J2ながらW杯の影響で積極補強に動くクラブも!19人もの選手が新加入した注目のクラブも!
2023シーズンのJリーグは、奈良クラブ、FC大阪の2クラブがJ3リーグに新規参入し、J1、J2、J3合わせて、過去最多となる60クラブによる戦いが繰り広げられる。そんな中、J2ながら積極的に補強を行うクラブや、J2に降格しながら大半の主力選手が残留しているクラブがある。
サイバーエージェントが運営するFC町田ゼルビアは今季、高校サッカーの名門校として知られる青森山田高校を率いた黒田剛監督を招聘。ヘッドコーチには、サガン鳥栖で監督を務めた経験を持つキン・ミョンヒ氏が就任した。そんな同クラブは、これまでにないほどの積極的な補強を行っている。オーストラリア代表ミッチェル・デューク(ファジアーノ岡山)や元横浜F・マリノスのエリキ(中国・長春亜泰)、元U-22韓国代表のチャン・ミンギュ(ジェフ千葉)、カルロス・グティエレス(栃木SC)ら5人の外国人選手を獲得。また、髙橋大悟(清水エスパルス)や下田北斗(大分トリニータ)、青森山田高校出身の藤原優大(SC相模原)や黒川敦史(ジュビロ磐田)など、J1でプレー経験のある選手も多数獲得。大卒3人を含む19人もの選手が加入した。
町田を運営するサイバーエージェントは、レンタルブログサービス「アメーバ」やインターネットTVプラットフォーム「ABEMA」を運営していることで知られている。「ABEMA」はカタールW杯の全64試合を生中継し、開局史上最多となる1000万人以上の視聴者数を記録した。町田の大型補強は、W杯でABEMAが成功をおさめた背景もあるだろう。
なお、同クラブの退団選手は、昨シーズン、J2リーグ戦でチームトップの11ゴールを記録した太田修介、平戸太貴(9ゴール、チーム2位)、ドゥドゥ(8ゴール、チーム3位)、現役引退を発表した鄭大世など、10人となった。チームの得点ランキング上位3人が全員退団となったものの、主力選手の流出は最小限にとどめたと言っていいだろう。
町田の退団、新加入選手は以下の通り。
▼退団
※[]は移籍先
ドゥドゥ[FC今治]
奈良坂巧[カマタマーレ讃岐/期限付き移籍]
佐野海舟[鹿島アントラーズ]
太田修介[アルビレックス新潟]
平戸太貴[京都サンガ]
岡野洵[V・ファーレン長崎]
鄭大世[現役引退]
長谷川アーリアジャスール[契約満了/未定]
ヴィニシウス・アラウージョ[契約満了/未定]
菅沼駿哉[契約満了/未定]
▼新加入
※[]は前所属
ストイシッチ[ベガルタ仙台/新加入]
エリキ[長春亜泰(中国)/新加入]
ミッチェル・デューク[ファジアーノ岡山/新加入]
カルロス・グティエレス[栃木SC/新加入]
チャン・ミンギュ[ジェフユナイテッド千葉/新加入]
髙澤優也[大分トリニータ/新加入]
内田瑞己[カマタマーレ讃岐/新加入]
髙橋大悟[清水エスパルス/新加入]
下田北斗[大分トリニータ/新加入]
藤原優大[浦和レッズ/期限付き]
黒川淳史[ジュビロ磐田/新加入]
奥山洋平[岩手グルージャ盛岡/新加入]
荒木駿太[サガン鳥栖/期限付き]
沼田駿也[レノファ山口/新加入]
池田樹雷人[ブラウブリッツ秋田/新加入]
稲葉修土[ブラウブリッツ秋田/新加入]
布施谷翔[国士舘大学/新加入]
深港壮一郎[立正大学/新加入]
平河悠[山梨学院大学/新加入]
J2降格ながら日本代表の守護神やJ1得点王が残留したあのクラブ
昨シーズン、J1で17位となり、2015年以来2度目のJ2降格となった清水エスパルス。同クラブは、昨シーズンJ1得点王を獲得したチアゴ・サンタナや日本代表の権田修一、昨年7月に加入した元日本代表MF乾貴士が在籍した。そんな中、2023シーズンはJ2で戦うこととなり、権田やチアゴ・サンタナを始め、鈴木義宜、松岡大起など多くの中心選手の退団が予想されていた。
しかし、これらの選手を含む大半の主力選手は残留が決定した。なお、権田と松岡に関しては海外移籍を目指していたが実現しなかったことを、本人達が明かしている。鈴木唯人や原輝綺、立田悠悟といった選手は他クラブへ移籍したものの、主力選手の流出を最小限に抑えたと言えるだろう。さらに、新戦力として、名古屋グランパスから吉田豊、柏レイソルから高橋祐治と北爪健吾を獲得。また、ディサロ燦シルヴァーノなど、3選手が期限付き移籍からの復帰が決定。清水は昨シーズンの6月から指揮を執る、ブラジル人のゼ・リカルド監督の下、1年でのJ1復帰を目指す。
清水の退団、新加入選手は以下の通り。
▼退団
鈴木唯人[RCストラスブール(フランス)/期限付き]
原輝綺[グラスホッパー・クラブ・チューリッヒ(スイス)/期限付き]
片山瑛一[柏レイソル]
立田悠悟[柏レイソル]
永井堅梧[横浜FC/期限付き]
髙橋大悟[町田ゼルビア]
安藤阿雄依[アスルクラロ沼津/期限付き]
西村恭史[長野パルセイロ/期限付き]
川谷凪[ファジアーノ岡山/期限付き]
川本梨誉[ザスパクサツ群馬/期限付き]
後藤優介[モンテディオ山形]
千葉寛汰[徳島ヴォルティス/期限付き]
栗原イブラヒムジュニア[SC相模原]
ヴァウド[V・ファーレン長崎]
ヤゴ・ピカチュウ[フォルタレーザEC(ブラジル)/期限付き]
▼新加入
吉田豊[名古屋グランパス/新加入]
高橋祐治[柏レイソル/新加入]
北爪健吾[柏レイソル/新加入]
成岡輝瑠[レノファ山口/期限付き移籍から復帰]
菊地脩太[V・ファーレン長崎/期限付き移籍から復帰]
ディサロ燦シルヴァーノ[モンテディオ山形/期限付き移籍から復帰]
阿部諒弥[中央学院大学/新加入]
森重陽介[日本大学藤沢高校/新加入]
監物拓歩[早稲田大学/新加入]
齊藤聖七[流通経済大学/新加入]
落合毅人[法政大学/新加入]
安藤阿雄依[清水エスパルスユース/トップ昇格]
J1の注目クラブは、レオ・セアラや香川真司が加入したセレッソ大阪!
2023シーズンのJ1は、日本代表で10番を背負った香川真司や横浜F・マリノスでリーグ優勝にも貢献したレオ・セアラが加入するセレッソ大阪に注目が集まっている。ベルギー1部シント=トロイデンVVから加入した香川は、2006年にセレッソに加入後、2010年にドイツのボルシア・ドルトムントに移籍し、欧州4ヶ国でプレーした後、12年半ぶりのJリーグ復帰となった。
そんな同クラブはレオ・セアラ以外にも、複数の外国人選手の補強に成功した。昨シーズン、アビスパ福岡で31試合に出場し4ゴール4アシストを記録したジョルディ・クルークスに加え、KリーグのFCソウルから元U-23韓国代表GKのヤン・ハンビン、ブラジル1部のECジュベントゥージからFWカピシャーバを獲得。また、徳島ヴォルティスに期限付き移籍していた藤尾翔太や昨夏、ブラジル1部レッドブル・ブラガンチーノに期限付き移籍した岡澤昂星の復帰が決定した。一方で、ジョアン・パトリッキやアダム・タガート、ブルーノ・メンデスが退団。外国人選手の多くが入れ替わる形となった。さらには、2009年に加入後、セレッソ一筋の丸橋祐介が、クラブの提携先であるタイ1部BGパトゥム・ユナイテッドFCへの期限付き移籍が決定した。
しかし、鈴木徳真、松田陸、奥埜博亮、原川力など、日本人の主力選手の大半が残留する形となった。レオ・セアラや香川真司、ジョルディ・クルークスも加入したことで、各ポジションに実績のある選手が揃っている状況だ。同クラブは昨シーズン、リーグ5位と上位に入り、ルヴァンカップでも準優勝と結果を残している。それには、2021シーズンの途中から指揮を執る小菊昭雄監督の就任が大きく影響しているだろう。同監督の下、2023シーズンは悲願のクラブ初となるJ1優勝を目指す。
セレッソの退団、新加入選手は以下の通り
▼退団
ジェアン・パトリッキ[ヴィッセル神戸]
アダム・タガート[パース グローリーFC(オーストラリア)]
チアゴ[セアラ―SC(ブラジル)]
ブルーノ・メンデス[デポルティーボ マルドナド(ウルグアイ)/復帰]
チャウワット[BGパトゥム ユナイテッドFC(タイ)/復帰]
茂木秀[FC岐阜]
新井直人[アルビレックス新潟]
丸橋祐介[BGパトゥム・ユナイテッドFC(タイ)/期限付き]
吉馴空矢[FC大阪/完全移籍]
山田寛人[ベガルタ仙台/期限付き]
▼新加入
レオ・セアラ[横浜FM/新加入]
ジョルディ・クルークス[アビスパ福岡/新加入]
カピシャーバ[ECジュベントゥージ (ブラジル)/新加入]
ヤン・ハンビン[FCソウル(韓国)/新加入]
香川真司[シント=トロイデンVV(ベルギー)/新加入]
岡澤昂星[レットブル・ブラガンチーノ(ブラジル)/期限付き移籍から復帰]
藤尾翔太[徳島ヴォルティス/期限付き移籍から復帰]
木下慎之輔[C大阪U-18/トップ昇格]
石渡ネルソン[C大阪U-18/トップ昇格]
阪田澪哉[東山高等学校/新加入]
大迫塁[神村学園高等学校/新加入]
クラブの経営状況など、様々なビジネス要因も大きく影響する移籍市場
2023シーズン、Jリーグは多くの選手が国内外への移籍を果たした。日本代表の谷口彰吾(カタール1部アル・ラーヤンSC)や相馬勇紀(ポルトガル1部カーザ・ピアAC)など、W杯に出場した日本代表選手も海外移籍を実現させている。また、香川真司のように海外からJリーグに復帰した選手もいる。一方で、清水の権田修一や松岡大紀、浦和の岩波拓也のように海外移籍を目指したものの、実現しなかった選手もいる。
サッカー選手にとって、移籍はサッカー人生を左右する非常に大事な決断になることは言うまでもない。そして、移籍には選手自身の実力や実績だけでなく、他の選手の加入や退団、さらにはクラブの経営状況をはじめとする様々な事情が絡んでいる。移籍はクラブの強化部やスカウト担当が中心となり、選手本人と代理人、相手方のクラブとで交渉が行われる。まずは選手を獲得したいクラブが、気になる選手を現所属クラブとの残りの契約年数などを調査しながらリストアップする。そこから実際にオファーを出す選手を絞り込み、正式なオファーを出し、交渉を開始する。
複数のJリーガーの代理人を務めるとある人物によると、オファーはクラブに直接届くケースや代理人に届くケースがあり、選手はクラブや代理人からオファーが届いていることを伝えられるようだ。あまりに条件が見合わない場合や本人に移籍の意思が全くない場合、選手本人に伝えられる前にオファーを拒否することもあるとのこと。また、同じポジションや同じプレースタイルの選手が移籍した場合のみ獲得を希望するケースや、他の選手の移籍金が入った場合にのみオファーするケースも多く、移籍にはタイミングが非常に重要である。
それは、ビジネス的な側面でも同じことが言える。某Jリーグクラブの営業担当は、「スポンサー企業一社と契約できるかどうかが、選手を獲得できるかどうかに大きな影響を与える。実際にあの企業と契約できていたら、とある外国人選手を獲得できていたというケースもあった…」と話す。また、注目度の高い選手の場合、スポンサー収入やグッズ収入の増加も見込めるため、移籍は選手としての実力や実績以外にも多くのビジネス的な要因が絡んでくる。また、最近ではSNSなどで選手の移籍情報が公式のリリース前に流出してしまい、最悪の場合、移籍が破談になることもあるようだ。このように選手の移籍には、本当に多くの要因が絡んでおり、様々な裏事情があるのが現状だ。今後も国内外の選手達の移籍から目が離せない。