突然の発表は、大坂なおみのTwitterで行われた。
「こんにちは皆さん、サーシャとはもう一緒に仕事をしないことになった。彼の仕事ぶりに感謝しているし、これからの成功を願っている」
昨年以来、彼女の大活躍と同時に注目を集めたのがサーシャ・バインコーチの存在だった。メンタルが弱いといわれていた彼女の前にひざまずき、自信を与える発言で鼓舞する姿は、世界中に放映され、大きな話題となった。コーチになって1年半、72位だった選手を1位にまで引き上げたのは見事。すべてが順調に思われただけに、突然の解任はさまざまな憶測を呼んだ。

「野球やサッカーでも、コーチと相性のあわない選手がいるでしょう。でもいくらあわないからと言って、選手がコーチをクビにすることはできません。コーチの雇い主は、あくまでもチーム。選手はその決定に従うしかないのです。でもテニスの場合、雇い主は選手自身。2人の間に何があったかわかりませんが、選手が求めるものにコーチが応えられなければ、解任となるのは自然な流れだと思います」

池田氏は、アスリートとコーチの関係を男女の関係にたとえる。
「どんなに完璧な相手でも一緒にいる時間が長いと、いろんなものが見えてくる。アスリートはコーチには常に自分のことだけを見ていてほしい。でもその距離が近づけば近づくほど、相手のイヤな部分も見えてくる。ある意味、結婚以上に難しい関係なんです」

金銭面での問題があったのではないかという声もあるが……。
「あくまでも推定ですが、10億円以上を稼ぐ大坂選手のコーチ料は、6000〜7000万円。グランドスラム優勝のインセンティブを加えれば1億円以上あると思われます。それだけの報酬をもらっている以上、バインコーチ側もいつ切られても不思議じゃないという覚悟はあるはずですから、そこが原因だとは思えない。バインコーチは、Twitterで大坂選手に返信する形で『ありがとう、なおみ。私もあなたの成功を願っている。すごい道のりだった。その一部に関わらせてくれたことに感謝している』という大人のコメントを出しました。これだけの実績を作って、さらに人柄もいいとなれば、今後も引く手あまたでしょう」

GS連覇中の大坂なおみにとって、これからが正念場だ。
「テレビで大坂選手の練習するシーンを観ていたら、『もっとこういうサーブを打って』と言われたバインコーチが『僕にはこれ以上無理だよ』と答えていた。急激に実力をつけた大坂選手にとって、バインコーチが物足りなくなったのかもしれません。これから全仏、そしてウィンブルドンを戦う彼女も結果がでなければ、コーチ解任を批判されることはわかっているはず。そのリスクを背負ってでも、決断したということは、それだけの覚悟をしているということ。コートで戦うのは彼女自身。その決断にまわりがとやかくいうことはないと思います」

世界ランク1位とはいえ、まだ21歳の大坂なおみ。今回の彼女の決断が正解だったといえる日が来ることを祈る。



[初代横浜DeNAベイスターズ社長・池田純のスポーツ経営学]
<了>

取材協力:文化放送

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VictorySportsNews編集部