横浜Mと川崎Fによる開幕戦は、翌18日に控える他のカードに先駆け、唯一の「金J」で行われる。横浜Mのケビン・マスカット監督が「本当に楽しみ。いいパフォーマンスをしてエキサイティングなゲームをしたい」と言えば、川崎Fの鬼木達監督は「2023年の開幕戦にふさわしいエキサイティングなゲームをしたい。Jリーグを盛り上げる意味でも、とにかく熱いゲームをしたい」と力を込めた。

 両クラブは昨季、終盤まで優勝争いで火花を散らした。横浜Mは一時、川崎Fとの勝ち点差を8まで離しながら、終盤は2差まで猛追され、執念で逃げ切った。川崎Fは19年に続いて昨季も横浜Mによって悲願の3連覇を阻まれる形となり、対戦に向けた鼻息は荒い。開幕を飾るにふさわしい、熱い戦いが繰り広げられそうだ。

 両クラブの指揮官は、30周年を迎えたJリーグをけん引していく覚悟もにじませた。マスカット監督は「引き続き自分たちが(W杯から続く日本のサッカー熱を)盛り上げていく責任がある。Jリーグを盛り上げるため、マリノスとしてはエキサイティングでエンターテイメント性のあるサッカーをしないといけない責任がある」と話した。

 一方、Jリーグ発足元年に現役選手だった鬼木監督は「感慨深い」としみじみ。「Jリーグは急速に発展してきている。サッカーの質もどんどん上がっている。ただ同時に世界も猛スピードで成長しているので、自分たちはそこに負けないようなエキサイティングなゲームをすること、それがJリーグの今後の発展につながると思っている」と続けた。

 会見には他にも、Jリーグの歴史を知る選手が多く登壇。筆頭は18日の初戦で広島と対戦する札幌の元日本代表MF小野伸二だ。43歳でJ1最年長の〝天才〟は「尊敬する三浦知良選手(55=ポルトガル2部オリベイレンセ)がまだやってらっしゃるので、自分が一番上という気持ちにはなっていない。自分の持っているものを今シーズンチームのためにどれだけできるかという部分で挑戦していきたい」と謙虚に語った。

 プロ26年目を迎えるが、サッカーへの情熱は尽きない。「Jリーグ30周年と、時間があっという間に経ってしまった。もっともっとこれから自分も含めてどうサッカーを盛り上げるか、もう一度考えるいい機会なのかなと思う。たくさんの方にサッカーに魅力を感じてもらい、スタジアムに足を運ぶ人数が増えるように、自分にできることをやっていきたい」と話した。

 かたや、〝舌戦〟を繰り広げたのは36歳の同学年コンビ。18日の初戦で対戦するFC東京の日本代表DF長友佑都と、浦和の元日本代表FW興梠慎三が、火花を散らした。長友は「横にいる興梠慎三選手とは同い年なんですけど」と切り出すと、自身が東福岡、興梠が鵬翔に在籍した高校生時代の思い出を明かした。

 「今では考えられないかもしれないですけど、僕はアンカーでさばきまくっていた。興梠選手をマンマークして、高校のときから言い合いになって喧嘩をよくしていた関係性でもある。そういった意味でも絶対負けたくないなという気持ちで戦いたい」。興梠も「僕が水を飲みに行くときでも付いてきた。そのくらいマンマークが激しい選手でした」と応酬。約20年前から続く因縁を告白した。

 互いに大ベテランだが、いまだ抜群の存在感を誇る。長友は昨年のカタールW杯で優勝経験国のドイツとスペインを破る立役者の一人となり、「ブラボー」という言葉を流行させた。「W杯が終わって帰ってきてから(メディアで)求められるんですけど、なかなかあの熱のブラボーが出せなくて、滑っている感じになっているのが非常につらくて」と笑いながら明かしつつも「Jリーグに対する熱、FC東京に対する熱を、そのとき感じた自分の言葉で発したときにまた大きく広がっていく。自分の気持ちのまま、魂のままで戦っていきたい」と今季のJリーグも盛り上げていくことを誓った。

 札幌から古巣に帰還した興梠も今季に懸ける思いは強い。「この年になってくると1年1年が勝負の年になる。いいパフォーマンスができるのは今年までかなって少し思っている」と吐露。プロ入り後、初めてオフには自主トレーニングを行った理由について、「今まで以上に努力をして、チームのため、そして自分のために今年一年、一回本気で頑張ってみようと思って自主トレからやりました。自主トレって大事だなって感じました」と明かした。

 各選手のさまざまな覚悟がにじむ節目のシーズン。会見にはお笑いコンビ「霜降り明星」のせいや、「EXIT」のりんたろー。、お笑い芸人のゆりやんレトリィバァといった豪華ゲストも駆けつけた。

 この日はバレンタインデーとあって、「バレンタインデーにゆりやんレトリィバァ争奪戦!俺の魅力はここです選手権!」を開催。18クラブそれぞれの代表選手がゆりやんに向けてアピールポイントを挙げた。湘南FW町野修斗が「アップデートされたゴールパフォーマンス」、柏FW細谷真大が「決定力」などとアピールする中、ゆりやんが意気投合したのは神戸の元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタだった。

 「攻撃陣の連携プレー」と掲げるイニエスタに、なぜか「me too。気持ちは一緒ですね」とゆりやん。だが、イニエスタが既婚者であると聞かされると「ばかにすな‼」と大声を張り上げて笑いを呼び込んだ。それでも最後には「運命の人」にイニエスタを選出。「波長が合いました。I love you」とシャーレ型のチョコレートを贈呈。息の合った掛け合いを披露して会場を沸かせた。

 日本国内のサッカー熱が近年では最高潮に達したカタールW杯から約2ヶ月半。このとき生まれた盛り上がりをどう今後につなげていくか。ファンの裾野を広げていくか。それが今季のJリーグのテーマでもある。

 長友は言う。「W杯を経験した身としては、ピッチの中で魅せることはもちろん、ピッチ外でもJリーグの魅力を発信していきたい。全ての選手がメディアを通してJリーグの魅力を伝えることは非常に大切なこと。日本に帰ってきて、テレビなどメディアでJリーグのニュースをあまり目にしないと感じていた。Jリーグ人気を高めるためにもメディアにどんどん出て行くのは非常に大切なこと」

 ピッチの中だけでなく、ピッチの外でファンの熱を高めるための取り組みも不可欠。話題性の多かった今回のキックオフカンファレンスは、その意味で一役買うイベントとなった。壇上の盛り上がりそのままに、いよいよ2023年の戦いが幕を開ける。


VictorySportsNews編集部