文=斉藤健仁

アイルランド、スコットランドと同組に

 2019年に日本で開催されるラグビーW杯の組分け抽選会が5月10日、京都迎賓館で開催された。安倍晋三総理や女子レスリングの五輪金ダリスト・吉田沙保里らが抽選を引き、まさしく19年の運命が決まった瞬間となった。

 抽選の結果、20チームが5チームずつ4つのプールに分かれて争われる19年ラグビーW杯の組分けは、以下のようになった。なお、各プールの上位2チームが決勝トーナメントに進出する。今大会の勝ち点システムがどうなるのかは定かではないが、どのチームも2敗するとベスト8進出は厳しくなる。

プールA:アイルランド(4)、スコットランド(5)、日本(11)、ヨーロッパ地区1位、ヨーロッパ・オセアニアプレーオフウィナー

プールB:ニュージーランド(1)、南アフリカ(7)、イタリア(15)、アフリカ地区1位、敗者復活予選

プールC:イングランド(2)、フランス(6)、アルゼンチン(9)、アメリカ地区1位、オセアニア地区2位

プールD:オーストラリア(3)、ウェールズ(8)、ジョージア(12)、オセアニア地区1位、アメリカ地区2位

※チーム名の横の()は5月8日現在の世界ランキング

対戦相手も日本で良かったと思っている!?

©Getty Images

 では、プールごとの展望を見ていきたい。まずプールAは「ベスト8以上」を狙う日本にとって、ほぼ理想に近い組合せになったと言えよう。世界のラグビーをリードし、3連覇を狙うニュージーランドや、エディー・ジョーンズ元日本代表ヘッドコーチ(HC)が率い、シックス・ネーションズ(毎年行われている欧州最強国決定戦)2連覇を達成したイングランドとの対戦を避けることができたからだ。

 また、同じくバンド1に入っていた優勝2回のオーストラリアとも別組となり、バンド1から同組になったのはアイルランドだった。アイルランドも総合力が高く、この半年間でニュージーランド、イングランドの連勝記録を18で止めた強豪ではあるが、15年W杯では準々決勝でアルゼンチンに敗れるなど、過去のW杯最高成績はベスト8止まり。今年のシックス・ネーションズではスコットランドにも敗れた。

 さらに日本は、バンド2に入っていた優勝2回の南アフリカとも別組となり、バンド2からはスコットランドと同組に。また、11位の日本よりもランクが上の10位のフィジーが入ることが有力視されるオセアニア地区1位との対戦もない。ヨーロッパ地区1位は比較的対戦しやすいルーマニアになると予想され、ヨーロッパ・オセアニアプレーオフウィナーは、力関係を考慮すると、トンガかサモアになりそうだ。

 4勝0敗、または3勝1敗であればベスト8に進出できると考えれば、日本はアイルランドに負けたとしても、スコットランドと、例えばルーマニアとトンガに勝利できれば、史上初の決勝トーナメント進出を決めることができる。

 ただ、日本にとって戦いやすいということは、他のチームにとっても同じ。バンド3のチームが15年W杯ベスト4のアルゼンチンや、FWの強さに定評のあるジョージアではなく、日本で良かったと思われていることは想像に難くない。

 ブックメーカーの大手ウィリアム・ヒルの数字を見ても、アイルランドの優勝予想は8倍、スコットランドは34倍、それに対して日本は124倍と大きな隔たりがある。この2年間でスコットランドに確実に勝てる力をつけることができるかどうかが、決勝トーナメント進出の鍵となろう。

準々決勝の相手はNZか南アフリカか

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 他のプールも見ていこう。プールBは3連覇を狙うニュージーランドと優勝2回の南アフリカ、そしてイタリアが同組になった。残る2チームは順当に行けばナミビア、そしてウルグアイかスペイン、香港あたりとなるか。いずれにせよニュージーランドと南アフリカという優勝経験のある2チームがプール戦で対決することはW杯史上初めてで、大きな注目を浴びることになりそうだ。

 プールCは優勝1回のイングランド、準優勝2回のフランス、前回大会ベスト4のアルゼンチンが同居した。残る2チームもアメリカかカナダ、サモアかトンガとなりそうで、強豪揃いの、まさしく「死の組」となった。ただ、抽選会でイングランドのジョーンズHCは終始、笑顔だった。ジョーンズHCは「7勝して優勝する」と公言しており、プール戦から厳しい戦いを強いられたほうが選手たちを鼓舞できると考えているからだろう。

 最後にプールD。3度目の優勝を狙うオーストラリアにとって、ウェールズ、ジョージアと比較的戦いやすい相手が入ったと言えよう。ただ、オセアニア地区1位は世界ランキング10位のフィジーが有力であり、アメリカ地区2位はカナダかウルグアイになるだろう。オーストラリアの決勝トーナメント進出は間違いなさそうだが、2位突破を狙うウェールズやジョージアにとっては、フィジーはやっかいな存在となろう。

 最後に各プールの上位2チームを予想してみよう。プールAは希望的観測も入っているが、アイルランドと日本。プールBはニュージーランドと南アフリカ。プールCはイングランドとフランス。プールDはオーストリアとウェールズあたりとなるだろう。

 だとすれば、準々決勝のカードはニュージーランド対日本、イングランド対ウェールズ、オーストラリア対フランス、アイルランド対南アフリカとなるが、もし、日本が4勝して1位でプール戦を突破できれば、準々決勝は前回大会で倒した南アフリカとの再戦になるかもしれない。順当に行けば、準決勝で世界ランキング1位のニュージーランドと2位のイングランドが激突することになる。

 ラグビーW杯は19年9月20日に東京スタジアムの日本戦を皮切りに12会場で48試合が行われ、決勝は11月2日、横浜国際総合競技場で開催される。今年9月中旬頃をめどに開催地と日程も決まり、来年からチケット発売も開始される。

 いよいよあと2年あまり、日本、いやアジアで初となるラグビーW杯のカウントダウンが始まった。横浜で優勝杯である「ウェッブ・エリス・カップ」を掲げるのは、どのチームのキャプテンになるだろうか。


斉藤健仁

1975年生まれ。千葉県柏市育ちのスポーツライター。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパンの全57試合を現地で取材した。ラグビー専門WEBマガジン『Rugby Japan 365 』『高校生スポーツ』で記者を務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。『エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡』(ベースボール・マガジン社)『ラグビー日本代表1301日間の回顧録』(カンゼン)など著書多数。Twitterのアカウントは@saitoh_k