文=北條聡

観戦者の平均年齢は41・1歳

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 日本人の平均年齢は2015年時点でおよそ「46歳」だという。世界ランキングの1位らしい。人口学では、65歳以上の高齢者の占める割合が、全体の14%を超えると「高齢社会」と呼ぶそうだが、日本は1994年にその高齢社会へ突入した。

 同じ先進国の中では、ドイツやイタリアも平均年齢が45歳を超えているが、アメリカと中国の両大国は30代後半。イギリスも、まだ40歳だという。日本の高齢化は今後も加速する一方で、20年後には平均年齢が50代に達する、とも言われている。

 当然、サッカー界も高齢化と無縁ではいられないだろう。Jリーグが2015年に公表したデータによると、観戦者の平均年齢は「41・1歳」だった。年齢層が高い印象を受けるものの、日本人のそれと比べれば、5歳ほど若い。さらに年齢層別にみると、40代が29・1%と最も多い。また、50代以上は27・3%だから、観戦者の56・4%が40代以上ということになる。

 クラブ別(J1)にみると、観戦者の平均年齢が30代だったのは鹿島(36・7歳)を含む6クラブのみ。残る12クラブは、いずれも40代だった。最も平均年齢が高い新潟は47・1歳、次いで湘南が46・1歳、さらに広島が44・7歳、仙台が44・3歳となっている。

 また、特定クラブを応援するサポーター歴(観戦歴)をみると、リーグ全体で「10年以上」と答えた人の割合が44・8%と最も高かった。これに「5年以上」と回答した人(23・2%)を加えると、実に68%が固定客ということになる。従って、短期間のうちに年齢層の分布が大きく変わることはなさそうだ。

 ある意味、中・長期的なスパンで施策を考えやすい。この先、高齢化が進むのだから、シニア層(中高年)により楽しんでもらえるアイディア、環境づくりを検討したいところか。バブル経済崩壊後、社会人となった世代がすでに40代へ突入しているが、資産(貯金)や収入(給料)など厳しい経済状態にある若者世代と比べるとシニア層には総じて余裕がありそうだ。また、余暇時間が長いのも定年後(65歳以上)の人たちだろう。

高齢社会に適した興行の在り方とは?

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 サポーター歴が長いという点にも着目すれば、クラブを支えた往年のスター、OBを絡めたイベント(試合やトーク)の開催や、彼らの功績を振り返るミュージアムを開設し、過去の名勝負を映像で流したり、定期的にサイン会を開いたりするアイディアがあっていい。個人的に海外へサッカー観戦に訪れた際、試合と並んで楽しみなのが、ミュージアムを訪れることだ。

 Jリーグも1993年に産声を上げてから、20年以上が経った。そろそろ、歴史自体が「価値」を生み始める頃ではないか。Jリーグが、あるいはJクラブが独自で歴代ベストイレブンのファン投票を実施して、選手された面々を呼んで、イベントを開くのもアリだろう。

 スタジアムでも、シニア層への「おもてなし」を充実させてもいい。若い頃はゴール裏で熱い応援をしていた人も年齢を重ねると、ゆったりした環境で観戦したくなったりすることもあるだろう。プロ野球の球団では子育て世代向けの「ファミリーボックス」が人気という話も聞くが、少しばかり贅沢を味わえる「ボックス席」などが用意されていたら、喜ばれるかもしれない。

 Jリーグの場合、自前のスタジアムを持つクラブが少ないが、所有者(行政など)に働きかけて、観戦環境の改善に乗り出す、知恵や工夫がほしい。中高年になるとできるだけ人混みや行列を避けたい、という心理が強く働くようになるかもしれない。そうした部分にも、より配慮する必要性が高まるだろう。いまから、高齢社会に適した興行(イベント)の在り方を考えたいものだ。


北條聡

1968年、栃木県生まれ。早稲田大学卒業後、Jリーグが開幕した1993年に『週刊サッカーマガジン』編集部に配属。日本代表担当、『ワールドサッカーマガジン』編集長などを経て、2009年から2013年10月まで週刊サッカーマガジン編集長を務めた。現在はフリーとして活躍。