優勝候補筆頭・大阪桐蔭に挑む強豪校

トーナメント表を見て「強豪校が偏った」と、第一印象を抱いた人も多いのではないだろうか。過去の大会を見ても、強豪校、実力校がこれほど偏るのも珍しい。

優勝候補の最右翼に挙がるのが、史上初となる2度目の春夏連覇を狙う大阪桐蔭(大阪)。激戦区・大阪大会では苦しんだが、投打に隙のない総合力と圧倒的な選手層で勝ち上がってきた。投手陣は140キロを投げるのが当たり前。どんな展開にも対応でき、最終的には勝っているのが、最大の強さといえるだろう。
とにかく夏に強い大阪桐蔭は、2008年(優勝)、2012年(優勝)、2013年(3回戦)、2014年(優勝)と抜群の安定感を誇る。

直近4度の出場で実に3度の日本一を果たしている大阪桐蔭だが、今大会を勝ち抜くのはそう簡単ではない。
このブロックには興南(沖縄)、智辯和歌山(和歌山)、仙台育英(宮城)ら、実力校が入った。とくに不気味な存在が、2010年に春夏連覇を遂げている興南だ。沖縄大会6試合で5失点2失策と、鉄壁の守備を誇り、守りからリズムを作る。注目は1年生左腕の宮城大弥で、沖縄大会では22回3分の1を投げ、34奪三振、1失点と圧巻のピッチングを見せ、優勝に大きく貢献した。最速142キロを誇るストレート、空振りを取れる変化球の質が高い。中学時代にはU-15侍ジャパンに選ばれた逸材である。

大阪桐蔭の甲子園での敗戦は、2016年春2回戦(1対4木更津総合)、2015年春準決勝(0対11敦賀気比)、2013年夏3回戦(1対5明徳義塾)など、打てなくて負けた試合が印象深い。大阪桐蔭に勝つには、強打線を抑える投手力を持っていることが絶対条件となる。

秀岳館対横浜、広陵対中京大中京など1回戦から好カードが目白押し

そう考えると、投手力の高い秀岳館(熊本)が打倒・大阪桐蔭の一番手に挙がる。県大会で絶好調だった田浦文丸と、経験豊富な川端健斗の左腕2枚は、ともに最速148キロ。スライダーやチェンジアップも巧みに操り、完成度が高い。打力は昨年よりは落ちるが、追い込まれてからのノーステップ打法でバッテリーをジワジワと苦しめていく戦い方は、酷暑の夏にこそ生きてくるはずだ。センバツ準決勝では大阪桐蔭に1対2で敗れているだけに、リベンジの想いは強い。

だが、秀岳館の初戦の相手は、ドラフト上位候補の増田珠を擁する横浜(神奈川)。神奈川大会で大会タイ記録となるチーム通算14本塁打を放った強力打線と田浦・川端の戦いは要注目。

すぐ隣では、広陵(広島)対中京大中京(愛知)の名門対決が実現。甲子園では春夏通算7度目の対戦となり、広陵が4勝2敗と勝ち越している。中京大中京は愛知大会6試合54得点の打線に破壊力があり、頂点を狙える打力を持つ。広陵は平元銀次郎と中村奨成のバッテリー力が武器で、特に中村の打と肩はスカウト陣の評価が高い。この勝者が、秀岳館と横浜の勝者とぶつかることになる。

連覇狙う作新は盛岡大付と初戦 1回戦屈指の好カード・前橋育英対山梨学院

前橋育英(群馬)、山梨学院(山梨)、木更津総合(千葉)、花咲徳栄(埼玉)と、投打のバランスに優れた関東勢4校が入ったブロックも、実力伯仲の激戦区となった。投手層の厚い前橋育英と山梨学院の対決は1回戦屈指の好カードで、継投がカギを握りそうだ。百戦錬磨の馬淵史郎監督率いる明徳義塾(高知)と日大山形(山形)は、2013年夏の準々決勝の再戦となり、このときは日大山形が勝利している。

木更津総合はエース左腕・山下輝のピッチングに注目。140キロ台中盤のストレートに加えて、腕を振って投じるスライダー、フォークにキレがあり、万全の状態であればそうは打ち崩されないはずだ。ただ、頂点を狙うには投手層と打力に課題がある。

初戦から勢いに乗っていければ、旋風を巻き起こす力を持っているのが花咲徳栄だ。4番の西川愛也はミート力、パワーともに高校球界屈指の能力を持ち、この甲子園でその名が一気にとどろく可能性がある。綱脇慧、清水達也と試合を作れるピッチャーが2枚いることも心強い。

夏の甲子園連覇を狙う作新学院は、背番号10の篠原聖弥の成長が光る。182センチの身長から投げこむチェンジアップは、初見のバッターには簡単には打たれないだろう。栃木大会では制球に苦しんでいたエース左腕・大関秀太郎がどこまで復調してくるか。165センチの小さなスラッガー・植田拓擁する盛岡大付(岩手)との初戦を制したほうが、上位に勝ち進んできそうだ。植田の全身を目いっぱい使ったフルスイングは一見の価値ありだ。

2回戦から登場の二松学舎大付、東海大菅生にもチャンスが

2回戦からの登場校は、多くの学校にベスト8、ベスト4入りのチャンスあり。ベスト4まで大阪桐蔭や秀岳館、中京大中京などとは当たらないことがすでに決まっている。
東東京大会を56得点7失点と圧倒的な力で勝ち上がった二松学舎大付と、西東京大会で日大三、早稲田実を下した東海大菅生は優勝戦線に絡むだけの地力を持っている。

北海(南北海道)、神戸国際大付(兵庫)、大垣日大(岐阜)、天理(奈良)のブロックは、力が拮抗しており、僅差の試合が見られそうだ。
春の近畿大会準決勝で大阪桐蔭と3対4の接戦を演じるなど、どことやっても自分たちの力を発揮できるのが、滋賀の進学校・彦根東だ。波佐見(長崎)との一戦は、初戦唯一の公立対決となる。

名将、最後の甲子園、元プロに公募監督、多様化する監督にも注目

チームを率いる監督に視点を移すと、甲子園通算勝利数でトップを走るのが智辯和歌山・高嶋仁監督の63勝。5位に明徳義塾・馬淵史郎の46勝、6位に大阪桐蔭・西谷浩一監督の42勝が続く。もし、大阪桐蔭が優勝すれば6勝が加わり、馬淵監督を抜く可能性もある。

青森山田(青森)の兜森崇朗監督は青森山田シニア、神村学園(鹿児島)の小田大介監督は神村学園シニアと、附属中学校(中学硬式野球部)の指導を経て、高校の監督に就いた。秀岳館の鍛治舍巧監督は、大阪の枚方ボーイズで日本一を成し遂げている。

東海大菅生の若林弘泰監督は中日、天理(奈良)の中村良二監督は近鉄でプレーしていた元プロ監督だ。さらに三本松(香川)の日下広太監督は、BCリーグ(独立リーグ)の石川ミリオンスターズと新潟アルビレックスに計4年在籍。独立リーグ出身者が、監督として甲子園に出場するのは初めてのことになる。

最高齢が1941年生まれの日本文理(新潟)の大井道夫監督。この夏限りでの勇退が決まっており、最後の甲子園で文理伝統の打ち勝つ野球を見せる。
変わり種が、明桜(秋田)を率いる輿石重弘監督。学校が公募した「高等学校契約教員(硬式野球部の指導を含む)」に自ら応募して、監督の座を射止めた。長瀬達哉部長も、公募をきっかけに野球部の指導者になった。こちらは宮城県の中学校教員からの転身である。異色コンビで甲子園勝利を狙う。


VictorySportsNews編集部