2014年4月の「KKT杯バンテリンレディスオープン」で、当時高校1年生だった勝みなみがアマチュア優勝し、2016年10月の「日本女子オープンゴルフ選手権競技」で同学年の畑岡奈紗が追随したことにより、1998年4月2日~1999年4月1日生まれの学年が黄金世代と呼ばれるようになった。

畑岡奈紗はアマチュア優勝直後にプロ転向したが、他の選手たちは2017年7月のプロテスト以降にツアーへの本格参戦を始めた。そして、2017年2勝、2018年4勝、2019年5勝と、順調に勝ち星を積み上げている。

しかも、2017年と2018年は年間38試合での勝利数だが、2019年は14試合で5勝と驚異的な勝率を誇っている(6月9日現在)。

勝利の内訳は、勝みなみ3勝、畑岡奈紗3勝(日米共催の2018年TOTOジャパンクラシックを含む)、新垣比菜1勝、大里桃子1勝、河本結1勝、渋野日向子1勝、原英莉花1勝。1学年で7人もの選手が一斉に勝っているのも、史上空前の出来事である。

だが、このような快挙に水を差しているように感じるのが、テレビ局が生中継を途中で打ち切ったり、臨場感のない録画中継を続けたりしている視聴者を置き去りにした対応だ。

象徴的だったのが、原英莉花がプレーオフ2ホール目でペ ソンウを下して勝利した「リゾートトラストレディス」。原英莉花がウイニングパットを決める直前で地上波の放送が終わり、続きはBS朝日で放送されたが、地上波しか見られない環境で視聴していた人は非常にもどかしい思いをしただろう。

一方で、この試合は生放送に対して非常に積極的だったとも感じる。8時~13時にCS放送のスカイAで生中継し、13時55分~15時20分に地上波24局全国ネットで生中継し、15時16分~16時にBS朝日で生中継しており、ゴルフトーナメントをできる限り生中継で伝えたいという意志は伝わってくる。

ただ、CS放送から地上波、そしてBS放送へと渡り歩かなければならないところが、残念ながら視聴者ファーストではなくテレビ局ファーストなのである。

視聴者の立場からすると、スポーツ観戦はもはやテレビである必要性はない。サッカーのJリーグは英国のパフォームグループが提供するスポーツ専門の動画配信サービス「DAZN(ダゾーン)」でスマホやタブレットなどさまざまな端末から見られるし、プロ野球も「DAZN」で全試合が見られるようになった。

バスケットボールのBリーグもソフトバンクが提供する「バスケットLIVE」や「DAZN」で見られるようになっている。

ゴルフだけ、なぜこんなに視聴者の利便性向上が遅れているのだろうか。それは「日本女子ツアーの放映権が1967年の協会創立以来、所在が不明確なまま51年間が経過しており、曖昧な状況下でテレビ中継が行われていたのは、初期のトーナメントがテレビコンテンツ事業として始まったことに起因している」からだ。

テレビ局は、女子ツアーが人気のない時代から、自ら主催者となり、スポンサーを集め、試合を放送してきた。それが今の女子ツアー人気につながっている。

ただ、そのような歴史的背景は、今の視聴者には何の関係もない。視聴者にとって不便な状況を改善するため、日本女子ツアーは放映権を一括管理しようとしているが、そのような動きに対してテレビ局サイドは不快感を示している。ゴルフは視聴者にとって観戦しにくいスポーツになっているということだろう。

宮里藍がアマチュア優勝した2003年から米ツアーに参戦するまでの2005年、女子ツアーは史上空前の藍ちゃんフィーバーが起こった。その当時、テレビ視聴率は絶好調だった。

今は黄金世代が活躍しても、テレビ視聴率がなかなか伸びない。そのような現状を受けて、「黄金世代は宮里藍ほどのスター性がない」という人もいるが、本当にそうなのか。テレビというメディア自体が、視聴者の興味を満たせなくなっているのではないか。

女子ツアーとテレビ局の対立の構図を見ていると、女子ツアーが新しいことにチャレンジし、変化しようとしているのに対して、テレビ局サイドが変化することを極端に嫌がっているように感じる。

このような意識の違いは、米国のゴルフ界と日本のゴルフ界の間でも似たものを感じることがある。具体例を挙げると、マスターズ開催コースのオーガスタナショナルゴルフクラブは今年、大会前週に女子アマチュア大会を開催した。その取り組みには、「伝統を守るためには、常に新しいことにチャレンジし、変化を続ける」という強い信念を感じる。

一方、日本のゴルフトーナメントの多くは、「伝統を守ることは、先人たちが築いてきた歴史的行事をそのまま踏襲すること」だと思い込んでいるような気がしてならない。女子ツアーのテレビ放送に関わる人たちも、現場レベルでは新しいチャレンジをしているのかもしれないが、上層部はおそらく同様の価値観を持っているのだろう。

女子ツアーとテレビ局は、今も水面下で2020年シーズンの放映権について交渉を続けているだろうが、両者の意識の差が埋まらなければ、議論は平行線をたどると思われる。

そうなったとき、視聴者の利便性を向上させたいという強い信念があるのであれば、女子ツアーはリスクを承知で大きな決断を下す局面が訪れるかもしれない。

保井友秀

著者プロフィール 保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。