八村塁のファウルトラブルに苦しむも、シェーファー・アヴィ幸樹が流れを呼び込み、全員バスケでU-19W杯初勝利
高さと強さのある相手にもアタックする姿勢を失わず U-19ワールドカップ、初戦でスペインに惜敗した日本の第2戦の相手はマリ。初戦でカナダに42-91と完膚なきまでに叩きのめされたマリは立ち上がりからパワー全開。日本はスペイン戦で飛ばしすぎて失速したこともあり、立ち上がりの勢いでマリが上回った。 210cmのブライズ・ケイタを中心に高さとフィジカルの強さのあるマリだが、速攻でダンクを狙って失敗するなど精度には難があり、日本は助けられる。ただ日本はボールこそ回るがインサイドを崩せない。八村塁のドライブもダブルチームで対応されて得点につなげられず、それではと外でフリーを作るがシュートタッチが悪く決まらない。 両チームとも得点が伸びない重い展開、日本はゴール下までボールを運べず、ショットクロックがなくなり無理な3ポイントシュートを打たざるを得ないシーンが何度もあるが、それでもリングへアタックする姿勢は失わず、フリースローでつないでマリに食らい付く。 それでも三上侑希、増田啓介の3ポイントシュートが決まって点差を縮め、第2クォーターの最後にはディフェンスリバウンドを奪った八村塁が走り、重冨周希に預けたボールのリターンを受けてそのままレイアップを沈める速い展開が形になり、31-32と1点差で前半を折り返す。 八村ファウルトラブルの危機をチーム一丸で乗り切る 迎えた後半、日本に試練が訪れる。ゴール下の圧力が大きく、形は作ってもシュートが入らない状況で、リバウンドで踏ん張りきれなくなり、次第にマリに流れが傾いていく。八村がマークして抑えていたケイタにプットバックダンクを決められてしまう。それでもここで足を使ったディフェンスで24秒バイオレーションを誘発すると、素早いパスで振り回してゴール下でフリーになった八村が決める理想的な攻めが決まり37-40と再び1ポゼッション差に詰め寄った。 ところがここで八村が4つ目の個人ファウルを犯し、ベンチへ下がらざるを得ない状況に。攻守に不可欠な存在である八村が勝負どころを前にファウルトラブルに陥ったことは痛恨の出来事だった。 ところが、ここから日本に流れが来るのだからバスケは分からない。ここでケイタがフリースローを2本落とした後、攻め急いだマリは不用意なターンオーバーを重ねてリズムを乱す。そして日本は、八村に代わって入ったシェーファー・アヴィ幸樹が活躍する。スペイン戦では動きに硬さが見られたシェーファーだが、この試合では思い切りの良いプレーを披露。203cmの長身を生かして攻守に奮闘、リバウンドをもぎ取ることでマリの優位性を失わせ、日本に流れを引き寄せた。 また攻撃面では杉本天昇が八村の分まで果敢なドライブを連発。ドライブからの展開もうまく決まり、オフェンスに流れが生まれた。シェーファーがオフェンスリバウンドを奪って放ったジャンプシュートがバスケット・カウントの3点プレーとなり、ボーナススローも決めて43-42とついに逆転。この流れに増田啓介、中田嵩基も乗り、56-53とリードして第3クォーターを終える。 バタバタしたものの逃げ切り、76-73で勝利をつかむ マリは身体能力に優れてはいたが、『プレーの幅』を欠くチームだった。日本に流れが行った後、一度崩れたリズムを立て直すことができない。その間に増田が2本の3ポイントシュートを決め、シェーファーがオフェンスリバウンドをそのまま押し込み、西田優大も3ポイントシュートをねじ込んで67-56とリードを2桁に広げる。 終盤、マリの強引な攻めで1ポゼッション差まで詰められるものの、残り2分半で戻って来た八村の多少不格好ながらも値千金のアリウープが飛び出し、相手の流れを断ち切る。終盤の試合運びは決して盤石ではなく、若さが出てバタバタしたものの、マリは最後のシュートを決められず。最後までディフェンスで身体を張り続けた日本が何とかしのいで76-73で勝利。世界の舞台で貴重な1勝を手にした。 増田啓介が両チーム最長となる33分54秒のプレータイムを得て、こちらもゲームハイの16得点をマーク。ファウルトラブルに陥った八村は25分の出場ながら15得点12リバウンドと、2試合続けてのダブル・ダブルとなった。また勝利の立役者となったシェーファーは17分半の出場で11得点10リバウンドのダブル・ダブル。特に6つのオフェンスリバウンドは貴重なものとなった。 その他、重冨は4得点5アシスト、高い位置からのプレッシャーにもひるむことなく、きっちりと試合を組み立てた。榎本新作もプレータイムはわずかながら、独特のリズムのドリブルで役割を果たしている。さらには唯一の高校生である中田嵩基も、初戦のスペイン戦とは打って変わって積極的なプレーで勝利に貢献した。 大会は2日目を終えて、休養日を挟む。明日4日(火)の日本時間20時45分からカナダと対戦する。
文=鈴木健一郎 写真=FIBA.com