一方の八村は節目の20試合消化時点(5日シクサーズ戦終了時点)で、開幕から全試合に先発。1試合平均28.7分出場で、14.1得点5.7リバウンドを記録して、主力の地位を確立している。通算100得点到達はデビューから8戦目。これは06年にジョン・ウォール(29)が記録した6戦目に次ぐチーム史上2番目に早い記録だ。

ゴール下で強さを発揮し、ボールを失うターンオーバーも少ない。プロ1年目とは思えない安定感が光るが、勝負の分かれ目となる終盤の重要な場面では存在感が希薄になる現状がある。クオーター(Q)ごとのフィールドゴールの試投数と成功数は第1Qの試投79、成功36、第2Qの試投68、成功40、第3Qの試投77、成功36に対して、第4Qは試投20、成功9とゴールにアタックする回数が激減。第4Qは出番がない試合も7あった。
NBAでは接戦の土壇場でチームの大黒柱に〝全権〟を委任するのが通例で、ウィザーズの場合はブラッドリー・ビール(26)にボールを集める傾向が強い。八村も「ブラッド(ビール)は1年で20億、30億円もらっている。勝負所でその人がボールを持たなくて誰が持つのですかという感じ。僕はルーキー。そういう所はプロの世界なので理解している」と納得している。

ビールと八村の年俸には、どのぐらいの差があるのか。NBAドラフトで1巡目指名された選手は2年目まで無条件、3年目はオプションでの契約が保証されている。年俸は指名順位ごとに設定されている新人標準額(ルーキースケール)の20%の増減幅が認められているが、大半の選手が標準額の1.2倍に相当する最高額で契約する。

今年のドラフトで全体トップの1巡目1位指名されたザイオン・ウィリアムソン(デューク大→ペリカンズ)の初年度年俸は974万4840ドル(約10億4000万円)に達する見込みだ。標準額は前年比で約16%アップしており、八村が指名された1巡目9位は昨年の312万700ドルから371万9500ドルに増加。これを1.2倍にした446万3400ドル(約4億8000万円)が初年度の最大限度額となる。レギュラーシーズンは82試合。フル出場したと仮定すると八村の1試合当たりの単価は約585万円だ。

ウィザーズの最高年俸のビールは2709万3018ドル(約29億円)となっている。1試合単価は約3500万円。八村の約6倍の額で、前出の発言にも合点がいく。
ちなみに今季のリーグ最高年俸は2度のシーズンMVPを誇るステフィン・カリー(ウォリアーズ)の4023万1758ドル(約43億円)。日本のプロ野球チームの19年度の年俸総額で、カリー1人の年俸を上回っているのは、ソフトバンク(55億9000万円)と巨人(51億9000万円)の2球団だけで、3位の阪神(34億2000万円)以下10球団は下回っている。

NBAの有力選手の収入には目を見張るばかりだが、八村もスター街道を駆け上がる可能性を秘めている。12月1日(日本時間2日)のクリッパーズ戦では今季のルーキーで2位タイの記録となる30得点をマーク。本職のポジションはパワーフォワードだが、主力センターのトーマス・ブライアント(22)の故障離脱を受けて、3日(日本時間4日)のマジック戦以降はプロ入り後経験のなかった5番の位置でもプレー。複数の位置で安定したパフォーマンスを続けている。サンダー監督時代の09~10年に最優秀ヘッドコーチ賞を受賞したスコット・ブルックス監督(54)の評価も高い。

各チームのアシスタントコーチによる投票でプロ1、2年目の若手選手からメンバーを決める来年2月14日(日本時間15日)のライジング・スターズ・チャレンジ(若手のオールスターの位置付け)の出場も有力視されている。ドラフト全体9位の2年目の最大限度額は468万6720ドル(約5億円)。オプションとなる3年目以降は活躍次第で更に大幅な伸びが期待できる。ビールの存在を尊重しながら、いかに存在感を増していくか。クラッチタイム(接戦の終盤)で攻撃を託される立場になれば、数十億円の年俸も視界に入ってくる。


木本新也