[CLOSE UP]岸本隆一(琉球ゴールデンキングス)悔しさよりも危機感を持って、来シーズンに向けた『何か』を探すオフへ
連敗を喫するも「勝ち負け以上に得るものがあった2日間」 琉球ゴールデンキングスは敵地で開催されたシーホース三河とのチャンピオンシップ・クォーターファイナルに敗れ、シーズン終了が決まった。 チームの得点源である岸本隆一は、第1戦で11得点、第2戦では15得点と2試合連続で2桁得点をマーク。さらに第2戦では8アシストとパッサーとしても奮闘するなど、琉球の中心選手としての役割を果たした。 第1戦が72-76、第2戦が75-81というスコアが示すように、2試合とも琉球はあと一歩まで迫った。三河とはレギュラーシーズンで通算1勝5敗だったことを考えると、よく食い下がったと評価することもできる。もちろん敗戦は悔しく、ベスト8という結果に満足することはできない。 ただ、岸本は「レギュラーシーズンでは勝率5割に届かなかった中で、すごく良いプレーができた2日間、勝ち負け以上に得るものがあった2日間でした。欲を言えばもっと試合をやりたかったですが、充実したシーズンだったと思います」と振り返る。 そんな充実感を得た理由は、まだまだ発展途上ではあるが、チームの目指す人とボールを動かすバスケットボールへの手応えを得られたからだ。「目指しているバスケットボールに近付くことはできました。高さがないチームでも、上位相手に戦えることを証明できた……とは言えないまでも、可能性を示すことはできたと思います。自分たちの目指してきたバスケットボールは間違いではなかったです」 「みんな不調を誰かのせいにすることがなかった」 Bリーグへとステージが変わり、これまでNBLに在籍していた強豪と戦うことで、今シーズンの琉球は苦戦が続いた。だが、そんな中で岸本が胸を張るのは、チームの結束が崩れなかったことだ。「悪い時期、結果が伴わない時期に、みんな不調を誰かのせいにすることがなかった。それぞれが自分にベクトルを向け、どうやったらチームが良くなるのかを考えた、すごく良いチームでした。僕はキャプテンでしたが特に何かをすることなく、それぞれがチームのために尽くしてくれました」 bjリーグ時代との違いについはこう語る。「前のリーグだとシュートが上手い選手、ディフェンスが上手い選手といろいろいましたが、Bリーグだとディフェンスがうまくてシュートがうまい。一つのスペシャリストではなく、何でもできる選手が多いと感じました」 最後に今季、琉球が日本バスケットボール界に示した大きなことがある。それは沖縄バスケ界の持っている可能性であり、底力だ。この2日間、岸本に加え、渡辺竜之佑、金城茂之、津山尚大と沖縄出身の地元選手たちが合計で約100分のプレータイムを記録。これは外国籍選手の時間分を除いた日本人選手の合計140分の内の約7割を占める。 また、出場時間だけでなく、14日の試合では沖縄出身の選手たちが、チーム総得点の約半分をたたき出した。沖縄というスモールマーケットを本拠地としながら文字通り地元出身選手を主力とし、トップリーグを戦い抜いたのは特質すべきだ。 「サイズが小さい」沖縄県のバスケキッズへのお手本に 琉球というチームだけでなく、沖縄県の中学、高校生チームも全国的にはサイズが小さい。だからこそ伊佐勉ヘッドコーチが「こうすれば守れるし、リバウンドが取れるということを示せた」と語るように、沖縄のバスケ少年たちに良い手本を見せることができた。 実際、リバウンド数を見ると13日は琉球と三河は46ずつのイーブン、14日が琉球の42に対し三河が44と、リーグ屈指のサイズを誇る三河相手にリバウンド争いで互角の戦いを演じている。そして187cmの渡辺が2試合連続で8リバウンドを記録している。 この点について岸本も、冒頭で紹介したようにサイズがなくても戦えることへの手応えを語っている。ただ、「勝つためにまだまだ足りないことは否めないです。来季、勝てる何かをこれから見付けないといけない」と課題を語る。 「悔しさというよりも、もっと危機感を持って取り組んでいきたいです」と言う岸本。彼がさらなる進化のための『何か』を見付けた時、琉球はさらなる進化を遂げるはずだ。
文・写真=鈴木栄一