時は1981年8月26日後楽園球場にてその事件は起こりました。中日ドラゴンズが読売ジャイアンツに2点リードで迎えた7回裏二死一塁。ピッチャーは中日の星野仙一氏。打者山本功児氏の打球がショート後方へと上がります。後退しながら捕球体勢に入るショート宇野勝氏を見て誰もがキャッチをするだろうと思ったその刹那。なんとナイター照明の光に目がくらみボールを見失った宇野氏のおでこにボールが直撃。

 そのままレフトフェンス際へと転々とし、1塁走者はホームへと帰ってきてしまったのです。完封を狙っていた星野仙一氏がグローブを叩きつける姿も思い出にありますが、それ以上に球場の笑い声が脳裏に焼き付いているこの事件。長き日本プロ野球史で見ても唯一無二の出来事といっても過言ではないでしょう。

 というわけで、今回はこの宇野ヘディング事件をお弁当にしてみましょう。まず用意する材料はこちら。

「宇野ヘディング事件」をお弁当にするために用意するもの

■材料 (1人前)
ごはん………150g
ハム………1枚
チーズ………1枚
カニカマ………2本
海苔………1枚
マヨネーズ………1g

 そして今回は1981年当時の中日のユニフォームの水色を再現するために、こちらを用意します。

 紫キャベツです。まずこちらの紫キャベツを煮込みます。

 10分ほど煮込みキャベツの色素で水が紫になったらここにハムを2~3時間漬け込みます。

 今回薄い水色には重曹を小さじ一杯入れましょう。そうすることで鮮やかな水色になります。インナーの濃い青はそのまま紫の色で作りましょう。

 そしてここからは「宇野」を作っていきましょう。まず宇野の顔、手などを作っていきます。おでこにあたってしまった時の「痛さと戸惑い」をしっかりと表現することが大事ですね。

 そしてここで色が染み込んだハムを取り出します。

 ちょっとびっくりするくらいひいてしまう水色ですが、紫キャベツで色をつけたものなので健康には問題ありません。万が一何か問題があったとしても当時の宇野さんの痛さに比べたらその苦しさなど微々たるものです。我慢して下さい。さて、こちらでユニフォームを作っていきます。

 次はご飯をお弁当箱に敷き詰めます。今回は宇野さんの躍動感を存分に出すために全体にご飯を。その上に後楽園球場の芝生を表す青のりをかけます。

 おでこにあたったボールを点々と転がした芝生も、この事件の立派な立役者です。しっかりと表現しましょう。ここに先ほど作った宇野さん、そしてこの事件の主役でもあるおでこに直撃したボールを添えます。するとどうでしょう。あの宇野ヘディング事件が小さなお弁当箱の中に再現されたではありませんか!

 今にも聞こえてきそうな打球がおでこにめり込む「ゴン」という音。あの一瞬に宇野さんのさまざまな思いが交錯する、ある意味哲学的とも言っていいお弁当ではないでしょうか。

(スペースの問題で胸の文字が若干違うのは目を瞑って下さい)

  今回はおかずはありませんが、紫キャベツのエキスを吸い込んだハムは野菜代わりと言ってもいいですし、ハムの水色で食欲はあまり湧かないと思われるのでこれくらいがいいでしょう。

 今や「宇野」といえば平昌五輪で銀メダルに輝いた宇野昌磨選手の名前があげられがちですが、日本国民に愛された本家「宇野」といえばこちらの宇野勝氏。今後もこの宇野勝氏の伝説が語り継がれていくことを願ってやみません。


ザ・ギース尾関高文