2018年は、開幕戦がイ ミニョン、2戦目がアン ソンジュ、3戦目が鈴木愛、4戦目がフェービー・ヤオ、5戦目がアン ソンジュという序盤戦だったので、2019年は日本人選手の奮闘が際立っている。

その理由は2つの大きな要因が考えられる。1つ目の理由が、河本結の勝利に代表される黄金世代の台頭だ。彼女と同学年の1998年4月~1999年3月生まれは、勝みなみが2014年4月の「KKT杯バンテリンレディスオープン」でアマチュア優勝し、2016年10月には畑岡奈紗がメジャー競技の「日本女子オープンゴルフ選手権」でアマチュア優勝という快挙を達成。高校在学中に二人の選手が勝利を手にした。

これに刺激を受けた同世代の選手たちが、プロ入り後に次々と活躍。2018年4月の「サイバーエージェント レディスゴルフトーナメント」で新垣比菜がツアー初優勝を挙げ、2018年8月の「CAT Ladies」では大里桃子が初優勝。河本結は黄金世代で5人目の優勝者になった。

しかも、これに続こうとしている選手がまだたくさんいる。2018年に38試合中13試合でトップ10フィニッシュを果たし、賞金ランキング8位で初シードを獲得した小祝さくら。ステップ・アップ・ツアーで2勝を挙げ、レギュラーツアーでも賞金ランキング38位でシードを獲得した原英莉花。今季前半戦の出場資格をかけたQT(クオリファイングトーナメント)で上位に入ったQTランキング2位の淺井咲希、6位の三浦桃香、9位の小滝水音、21位の吉本ひかるなどが虎視眈々と初優勝を狙っている。

そうなると、今までツアーの主役だった世代も負けていられない。25歳の比嘉真美子がツアー5勝目を挙げ、24歳の鈴木愛と32歳の上田桃子が元賞金女王の貫禄を見せ、東京五輪への出場を熱望する26歳の成田美寿々が接戦を制した。若手、中堅、ベテランが切磋琢磨し、ツアーの魅力を増している。

そして、日本人選手の活躍が目立つもう1つの理由は、東京五輪である。東京五輪の出場資格は次のようになっている。2020年6月30日時点のオリンピックゴルフランキング上位15位までの選手で、各国最大4名まで。 ②16位以下については、1カ国2名(15位以内の有資格者も含む)を上限とする。 ③5大陸(アフリカ、アメリカ、アジア、ヨーロッパ、オセアニア)ごとに、1人も出場資格を有するアスリートがいない場合は、男女ともに最低1つの出場枠が保証される。 ④大会開催国から1人も出場資格を有するアスリートがいない場合は、男女とも1つの出場枠が保証される。

2019年4月14日時点のオリンピックゴルフランキングで上位に入っている日本人選手は、5位の畑岡奈紗と19位の鈴木愛の2人。だが、鈴木愛の実際の世界ランキングは26位で、43位の比嘉真美子、51位の成田美寿々、61位の上田桃子、67位の小祝さくら、77位の勝みなみ、78位の菊地絵理香、84位の新垣比菜、88位の松田鈴英、98位の岡山絵里といった選手たちは逆転の可能性が十分にある。

一方、韓国人のオリンピックゴルフランキング上位選手は、1位コ ジンヨン、2位パク ソンヒョン、7位パク インビ、9位ユ ソヨンの4人。これに続く世界ランキング上位選手も、14位ヤン ヒヨン、17位キム インキョン、19 位キム セヨン、20位チ ウンヒ、21位イ ジョンウン6と、いずれも米女子ツアーを主戦場にしている選手となっている。

日本ツアーを主戦場にしている選手の中で世界ランキング最上位は23位の申ジエだが、東京五輪に出場するためには6人を追い抜かなければならない。これは日本で戦っている限り、実質的に不可能だ。

五輪のゴルフ競技は2016年のリオデジャネイロ大会から復活したが、出場選手の選考基準が決まった時点で、韓国人選手は日本ツアーを主戦場にしている限り、出場が難しいことが明らかになった。イ ボミは2015年に7勝を挙げ、2016年の前半戦でも2勝を挙げたが、韓国の五輪代表候補の中では7番目で落選した。そして、五輪で金メダルを獲得したのはパク インビだった。

これを受けて、五輪を目指す韓国人選手は米女子ツアーに参戦する流れが加速した。23歳のコ ジンヨン、25歳のパク ソンヒョン、30歳のパク インビ、28歳のユ ソヨン、29歳のヤン ヒヨン、30歳のキム インキョン、26歳のキム セヨン、32歳のチ ウンヒ、22歳のイ ジョンウン6と、韓国人選手の若手、中堅、ベテランが切磋琢磨する舞台は米女子ツアーになっている。

一方、2018年に日本ツアーの賞金シードを獲得した外国人選手の年齢を見ると、1位のアン ソンジュ(韓国)が31歳。2位の申ジエ(韓国)が30歳。6位の黄アルム(韓国)が31歳。13位のテレサ・ルー(台湾)が31歳。14位のペ ヒギョン(韓国)が26歳。15位のフェービー・ヤオ(台湾)が26歳。17位のユン チェヨン(韓国)が32歳。18位のイ ミニョン(韓国)が27歳。19位の李知姫(韓国)が40歳。24位のジョン ジェウン(韓国)が29歳。29位のキム ハヌル(韓国)が30歳。40位のカリス・ディビッドソン(オーストラリア)が20歳。

女性の年齢のことを指摘するのは心苦しいが、自国に大きなツアーがないカリス・ディビッドソンを除くと、日本を主戦場にしているのは中堅とベテランばかりになっている。自国開催の五輪に出たい日本人選手とのモチベーションの差は明らかで、国内勢の奮闘は2020年6月に五輪出場選手が決まるまでしばらく続きそうだ。


保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。