しかも、法人需要などで利用されることの多いゴルフコンペの予約は前年比86.1パーセントだったにもかかわらず、法人需要の減少分を大きく上回るほど個人需要が伸びているという。その要因は、自宅などでのリモート勤務を採用する企業が増加して余暇時間が増えたこと、外出先として人混みが避けられるようになったことなど、新しい生活様式の普及が大きかったと同社では分析している。

■新規若年層の増加

また、世代ごとにデータを見ると、若年層(20~30代)の予約数が前年の約2倍に増加しているという特徴もある。若者が感染予防対策の困難な他のレジャーやアクティビティから、新たな余暇時間の選択としてゴルフへと移行している可能性が高いようだ。

ゴルフはかつて年輩者のスポーツの代表格だったが、近年は渋野日向子など若手女子プロゴルファーの活躍などにより、若年層にも注目されるようになってきた。それに加え、ゴルフがソーシャルディスタンスを保ちやすい条件のスポーツであることから、多くの若者が興味を持ち始めているのかもしれない。

プロゴルフの世界では20代前半が若手、20代後半になると中堅、30代になるとベテランと呼ばれるほど若年化が進んでいるが、アマチュアゴルフの世界では40代でも若手と呼ばれるくらい高齢化が進んでいたので、20~30代がゴルフを始めるのは本当にうれしいことである。

ゴルフを始めたばかりの人によく聞かれるのが「ゴルフ保険って何ですか?」「ゴルフ保険には入らなきゃいけないんですか?」という質問である。どのように答えるかは、その人のゴルフに対する取り組み次第である。1年に2~3回プレーする程度であれば、コンビニエンスストアで申し込める1日数百円のゴルフ保険があるから、それを勧める。1カ月か2カ月に1回のペースでプレーするようになったら、「何かあったときのためにゴルフ保険に入っておいたほうがいいよ」とアドバイスするだろう。

ゴルフ保険とは主に次の4項目を補償してくれる。
(1)賠償責任補償……プレー中や練習中、他人にケガをさせたり、死亡させたり、他人の物を壊してしまった場合の補償。
(2)傷害補償……プレー中や練習中、自分がケガをした場合の補償。
(3)ゴルフ用品補償……ゴルフ場やゴルフ練習場でゴルフ用品が盗まれたり、ゴルフクラブの破損が起きたりした場合の補償。
(4)ホールインワン・アルバトロス費用補償……ホールインワン・アルバトロスを達成した場合にかかる祝賀会や記念品購入費用など、実際にかかった費用の補償。

■ホールインワン・アルバトロス費用補償とは

この中で補足説明が必要なのが、ホールインワン・アルバトロス費用補償だろう。日本ではなぜかホールインワン(パー3を1打でカップイン)やアルバトロス(パー5を2打でカップイン)を達成した人が祝賀会を開いたり、記念品を作って配ったりする風習がある。また、メンバーコースであれば達成したホールに記念植樹を行う文化もある。

どうしてこのような風習が広まったのかは定かではないが、保険会社がそのための補償として最高100万円のプランを用意するほどだから、大人数のコンペでホールインワンを達成した場合などは、それくらいの出費を覚悟しなければならなかったのだろう。

実際、ゴルフ保険に関する話がゴルファーの間で始まると、必ずと言っていいほどホールインワンの話題になる。「ゴルフを始めたばかりのころにホールインワンが出ちゃって、保険に入っていなかったから大変な思いをした」とか、「それに懲りて保険に入ったが、そこから30年以上ホールインワンが出ていない」といった具合である。

ただ、かつてはキャディつきプレーが主流で、キャディがホールインワンの達成を証明していたが、近年はセルフプレーが主流になっており、ゴルフ場従業員や利害関係のない前後の組の目撃者がいることが支払い条件になっていることが多い。それを逆手に取った詐欺事件なども発生しており、保険会社の目は厳しくなっている。

あるゴルファーはセルフプレーでホールインワンを達成し、そのホールの近くに茶店があったのでボールがカップに入っているところを従業員に確認してもらったが、そのボールが本当にティグラウンドから打ってカップに入ったのか証明できないため、保険が下りなかったという。

また、別のゴルファーは日本最古のゴルフ場である神戸ゴルフ倶楽部でホールインワンを達成したが、ここはパー3が11ホール、パー4が7ホールで構成されているパー61のコースであるため保険の支払い対象にならなかったという。

一方で、ホールインワンを2回も3回も達成し、そのたびに同伴競技者に配る記念品だけでなく自分への記念品として日付入りのパターなどを作っている人もいる。ホールインワンは腕前が達者だからといって出るものではなく、プロゴルファーでもよく出る選手とまったく出ない選手がいる。表現のたとえとして、「宝くじに当たったようなもの」と言われることが多い。

そう考えると、自分や他人がケガをしたり、ゴルフクラブが破損したりといった災難だけでなく、宝くじに当たるという幸運に備える保険というのはあまりないかもしれない。年間3000円くらいで手軽に加入できるプランもあるので、ゴルフを始めるのであれば補償内容を見比べながら検討してほしい。


保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。