任意捜査の結果、10月15日に容疑が固まり、マンジーとともに書類送検されることが決定。クラブは当面は両選手のチーム活動への参加を禁止し、10月19日の臨時取締役会で処分を決定する。

 是永大輔社長(43)は「所属選手の不祥事により、Jリーグに関わる方々、ファン、サポーターの皆様に多大なるご迷惑をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げます。飲酒・酒気帯び運転は極めて危険な行為であると認識しており、決して許されるものではありません。社会の規範であるべきプロサッカー選手であるということ、また、再発防止という意味を込めて厳正な処分を臨時取締役会にて諮ります。今後は選手、スタッフへの教育を再徹底していく所存です」とコメントを出した。

 クラブはファビオ側から報告を受けており、是永社長、玉乃淳GM(36)らは事案を把握していたが、約1カ月も公表しなかった。ファビオは数日間練習を欠席。9月19日の徳島戦を欠場したものの、同23日の愛媛戦から10月14日の福岡戦まで6試合に出場している。玉野GMはオルトネダ監督(52=スペイン)に徳島戦での起用も促したが、指揮官は試合直前の練習を休んでいたことを理由にメンバーから外した。

 他の選手には数日間の練習欠席理由は「個人的な事情」とだけ説明されており、発表直前になって、ようやく事実が伝えられた。クラブは「公表および処分については、警察の指示を仰ぎながら任意捜査が終了して、確定的な判断が出るのを待ってから行うこととしました」としたが、酒気帯び運転後もプレーを続けた事実は重い。

 さらに問題視されるのがJリーグへの報告が極めて遅かったことだ。クラブは「捜査期間中は警察の指導に従うとともに、Jリーグや関係各所への報告と情報共有を行い、両選手に対する指導監督を行ってまいりました」と説明しているが、関係者によると、Jリーグに報告を入れたのは発表前日の10月14日。外部からの垂れ込みがありJリーグが10月12日にクラブに問い合わせたところ、2日後に事実を認める返答があったという。

 10月14日も捜査期間中であり“捜査期間中にJリーグに報告した”という言い分に嘘はないが、迅速に情報共有して対応してきたように受けとれる実に紛らわしい表現だ。周囲からの批判を避けるために、報告まで1カ月近くを要したことを公にしたくなかった意図が透けて見える。

 ファビオは今季ブラジルのクラブから加入した身長1メートル92のストライカー。19年にはブラジル全国選手権2部で得点ランク2位の15ゴールを記録している。今季のJ2は上位2位が来季J1に自動昇格。新潟は昇格争いに踏みとどまっており、ファビオは今季19試合5得点を挙げるなど攻撃の軸を担っていた。4年ぶりのJ1復帰を目指すクラブが、得点源を1試合でも多くピッチに立たせるためにJリーグへの報告を意図的に遅らせた可能性を指摘されても仕方ない状況といえる。

 Jリーグはコンプライアンス強化に取り組んでおり、14年に鳥栖は運転免許取り消し中に飲酒運転で逮捕されたスクールコーチとの契約を解除。17年にJ2岐阜は酒気帯び運転中に物損事故を起こした選手を解雇している。新潟の対応の拙さは否めず、Jリーグから何らかの制裁が科される可能性は高い。

 是永社長は携帯電話サッカーサイトの編集長などを経て、08年にシンガポールリーグに所属するアルビレックス新潟シンガポールの社長に就任。就任以降黒字経営を続けてチームを強豪に押し上げた。カンボジア、タイ、ミャンマー、香港などでスポーツビジネスを立ち上げた実績も買われ、19年1月に新潟の社長に就いた。

 就任直後に、スペイン・バルセロナに本社を置き、フランス・パリSGの育成組織構築にも携わった「サッカーサービス社」と3年契約を締結。サッカースタイル確立へ向け「メソッド部門」を新設するなどドラスティックな改革が注目を集めてきた。一方で10月10日のアウェー京都戦前のスタジアムでアウェーグッズ使用禁止エリアを新潟のジャージーを着て視察し、相手サポーターから批判を浴びるなど脇の甘さも目立つ。

 是永社長は10月19日の臨時取締役会後に会見を開く予定。飲酒運転の再発防止に向けた選手、スタッフへの再教育の徹底を約束しているが、クラブぐるみの隠蔽があったのであれば、選手の不祥事とは比較にならない大問題となる。意図的な隠蔽がなかったとしても、管理能力、インテグリティーを問われる事案であることは間違いない。真相究明が急がれる。


VictorySportsNews編集部