グループステージで敗れたポルトガルと決勝で再戦

アルゼンチンのブエノスアイレスで開催されている第3回ユースオリンピックで、U-18フットサル女子日本代表は準優勝に輝き、銀メダルを獲得した。過去2大会のユースオリンピックでは、サッカーが競技として採用されていたが、今大会ではサッカーに代わって初めてフットサルがユースオリンピック種目に採用された。

この大会に出場したU-18フットサル女子日本代表は、世界に衝撃をもたらした。初戦のカメルーン戦に6-2で勝利した日本は、第2戦でもチリに4-1で勝利。続くドミニカ共和国戦は2点を先制される苦しい展開となるが、6点を取り返して6-2で3連勝を飾り、グループステージ突破を決めた。グループ首位をかけた第4節のポルトガル戦では、3試合で35得点を挙げていた相手に善戦するも、0-2で敗れた。

グループステージを終えて4強が出そろった段階で、金メダルを争うのはポルトガルとスペインという欧州の2カ国だという声が圧倒的だった。ポルトガルはD組で4戦全勝37得点2失点、得失点差は+35。一方のスペインはC組で4戦全勝、39得点5失点得失点差+34という数字を残していた。両国は開幕前に親善試合で対戦しており、1-1で引き分けており、その決着をこのユースオリンピックの舞台で付けることになるだろうと思われた。

そこに割って入ったのが、D組を2位で通過した日本だった。準決勝でスペインと対戦した日本は、ボールを保持させながらも決定機を与えることは少なく、カウンターからチャンスをつくりだした。前半終了間際に先制されたものの、後半開始直後にFP前田海羽のゴールで同点に追いつくと、その後もFP荒井一花のゴールで逆転する。さらにFP追野沙羅が追加点を決めると、終盤のスペインの猛反撃を1点に抑えて3-2で逃げ切り、決勝進出とメダル獲得を確定したのだ。

もう一つの準決勝では前評判通りにポルトガルがボリビアを16-2で蹴散らし、日本はポルトガルと再戦することとなった。

日本フットサル史上、最高の結果を残したU-18女子代表

同じ大会で一度敗れた相手が、再戦の場で勝利するというのは、様々な競技で起こることだ。敗れたときに見えた課題を修正し、次の戦いに備えることができるからである。かつてFリーグで大阪を率いて、名古屋オーシャンズの10連覇を阻んだ智将・木暮賢一郎監督もグループステージの敗戦から修正点をピックアップし、選手たちに伝えていたはずだ。

しかし、決勝は予想しない形でスタートしてしまう。キックオフしたボールを下げたポルトガルは、GKの前でブラインドをつくるように選手がゴール前に走りこむ。ボールを受けたポルトガルのエースであり守備の核でもあるフィフォが、自陣からロングボールを日本のゴール前に放った。このボールがGK須藤優理亜の頭上を越えて、日本のゴールに決まってしまったのだ。意図的なシュートというよりは、ゴール前に入れたアバウトなボールが、そのまま入ったゴールだろう。スペインに逆転勝利をしていた日本も、気落ちすることもなくチャンスをつくったが決めきれない。逆にポルトガルのフィフォに2得点を決められて、0-3で前半を折り返す。

後半2分にも、ポルトガルの女子フル代表でも活躍するフィフォに4点目を決められて、点差を広げられてしまった。日本もその直後にFP前田海羽のパスを受けたFP山川里佳子がゴールを決めたが、反撃もここまで。日本は1-4で敗れて準優勝となった。

金メダルにはあと一歩届かなかったU-18フットサル女子日本代表だが、それでも準決勝でスペインを破ったことをはじめ、世界に与えたインパクトは強烈だった。木暮賢一郎監督は「立ち上がりに本気のポルトガルに対抗できたかというと、少し雰囲気にものまれて、自分たちのやりたいことを出せませんでした。ポルトガルが日本のやりたいことを出させないように、ギアを上げていました。非常に難しい展開になりましたが、その中では彼女たちはよくやってくれました。結果に関係なく、胸を張れる戦いを40分やってくれたと思います」と、選手たちを称賛した。

日本オリンピック委員会のHPには、ユースオリンピックの入賞選手一覧を記したページがある。その2位(銀メダル)の欄には、卓球の張本智一、平野美宇らの名前と共に、「サッカー・フットサル」という競技名、そして今大会に参加したU-18フットサル女子日本代表の10選手の名前が記された。

男女を問わず、日本のフットサル代表がここまで規模の大きい世界大会で、ファイナルを戦ったのは今回が初めてのこと。本大会の開幕9日前に集合して活動を開始した彼女たちが、なぜ世界のトップを争うことができたのだろうか。

U-18フットサル女子日本代表の顔ぶれ

今回のU-18フットサル女子日本代表に名を連ねた10名のうち、GK小林望月、FP横山凜花、FP前田海羽、FP荒井一花、FP山川里佳子、FP池内天紀の6名は、女子の全国リーグである福井丸岡ラックに所属する選手たちだ。彼女たちは子供のころからフットサルとサッカーを並行してプレーし、中学時代にはサッカーでもアルビレックス新潟レディースU-15を破って、2年連続で全国大会に出場していた。そのままサッカーの道に進むことも十分だった少女たちは、「近いうちに必ず、女子フットサルの世界大会ができるから」という前フットサル女子日本代表監督だった伊藤雅範氏(現Fリーグ・バサジィ大分監督)の説得もあり、高校年代になってからもフットサルをプレーした。

そして、この大会が開催される可能性があることを知った福井丸岡ラックの田中悦博監督は、チーム力が落ちることを承知で、このU-18年代の選手だけで組むセットをつくり、日本女子フットサルリーグ(女子Fリーグ)の舞台にも立たせた。チーム練習の中からも、FP北川夏奈、FP高尾茜利の女子フットサル日本代表コンビを中心に後輩たちを鍛え、彼女たちの「フットサルで世界一になる」という夢を後押しした。普段から自分たちよりも年上の選手たちと戦うことに慣れていた彼女たちは、同年代の選手が世界中から集まるユースオリンピックでも安定感あるプレーを見せてくれた。

また、GK須藤優理亜とFP追野沙羅は、富山国際大付属高校サッカー部に所属しており、並行してラオフェンというクラブで、フットサルもプレーしている。ラオフェンは福井丸岡ラックも所属する北信越女子フットサルリーグに参戦しており、彼女たちもそこで経験を積むことができていた。

チーム最年長のFP宮本麻衣と最年少のFP安部美楽乃は、それぞれ京都精華学園高と十文字高のサッカー部で活動している。宮本は同時に女子Fリーグに参戦している流経大メニーナ龍ヶ崎でフットサルもプレーする。安部も今年1月には十文字中のエースとして、同校を全日本女子ユース(U-15)フットサル大会優勝に導いている。

日本国内にはU-18年代の女子フットサルの全国大会はない。それでも、こうしたフットサルの素養がある選手たちが、今回のU-18フットサル女子日本代表に選ばれていたのだ。

銀メダリストたちに、次の世界の舞台を

もう一つカギとなったのが、木暮監督の存在だ。2016年にはシュライカー大阪の監督としてFリーグを制した青年監督は、今年1月よりフットサル女子日本代表の監督に就任した。オファーを受けていた段階から、ユースオリンピックに出場する可能性があることを聞いていた彼は、その出場権を獲得できた場合に備えて、広く全国に足を運び、候補となる選手をリストアップした。また各地域で行われる将来のフットサル日本代表選手を育成・強化するプロジェクトであるフットサルタレントキャラバンなどの活動の際には、選手たちに自身の戦術を伝えていった。代表活動が始まる際に、少しでも共通認識がある状態でスタートさせるためだった。

5月には、タイで開催されたAFC女子フットサル選手権で女子フル代表を率い、「女子フットサルの未来を担う若手を、世界の舞台に連れて行こう」という合言葉の下、チームを準優勝に導いた。こうしてユースオリンピックの出場権を獲得すると、大会開幕直前に招集した選手たちを、国内でのトレーニングマッチから1試合ごとに成長させて、世界の頂点にあと一歩というところまで迫ったのだ。

ユースオリンピックで銀メダルを獲得した他競技の選手たちの多くは、悔しさを口にしながらも、2年後の東京オリンピックへ向けての思いを口にした。しかし、女子フットサルの選手たちに、次の世界大会はない。フットサルはオリンピック種目ではなく、さらに男子のフットサルと違って、女子のフットサルにはFIFA主催のW杯もないからだ。

当初、2020年のフットサルW杯の開催地が日本となった場合、その前年にはプレ大会として、FIFA主催の女子フットサルの世界大会が開催されることになっていた。ようやく今月26日、フットサルW杯の開催地が決定することになっているが、仮に日本開催となっても、その1年後に世界大会を開催するのは容易なことではないだろう。

南米、ヨーロッパ、さらに東南アジアでも、フットサルは競技としての人気が高まってきている。今回、ユースオリンピックで種目化されたことで、IOCの中にも運営コストを含めて、フットサルの魅力は伝わったという声もある。だが、セネガルで開催される2022年のユースオリンピックでは、フットサルに代わって、同国で人気のあるビーチサッカーが競技化される可能性が高いようだ。「フットサルがオリンピック競技になるのは、この競技に携わるすべての夢」と木暮監督が言うように、関係者の間ではフットサルの五輪種目化への期待は高まっている。だが、そこにたどり着くまでの道は、まだまだ長そうだ。

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河合拓

著者プロフィール 河合拓

2002年からフットサル専門誌での仕事を始め、2006年のドイツワールドカップを前にサッカー専門誌に転職。その後、『ゲキサカ』編集部を経て、フリーランスとして活動を開始する。現在はサッカーとフットサルの取材を精力的に続ける。