実際、ゴルフ場でもゴルフ練習場でも、今年は若者の姿を目にする機会が明らかに増えた。他のレジャーに比べて3密(密閉・密集・密接)を避けて楽しめるということもあり、多くの若者がゴルフを始めているようだ。

 一方、既存のゴルファーは2020年にラウンド数が減った人と増えた人が二極化した印象がある。ラウンド数が減ったのは年配のゴルファーで、新型コロナウイルスに感染した際の重症化リスクが高いため、緊急事態宣言中はゴルフに行きたくても家族から外出禁止令を出されていた人が多かったようだ。

 ラウンド数が増えたのは独身者やDINKs(共働きで子どもを持たない夫婦)など、普段から仲間内でゴルフを楽しんでいる人たち。リモート勤務を採用する企業が増加して余暇時間が増えたことや、外出先として人混みを避ける「新しい生活様式」の普及が影響したと見られる。

 ただ、ゴルフをしていて普段から感じるのは、そもそもゴルフ人口における独身者、DINKs、年配ゴルファーの割合が圧倒的に高く、子育て世代がゴルフにほとんど参加できていないのではないかということだ。

 私は1974年生まれの団塊ジュニア世代で、東京在住の7歳と4歳の子を持つ父親だが、子育てしながらゴルフをしている同世代を普段はほとんど見かけない。かつてゴルフ雑誌の編集部に在籍していたため、ゴルフ業界には同世代の知り合いがいるが、一般企業に勤めている大学の同級生などはゴルフをしない人が圧倒的多数だ。

 これは首都圏在住者と地方在住者で状況が少し異なるかもしれない。地方在住者は子育て世代でもゴルフをしている友人がけっこういる。片道30分程度の距離にゴルフ場があり、プレーが終わって家に帰れば家族と一緒に夕食を囲む時間に間に合うので、月1回程度のラウンドであれば許容されているようだ。

 それが首都圏在住者になると、ゴルフ場はどんなに近くても片道1時間、平均すると1時間30分かけてコースに行き、帰りは東京湾アクアラインの渋滞に巻き込まれて3時間近くかかったりする。私はフリーランスのライターで、普段は朝食も夕食も家族と一緒に食べているから月1~2回程度のラウンドは許容されているが、一般企業に勤めていて残業も多く、家族と一緒に食事をする機会が少ない人が休みの日にゴルフへ行くのはなかなかハードルが高いだろう。

子育て世代のゴルファーの実情

 だが、子育て世代のゴルファーがまったくいないわけではない。今年は彼らの苦労話を聞く機会が何度かあった。皆さん独身時代は月1~2回くらいのペースでラウンドをしていたが、結婚して子どもが生まれてからゴルフがほとんどできなくなったという。

 ゴルフを始めたきっかけは仕事の取引先と一緒にラウンドするためだったが、今は接待交際費を使って取引先とゴルフに行く機会は格段に減っているという。自腹でゴルフに行くのは妻の目が厳しく、1年に2~3回のラウンドが精いっぱい。でも、若い人たちがゴルフを始めていると聞いて、居ても立ってもいられず妻を説得してラウンドに駆けつけたというのだ。

 中には練習場に行くことも禁止されている人がいて、その人は1年に2~3回のラウンドのために自宅の庭で毎日素振りをしていると語っていた。そんな状況でもゴルフをやめないだけあって、コースでは半年ぶりのラウンドとは思えないほど素晴らしいショットを打つ。ただ、傾斜地からのショットやアプローチなどは実戦不足もあり、大きなミスが出ることもある。でも、そんなことなど気にせず、実に楽しそうにひさしぶりのラウンドを満喫しているのだ。

 新生銀行による「2020年サラリーマンのお小遣い調査」の結果によると、男性会社員の1カ月のお小遣い(昼食代を含む)は20代が41,377円、30代が37,874円、40代が36,449円、50代が41,987円だという。40代は働き盛りなのにお小遣いは最も少ないのだから、ゴルフの回数が限られてくるのはしょうがない。

 今年ゴルフを始めた若い人たちも、今は独身で金銭的にも時間的にも余裕があるが、彼らが結婚して子どもができたときゴルフを続けられるかというと難しいかもしれない。それであればゴルフ業界は子育て世代に何らかの働きかけができないだろうか。

 たとえば緊急事態宣言時に推奨されたスループレーは時間短縮で効率的にプレーできると好評だったが、緊急事態宣言が解除された後はレストランの減少した売上を元に戻すため昼食をはさむスタイルに戻ったコースが多かった。

 しかし、お小遣いが少ない子育て世代はゴルフ場のレストランで1,500円のカレーライスや1,700円の生姜焼き定食を食べる金銭的余裕はないのだ。スループレーで回れて、コンビニのおにぎりやサンドイッチの持ち込みOKだったら、ラウンドの回数をもう少し増やせるかもしれない。

 法人を中心としたコンペ需要は2021年も壊滅状態であることは目に見えている。それであれば、若者のゴルフブームに触発されてゴルフ熱が再燃した子育て世代の個人需要を取り込む施策を考えてみてはどうか。かつては熱心にゴルフをしていた子育て世代をゴルフ場に呼び戻すことが、今回のゴルフブームを長続きさせるカギになる気がする。

保井友秀

著者プロフィール 保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。