ライバルが二大メーカーの代理戦争に

 サッカー界では現在、ユニフォームやスパイクのサプライヤーとしてナイキとアディダスが激しいシェア争いを繰り広げている。プーマやアンブロ、ニューバランス、日本のミズノやアシックスといったメーカーもそれなりの存在感を示してはいるが、二大勢力の影響力は大きい。

 両メーカーとも最新の素材を駆使した斬新なデザインのユニフォームやスパイクを次々と世に送り出し、それによってこれらの製品はこの数十年間で目覚ましい進化を遂げているが、両社の争いにある一つの傾向があることをご存じだろうか。それは、両者のライバル関係が、クラブや選手同士のライバル関係と連動していることが多い、ということだ。

 分かりやすい例として、レアル・マドリーとバルセロナに注目してみよう。R・マドリーのユニフォームサプライヤーはアディダス、バルセロナはナイキだ。両クラブにはクリスティアーノ・ロナウド、リオネル・メッシという何かにつけて比較される2人がいるが、C・ロナウドはナイキのスパイクを、メッシはアディダスのスパイクを履いている。R・マドリーでC・ロナウドと並び称されるギャレス・ベイルはアディダス、バルサでメッシに次ぐスター選手であるネイマールはナイキの契約者だ。

 ちなみに、R・マドリーと同じマドリッド市に本拠を置くアトレティコ・マドリーはナイキのユニフォームを着用している。見事なまでにライバル関係を反映している。

 イタリアに目を転じると、ミラノ市のライバル同士であるミランはアディダスと、インテルはナイキと契約している。インテルの“イタリア・ダービー”の相手であるユヴェントスは、14-15シーズンまではナイキだったが、15-16シーズンからはアディダスに鞍替えしている。

巨額の契約金でライバルに鞍替えも

©Getty Images

 イングランドではかなり複雑な状況となっている。マンチェスターの強豪同士、マンチェスター・ユナイテッドとマンチェスター・シティを見ると、前者はアディダス、後者はナイキと契約している。マンチェスター・Uは14-15シーズンまでナイキだったが、2015年8月1日から10年間の契約でアディダスへと移行。マンチェスター・Cとの差別化が図られた。

 これを受けてかどうかは分からないが、近年のプレミアリーグでマンチェスター・Uと覇権争いを演じることが多いチェルシーは、現在のアディダスとの契約を16-17シーズン限りで更新せず、17-18シーズンからはナイキのユニフォームを着用することになった。

今回、チェルシーは来シーズンからサプライヤーとしてNikeを迎え入れることが決定したようだ。(中略) 英国『Sky Sports』でリポーターを務めるカヴェフ・ソルヘコル氏は今回の契約内容について、年間6000万ポンド(およそ75億7200万円)の15年契約と指摘。
チェルシー、新サプライヤーはNikeに决定!年間75億円の大型契約か

 マンチェスター・Uとアディダスの契約料は年間約71億円と報じられており、ナイキとしてはチェルシーとの間にこれを上回る金額での契約を締結。クラブ同士の覇権争いと両メーカーのシェア争いがシンクロする形となった。

 アディダスの本社があるドイツではどうだろうか。絶対王者バイエルンはアディダスと契約しているが、現状でそのライバルとなるドルトムントはプーマと契約している。プーマもまたドイツのメーカーであり、アディダスとは元々、兄弟ブランドという縁もあるため、この国に限ってはナイキvsアディダスではなく、プーマvsアディダスという構図になるだろう。ドルトムントと過激なダービーを繰り広げるシャルケはアディダスを着用している。

 両メーカーのシェア争いはクラブチームだけにとどまらない。例えば南米の2強と言われるブラジル代表とアルゼンチン代表を見ると、前者はナイキ、後者はアディダスだ。ブラジルのエースであるネイマールとアルゼンチンの10番メッシのサプライヤーについては前述したとおり。両選手はブラジルとアルゼンチン、そしてナイキとアディダスの看板を背負っているようなものだ。ちなみにアルゼンチンでは、昔年のライバル同士であるボカ・ジュニオルスがナイキ、リーベル・プレートがアディダスとなっている。

 話を代表チームに戻し、もっと身近な話をすると、我らが日本代表は1999年4月以降、アディダスと契約し続けている。そして日本のライバルである韓国代表は、96年4月以降、ナイキをサプライヤーとしている。サッカー界でライバル関係があるところには、かなり高い確率でナイキとアディダスが絡んでくるのだ。

 翻ってJリーグを見ると、今のところ両メーカーがシェア争いを繰り広げるようなライバル関係は存在しない。“多摩川クラシコ”のFC東京と川崎フロンターレ、2017シーズンに復活する“大阪ダービー”のガンバ大阪とセレッソ大阪、そして“日本一激しいライバル意識”とも称される松本山雅と長野パルセイロなど、いくつかのライバル関係は存在するが、2大メーカーが介在するには至っていないのが現状だ。両社が絡むライバル関係が出現した時こそ、日本に真の“ダービー”が生まれるのではないだろうか。

池田敏明

著者プロフィール 池田敏明

大学院でインカ帝国史を専攻していたが、”師匠” の敷いたレールに果てしない魅力を感じ転身。専門誌で編集を務めた後にフリーランスとなり、ライター、エディター、スベイ ン語の通訳&翻訳家、カメラマンと幅広くこなす。