1試合で1万超の事象を記録するスコアラー

 スコアラーとは、簡単に言うと試合のデータを収集し分析するスタッフである。どの球団でも組織化されており、基本的にチームをサポートする「チーム付きスコアラー」、次のカードで対戦するチームのデータを取る「先乗りスコアラー」、次々カードで対戦するチームのデータを取る「先々乗りスコアラー」など役割分担されている。また、球団によってはチーム毎の担当制を採用し、1年間同じスコアラーが特定のチームに密着するケースもある。

 彼らによって、試合中の1球ごとのデータが詳細に記録される。コースや球種、球速など1球投げる毎に発生する事象を事細かに専用のソフトで入力していくが、その数は1試合を通して約300球、事象数にすると1万を超える。野球は比較的インターバルの多いスポーツではあるが、試合終了までの約3時間は集中を切らすことはできない。もはや一つの職人芸と言えるだろう。こうして蓄積されたデータをスコアラーが分析し、首脳陣や選手に提供する。これが一連のスコアラー業務だ。

 スコアラーの仕事は技術の進歩により大きく変化している。テレビ中継がない時代では球場に足を運ぶことでしかデータは取れなかった。収集方法もアナログでチャート表と言われる紙に記録しており、それらをまとめて再集計しようとすると莫大な時間と労力を擁した。しかし、今ではテレビどころかスマートフォンで視聴することができ、データ収集はパソコンで行うのが当たり前になっている。集計や資料作成も格段に効率化された。

 近年ではトラッキングシステムが導入されるなど技術革新が目覚ましい。現在はスコアラーの主観(見た感覚)でデータを採取しているが、今後は自動で採取された客観的なデータがメインになってくる。主観的なデータと客観的なデータが住み分けされることで、またスコアラーの業務は大きく変化していくことになるだろう。

独自のネットワークから“原石”を発掘するスカウト

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 スカウトとは、ドラフトに向けて選手を発掘する部隊である。球団によって異なるが10名前後で組織されており、北海道・東北、関東、中部、関西、中四国、九州など各地区に振り分けられる。基本的には選手が集まる関東に力を入れるチームが多いが、阪神タイガースだったら関西、福岡ソフトバンクホークスだったら九州といった自身の球団がある地域に力を入れるチームもある。

 高校野球なら甲子園、大学野球なら大学選手権、社会人なら都市対抗など主要な大会またはその予選で目星をつけるのが一般的だ。もちろん例外もある。スカウトは独自のネットワークを担当地域に張りめぐらせており、育成出身で昨年12勝3敗の成績を残した千賀滉大(福岡ソフトバンクホークス)はスポーツ店の店主からの推薦がきっかけでプロ入りを果たしたという。

 選手をピックアップするだけなら誰でもできるが、スカウトにはその選手が数年後どのようになっているのかを見立てる目利きが必要となる。プロ入りした選手がすべて理想とする選手像に近づくわけではないが、大きな期待を持ってドラフトで指名している。

 そしてスカウトは、指名された選手が初めて出会うプロ野球関係者であり、一番近い庇護者でもある。契約の場だけの関係ではなくプロ入り後も選手の両親と繋がっているスカウトも少なくない。指名した選手がどのような経過を辿っていくかを見守っていく使命もある。担当コーチは頻繁に変わるが、担当スカウトという肩書は一生変わることがない。

 その他にも欠かせない裏方がいる。宿泊するホテルや移動便の手配、それ以外にもスケジュール管理や選手の入れ替えの手続き、食事の手配など雑務全般を行うのがマネージャーの仕事だ。選手のコンディションを管理するトレーナー。野球道具の運搬や選手が着たユニフォームのランドリー手配などプロ野球選手の仕事道具を管理する用具担当。ヒーローインタビューやメディアの取材などのアポイントメント、チームのスポークマンを担うのが広報である。そして、試合を行うためにはグランドキーパーの存在も不可欠だ。

 スコアラーとスカウトを重点的に紹介してきたが「裏方」の役割はさまざまで、どれも欠くことのできない重要な仕事だ。華やかなスポットライトを浴びる選手たちの活躍の陰には、必ずそれを支える裏方がいることを忘れないでほしい。


VictorySportsNews編集部