文=中西美雁

過去7大会、すべて日本開催のグラチャン

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 バレーボールは、毎年「4年に1度の世界一を決める大会」がある。それは、オリンピック、世界選手権、ワールドカップ、グランドチャンピオンズカップの4つだ。順番は、オリンピックの翌年がグランドチャンピオンズカップ(略してグラチャン)、その翌年が世界選手権、オリンピック前年がワールドカップと巡っている。

 今年はオリンピック翌年なので、グラチャンの年である。女子大会が9月5日から10日、男子大会が9月12日から17日。ヨーロッパ、北中米、南米、アジア各大陸予選の覇者と、開催国日本、そして国際バレーボール連盟(FIVB)の推薦国の6カ国が出場し、1回戦総当たりで順位を競う。

 1993年から開始された大会で、今年度の大会を含め、これまですべての大会を日本で開催している。放送は第1回から日本テレビが放映している。この大会に限らず、日本での国際大会が多いということがよくいわれているバレーボールだが、ここで一度整理しておこう。オリンピックはいうまでもなく、各国が熾烈な招致合戦を行って開催する持ち回りの大会だ。世界選手権はバレーボールで最も歴史が古く、かつ最大の大会で、基本的には持ち回り開催だが、近年、とりわけ女子大会は日本開催が多い。日本での放送局は1990年以降、TBS系列が行っている。ワールドカップは上位国がオリンピックの出場権を獲得できる大会であり、1977年以降は日本で開催されている。放送するのはフジテレビ系列である。

 このほかに、毎年開催されている国際大会がある。男子は「ワールドリーグ」、女子は「ワールドグランプリ」。ワールドリーグは以前、予選ラウンドはホーム&アウェー方式であったため、参加国は必ず毎年自国で国際大会を行っていたことになる。今は、グループ分けされた予選ラウンドでは、参加国を回遊する方式がとられている。ワールドグランプリは、主にアジアでのバレー振興を目的として始められた大会で、やはり予選ラウンドの一部は日本で開催されることが多かった。この2大会によって、余計に「バレーはいつも日本で国際大会が行われている」印象が強い。某巨大ユーザー同士のQ&A掲示板にも、堂々と誤った回答がなされていて、訂正を申し込んでも回答が締め切られているとかで受け付けてもらえなかった。この2つに関しては、もともと毎年行われている大会で、参加国はそれぞれ試合を開催しているわけだから、日本が参加する限りは、日本で一部の試合が行われるのは当然なのである。同じように他の参加国でも開催されている。

全日本の試合が常に地上波放送されている理由

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 話を元に戻して、グラチャンは、日本が世界の強豪チームに挑むという趣旨でスタートした大会だが、これにはもう一つの側面があった。当時、もう一つ世界一を決める大会があり(ワールドトップ4)、これはテレビ朝日系列の放送だった。グラチャン創設は、故松平康隆名誉会長による、各テレビ局ごとにバレーボールの国際大会を持ってもらう施策の一つだったといわれている。

 この施策は、バレーボールの国際大会を、頻繁に地上波で放映してもらうということについては、非常に効果的だった。それこそ、他競技のファンから、「バレーだけがなぜ…」という文句が出るほどに。だが、弊害もある。それぞれの大会を各テレビ局が独占中継することで、その局以外のテレビ局は、大会についての結果すら流さなくなってしまっているのだ。これがサッカーのワールドカップであれば、大会丸ごとを1局が独占放送することはないので、該当の試合の中継を担当していない局でも、スポーツニュースなどで結果やダイジェストを取り上げてくれる。バレーの場合、かっきりと大会ごとに縦割りになってしまい、局をまたいだ認知が行えない状態となっているのだ。

 また、国際大会の中継後、国内のVリーグの試合中継や結果放送も全くない。各局は、自局が独占中継する国際大会にのみ注力する結果となっている。もっとも、近年ではプロ野球やJリーグの地上波放送もめっきり減っているようなので、バレーに限った話しではないのかもしれないが。

 グラチャンは、オリンピックイヤーの翌年であり、各国が新しい代表選手を試す大会でもある。また、FIVBも、新しいルールを試験的に試すことがある。1993年大会には、「時間制」ルールを採用したし(これは結局定着しなかった)、1997年大会では、今では常識となっているリベロ制度を試した。新しもの好きにはもってこいの大会と言えるだろう。ただし、ランキング的に一番弱いアフリカ大陸覇者が参加せず、推薦国も、男子の場合は強豪国から選ばれるようになったため、日本は前回の2013年大会には全敗を喫している。今大会の推薦国も、リオ五輪準優勝のイタリアだ。ポジティブにとらえれば、生で、または気軽にお茶の間で、世界最高峰のプレーが見られる機会でもある。今年の全日本は男女ともこの大会に向けて仕上げていくはずなので、東京に向けた男女新監督の一つ目の試金石を、見守っていきたい。


中西美雁

名古屋大学大学院法学研究科修了後、フリーの編集ライターに。1997年よりバレーボールの取材活動を開始し、専門誌やスポーツ誌に寄稿。現在はスポルティーバ、バレーボールマガジンなどで執筆活動を行っている。著書『眠らずに走れ 52人の名選手・名監督のバレーボール・ストーリーズ』