文=座間健司
過去4シーズンで3度目の欧州制覇
©Getty Images 文句のつけようがない勝利だ。
昨シーズン、レアル・マドリーがチャンピオンズリーグを制覇した時は、ベスト16でローマ、準々決勝でヴォルフスブルク、準決勝でマンチェスター・シティとどれも自国では王者ではなく、リーグ戦でも目立った戦績を残していない相手が続いた。優勝候補筆頭のバイエルン・ミュンヘンらとは当たっていない。その恵まれた組み合わせから「レアル・マドリーは、ヨーロッパリーグに優勝した」と、ジネディーヌ・ジダン監督のチームは揶揄されたが、連覇を達成した今シーズンはそんな冷やかしはない。
レアル・マドリーは準々決勝でバイエルン・ミュンヘン、準決勝でアトレティコ・マドリーと優勝候補の筆頭を破ってきたからだ。さらに決勝では準々決勝でバルセロナを2試合連続無失点で抑え、勝ち上がってきたユベントスに大勝した。特に後半は文字どおりゲームを制圧し、全く寄せつけなかった。チャンピオンズリーグが現行の大会方式になってから初めての連覇だ。
「レアル・マドリードはカラーテレビになってから、何回欧州王者になった?」
「21世紀になってからはバルセロナの方が欧州を制覇した数は多い」
バルセロニスタは憎きライバルをよくこのように批評するが、通算優勝回数は言うに及ばず、21世紀になってからの優勝回数でも並ばれてしまった。さらには最近4シーズンでレアル・マドリーは優勝3回とバルセロニスタはもうただ黙るしかない。
結果で自身の価値を示したロナウドとジダン
©Getty Images 個人に目を移しても、同じだ。
先制点、そしてチームの3点目と決定的な仕事を果たしたポルトガル人ストライカーも、チーム同様に文句のつけようがなかった。クリスティアーノ・ロナウドは、今季12得点を挙げて5シーズン連続でチャンピオンズリーグの得点王に輝き、個人としても4度目の欧州制覇を達成した。決勝翌日に行われたサンティアゴ・ベルナベウのリーガとチャンピオンズリーグの2冠を祝うセレモニーでスタンドを埋めた観衆の声に合わせて「クリスティアーノ、バロン・デ・オロ(バロンドール)」とマイクで自らコールしても大きな論争にもならなかった。決勝前は「ブッフォンか、ロナウドか。勝利した方がバロンボール」と予想されていたが、試合後は世界中が金色に輝いたボールをポルトガル人が手にすることを悟った。毎冬にバルセロナのアルゼンチン人との争いが話題になるが、今年はその議題をあえて声高にする必要もないだろう。
シーズン途中の就任からチャンピオンズリーグを制した昨シーズン、フランス人指揮官は「運が強い」と言われたが、連覇した今、そんな声は全く聞こえない。ジダンの采配は見事だった。手持ちの駒を最大限に活用し、ターンオーバーを取り入れながらも、勝利を積み重ねた。と同時に常時出場を希望する大エースを納得させ、休養を与え、シーズン終盤の最近2カ月だけで16得点と期待どおりの結果を残した。ベイルの負傷があり、イスコをトップ下に配置する4-4-2の布陣への切り替えもしなければならなかったが、ミッドフィルダーを4人にするという戦略も見事にはまり、チームは絶妙のバランスを手にした。国内と欧州の2冠を達成したジダンへの懐疑はない。ロナウドは「ジダンが僕たちの能力をとても信じている」と賛辞を送る。トップチームを率いてからわずか15カ月でチャンピオンズリーグを2度制覇し、監督としても現役時代にも劣らぬ名声を手にした。
陣容を見ても、ロナウド、セルヒオ・ラモスらベテランもいるが、アセンシオら若いタレントも多く、メンバーの平均年齢は25.7歳とバルセロナとアトレティコ・マドリーよりも2歳若い。頂きにいても、なおチームには伸びしろがある。フロレンティーノ・ペレス会長らテクニカルディレクターの補強の的確さも、この数字から見て取れる。
このようにどのアングルから見ても、文句のつけようがないレアル・マドリードの欧州連覇だった。