人的補償で長野選手の獲得が発表された翌日、広島カープの緒方監督は、取材に対してこう答えている。
「若い選手はほとんどプロテクトされていたが、長年巨人で働いていた選手はかなりリストから漏れていた」
このコメントだけを聞くと、第3次原政権となった巨人が若返りを図ろうとしているかのようにも伝わってくる。そういう意図ならば、36歳の内海や34歳の長野の“プロテクト漏れ”も理解できる。だが、29歳の丸以外に、巨人が補強したのは、31歳の炭谷、36歳の中島裕之(前オリックス)、37歳の岩隈久志(前シアトル・マリナーズ)。チームの若返りを目指したというのは、少し無理がある。
「私も横浜DeNAベイスターズ時代に経験しましたが、28人のプロテクトリストを作るのは本当に難しい。どうしても手放したくない選手を“持っていかれる”、絶妙な人数なんです。今回の巨人のプロテクトが不評なのは、チーム作りの方針がブレて見えるからなのでしょうね。長野選手や内海投手といえば、“ザ・ジャイアンツ”みたいな選手。ファンから見れば、なぜ彼らをリストから外したか理解に苦しむと思います。巨人のオーナーは、長野選手が人的補償としてカープに行くことを『断腸の思い』とコメントしていましたが、プロテクトからは外しているのが事実ですし、言ってることとやってることに矛盾があると、ファンもOBの方々も感じてしまっているのでしょうね 」
巨人ファンにしてみれば、「長野をとられた」という気持ちかもしれないが、中心選手の丸を奪われた広島ファンからみれば、「うまいことやったのお!」という気持ちになったのではないかと池田氏は語る。
「個人的には、赤いユニフォームを着た長野選手の姿を見るのだけでも楽しみですね。まるで大物選手同士のトレードのようになりましたが、FAがあるからこういうドラマも生まれる。プロテクトを外された長野選手が巨人相手にどのくらい活躍するか、客観的に言わせてもらえば、両ファンにとっては相当に盛り上がる来シーズンの目玉ですよ。広島ファンとしても、楽しみなんじゃないでしょうか。プロ野球も興行です。巨人の意図はともかく、こういうサプライズは面白いし、盛り上がる。来シーズンの注目ポイントが増えたと考えれば、いいことだと思いますし(そんな割り切りはファンの方には酷だとは思いますが)、巨人ファンにとっては、今後の選手生活の最後や指導者として巨人に戻ってきたりすれば、それはそれで未来にひとつの大きな感動があったりするストーリーがここから生まれたりもしているのです」
カープの3連覇をなんとしても阻止したい原巨人。この人的補償が「敵に塩を贈る」結果にならなければいいのだが……。
[初代横浜DeNAベイスターズ社長・池田純のスポーツ経営学]
<了>
取材協力:文化放送
****************************
文化放送「The News Masters TOKYO」(月~金 AM7:00~9:00)
毎週木曜日レギュラー出演:池田純
****************************
人的補償「長野久義」は、ファン感情に絶妙!プロ野球の興行としても“アリ”!
FA戦線の目玉だった昨年のMVP丸佳浩外野手の人的補償として、広島カープが選んだのは、巨人の生え抜き人気選手、長野久義外野手。長年、レギュラーとしてチームを支えてきたベテラン選手の“プロテクト漏れ”に、巨人ファンやOBからも非難の声が上がっている。昨年末には、炭谷銀仁朗捕手の人的補償として、ベテランの内海哲也投手が西武ライオンズに流出したばかり。このストーブリーグの話題を横浜DeNAベイスターズ初代球団社長の池田純氏は、どのように見ているのだろうか?
(C)共同通信