スキージャンプは負担の大きい競技 続けたくても続けることができないという状況の子もいる

――スキージャンプを始めたきっかけとその面白さとは?
私が初めて飛んだときは、自分でスタートが切れませんでした。押してもらってスタートしたんですけど、そのときの浮遊感が忘れられなくて、ジャンプを続けるようになりました。今でも空中での浮遊感であったりスピード感であったりが、すごく楽しいですし刺激的ですね。実際に良いジャンプをして着地したときに、会場で見ている人たちが盛り上がっている様子を見ると、「やっていて良かったなあ」と思います。

――高梨選手が子供の頃は、どのような活動をしていたのでしょうか?
私は地元の上川スポーツ少年団に入っていたんですけど地元にジャンプ台はなくて、学校終わりで毎日のように士別の朝日町まで車で一時間かけて移動して、練習してから帰ってくるという生活を送っていました。道具はもちろんですが移動費など、お金のかかる競技なので家族には大変な思いをさせたと思います。スキージャンプの活動をするうえで、お金の面でも保護者への負担がかかる競技なので、今活動している子どもたちが少しでも頑張れる環境を整えてあげることができたら良いですね。

――道具も含めて負担が大きいんですね。
そうですね。スキージャンプの道具は一般的に需要があるものではないので、どうしても値段が高くなってしまいます。スキー板だけではなく、スキージャンプブーツ、ウエアなどをすべてそろえないと競技は出来ません。ですから、やりたくてもできない、続けたくてもできないという状況の子もいるんです。そのために少年団のなかで先輩たちが使っていたものをみんなで回して使うこともあるんです。ただ、道具は毎年アップデートしていくので、子どもたちにも新しい道具を少しでも多く使ってもらえたらと思いますね。

©Unlim

本場ヨーロッパとの環境の違い 競技普及のためには子どもたちの力が必要

――道具を含めた環境が、競技をする子どもたちには重要なのでしょうか?
そう思います。スキージャンプという競技は小さい頃からの感覚が大事になってくるスポーツです。練習に集中できる環境であったり、自分のモチベーションとなる道具がそろっていたりすることはすごく重要ですね。

――道具はモチベーションになるんですか?
私は大会の賞品でゴーグルや手袋をもらえると、すごくうれしかった記憶があります。

――高梨選手はもらった道具のなかでは、何がうれしかったのですか。
私は手袋ですね。とてもうれしかったです(笑)。

――世界では子どもたちが競技を行う環境が整っているのでしょうか?
ヨーロッパではスキージャンプは歴史あるメジャー競技なので、練習するための設備や環境はしっかりしています。道具もヨーロッパで作っているものが多いので、日本にいるより安く購入できるというメリットがあります。

――道具の差が競技結果の差につながるのでしょうか?
用具を使うスポーツではあるので、その差はかなり出てきてしまいますね。

――高梨選手が競技者として訴えたいこととは?
やはり、スキージャンプという競技について、一般の人たちにも興味を持ってもらえるようになってほしいと思っています。それには子どもたちの力が必要で、競技レベルを底上げしなければなりません。そのためには練習環境を整えることが、一番になってくると思います。今後のスキージャンプの普及や発展のためにも、そういった環境を作っていくことに寄与できたらなとも考えています。

©Unlim

(あとがき)※Unlimについて
スキージャンプの普及に寄与したいと考える高梨沙羅は、スポーツギフティングサービス「Unlim」への参画を決めた。そこで得た資金で、現在競技を行なっている子どもたちのモチベーションを高めるようなことをしたいという。たとえば、自分が子どもの頃にモチベーションとなった賞品の提供を模索している。子どもが参加する大会に、手袋やゴーグルなど競技に必要な道具を賞品として提供してみたいと訴えている。それが第二の高梨沙羅を生み、スキージャンプの普及につながると、高梨沙羅は信じている。

高梨沙羅が温暖化等の環境問題を訴える 「夏の競技と錯覚してしまうくらい」

女子スキージャンプの高梨沙羅は、競技を取り巻く環境を心配している。スキージャンプの競技人口を増やしていきたいという願いはあるものの、競技に必要な雪が昨今は少なくなってきている現実を嘆き問題視している。今回はそういった競技特有の環境問題や地元・北海道への思いを吐露する。(文=佐藤俊、写真=高橋学)


佐藤俊

1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒。仕事はサッカー、陸上、卓球などスポーツから伝統芸能など幅広く、「断らない主義」です。著者「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「越境フットボーラ―」(角川書店)、「駅伝王者青学 光と影」(主婦と生活社)等々。