首位打者に輝くほど。その後もチームの司令塔として1992年には14年振りのリーグ優勝、1993年にはシーズンMVP&日本一の立役者となった。

 選手としてピークを迎えていた古田が結婚したのは古田自身、2度目となる日本一の美酒に酔いしれた1995年オフ。お相手は当時、フジテレビのアナウンサーだった中井美穂。ふたりの結婚は大々的に報じられ、ビッグカップルとして話題にもなった。余談だがこのふたりの結婚をキッカケに「プロ野球選手×女子アナウンサー」というカップルが急増した感もある。

 そんな古田の結婚直後のシーズンとなった1996年はというと、まさかのスランプに陥った。打率は前年より4分近くも下げ、本塁打も1995年の21本から11本へとほぼ半減。打てる捕手のスランプはチームにも影響が出てしまい、この年のヤクルトは4位に陥落。古田自身も余裕がなくなったのか、6月にはビーンボールをめぐって乱闘騒ぎを起こしている。

 しかし、古田も結婚2年目に巻き返し、1997年のシーズンは4番打者を務め、打率は.322と4年ぶりに3割に乗せ、再びシーズンMVPを獲得。この年ヤクルトは2年振りに日本一に返り咲き、古田は日本シリーズでもMVPに選ばれた。

 奥様が有名な3人の元プロ野球選手で実例を挙げたが、野手の場合は「結婚初年度に成績を落とし、2年目には復調する」という傾向があることがわかる。

野手とは正反対な投手の結婚直後のシーズン

 野手の場合は大まかな傾向が見えた「結婚した選手の翌シーズン成績」だが、投手の場合はどうだろうか。

 近年の投手で最も話題になった投手と言えば、アイドルグループ、カントリー娘。のメンバーだったタレント、里田まいと結婚した田中将大だろう。2012年1月に婚約、3月に入籍した田中だが、独身最後の年となった2011年と結婚1年目の2012年の成績を比較すると、以下のようになった。

2011年 27試合登板 19勝5敗 防御率1.27 奪三振241
2012年 22試合登板 10勝4敗 防御率1.87 奪三振169

 全ての成績で数字を落としているため、一見するとジンクスにはまった印象のある田中だが、2012年は春先に故障し、戦線を離脱した時期もあった。そんななかでも2桁勝利を挙げ、自身初となる奪三振王のタイトルを獲得している。さらに8月26日にはこの年にリーグ優勝を果たした日本ハムを相手に延長10回を投げて完封勝ち。この勝利から翌2013年に繋がる連勝記録のスタートとした。

 田中の楽天時代の先輩である岩隈久志もまた、結婚直後のシーズンから成績を良化させた選手。2002年のオフに当時の西武の打撃コーチだった広橋公寿の長女と結婚した岩隈は翌2003年、自身初の2桁勝利である15勝をマーク。残念ながらタイトルには恵まれなかったが、それでも11完投はリーグ1位と、近鉄のエースとして大いに名を売った。

さらに所属チーム、近鉄のラストイヤーとなった2004年は2年連続の15勝&最高勝率の初タイトルも獲得。結婚を機に成績を伸ばした代表的な選手となった。

 結婚を機に活躍した選手と言えば、ダルビッシュ有もそのひとり。もともとプロ入り2年目に12勝を挙げて本格化の兆しを見せていたが、タレントのサエコ(当時)との結婚を2007年のシーズン中に発表。この年の成績は15勝5敗、防御率1.82。さらに210奪三振を記録して、シーズンMVP、沢村賞、奪三振王などのタイトルに輝いた。

 ちなみにダルビッシュ有は2012年のシーズン前に離婚し、2016年の11月に入籍していたことを発表。2度目の結婚後のシーズンとなる2017年はどんな成績を残すだろうか。

開幕スタメンはご祝儀!? 2017年シーズンを新婚で迎える選手

 ここまで挙げてきたように、野手は新婚の年は不振に終わるも、2年目以降に活躍する選手が多く、一方で投手は結婚した翌年から変わらずに活躍する例が見られる。そう考えると、気になるのは昨オフから今季開幕前までに入籍を発表した選手たちだ。

 めぼしいところでは昨季、チーム最多勝となる10勝を挙げてブレイクした田口麗斗(巨人)は昨年暮れに高校時代の後輩と籍を入れ、それに続く形でチームメイトの岡本和真、中井大介らも続々と入籍を果たした。ちなみに田口は今季の巨人開幕2試合目で先発、岡本&中井は開幕スタメンの座を勝ち取っている。

ライバルチームの阪神では昨季、育成契約から這い上がって爆発した原口文仁もその一人。同年代の選手ではブレイク必至とみられていた高橋周平(中日)も昨季オフに結婚を発表している。

パリーグではロッテのエース、涌井秀章がモデルの押切もえと結婚し、ビッグカップルとしてスポーツ新聞を大いに賑わせた。その涌井とバッテリーを組む田村龍弘も、年明け直後にゴールイン。

 プロ野球選手にとってもライフスタイルの大きな変化のひとつとなる結婚。独身時代と新婚になってからとではプレースタイルが変わるのかどうか、注目して見るのも面白いかもしれない。

福嶌弘
1986年、神奈川県生まれ。バイク・クルマの雑誌の編集部を経て2015年からフリーライターに。父が歌う「闘魂込めて」を聴いて育ったため、横浜出身ながら生来の巨人ファン。中井大介、岡本和真ら巨人の若手選手に結婚を機にブレイクしてほしいと心から願ってやまない。『甲子園名門野球部の練習法』(宝島社)『プロ野球2017 シーズン大展望』(洋泉社)などに執筆。


BBCrix編集部