人気商売のプロ野球界でも、たまに週刊誌を騒がせる不倫ネタが出回る。最近では楽天・則本昂大の泥沼不倫離婚が発覚し、球団を通じて謝罪した。昨年は阪神のエース、西勇輝のゴシップが判明。直後の先発登板で完投し、お立ち台でファンに謝罪する一幕もあった。

 選手を管理する球団はそれ以上、咎めることもなく、そのうち世間が忘れてしまうことを息をひそめて願う。時間というものは経過とともに、風化をもたらすので、結構便利なものである。

プロ野球選手は”モテる”

 そもそもプロ野球選手というのは、極めてモテる商売だ。1球団あたり、支配下登録選手は70人以内。育成選手制度を積極導入し、3軍制まで敷く球団も増えてきたが、それでもNPB(日本プロ野球組織)に所属するプロ野球選手は、ひと握りの集団だ。有名であり、希少価値もあり、筋骨隆々で、若いころから1軍にいれば、金銭的にも恵まれている。となれば、女性は放っておかない。

 時間的な余裕もある。シーズンの半分は遠征に出る。2月のキャンプも含めれば、家よりも外に出ている期間が長くなる。遠征に出れば、ホテル暮らし。試合が終われば、外食し、朝方まで深酒しても、ビジターなので、昼過ぎまで寝ていることができる。遊ぶ時間はたくさんある。タニマチと呼ばれる後援者との付き合いも大切だ。もちろん、これはビフォーコロナの話。第4波の真っただ中、そんな過ごし方をしている選手はいないと信じたいが…。英雄色を好むとはよくいったものだ。

「娘はプロ野球選手には嫁がせん」と真顔で話したプロ野球選手OB 

 派手な生活をしているので、私生活が破綻している選手もよく見かける。統計を取ったわけではないが、球界は離婚率、再婚率が一般社会よりも高いように感じる。選手名鑑の家族構成を聞き回っているときに、ある選手から「離婚して再婚したことをおばあちゃんは知らないから、前の嫁さんの名前のまま載せといて」と頼まれたという話を聞いたことがある。「娘はプロ野球選手には嫁がせん」と真顔で話したプロ野球選手OBがいたというのは、作り話ではない。

 NPB球団は不祥事があれば、管轄するコミッショナー事務局に報告することになっている。世に出なかった不祥事は、実は山のようにあると言われている。各球団の球団関係者の名簿を見ると、警察OBを顧問として招き入れているケースがある。選手が起こしたトラブルの解決に力を貸してもらうためだ。今も昔もすべてのプロ野球選手が、品行方正な人間というわけではない。

 好感度が高い芸能人の不倫が発覚し、奈落の底に落ちるケースが最近散見される。プロ野球選手はそこまでの処分や世間からの指弾、ましてや社会的制裁を加えられることはない。昨年9月、札幌遠征中の禁止されていた部外者との会食が女性との密会であったことがのちに週刊誌報道で明らかになったロッテの清田育宏は、1月15日無期限謹慎処分を科された。この外食がコロナウイルスの集団感染を招く一因となったのに、球団に虚偽の報告をしていたことを問題視されての厳罰だった。5月1日に解除された清田は「反省の気持ちを忘れることなく自分を律しチームの勝利に貢献していきたい」とコメントした。

 おしどり夫婦のイメージで、メディアへの露出も多かった競泳の東京五輪代表、瀬戸大也は不倫発覚で、水連から出場停止処分を食らい、多くのスポンサーを失った。同じアスリートなのに、なぜここまで差が出るのだろうか。

プロ野球選手は球団の厚い庇護の下、メディアやゴシップから守られている

 プロ野球選手が球団と契約するのに対し、多くの個人競技のトップ選手は事務所に所属し、その上で個人スポンサーを募っている。契約の成り立ちが、芸能人と所属事務所の関係に似ているからと考えれば、なんとなく合点がいく。そういったことを考えれば、プロ野球選手は球団の厚い庇護の下、メディアやゴシップから守られているといっていい。立ち位置が違うから、波風のさらされ方が違うのだ。

 プロ野球選手の不倫がバレても、ほぼほぼスルーされることについて、ある球界関係者に聞いてみた。「グラウンドにゼニが落ちているからだろう、プロ野球には。そりゃ、芸能人とプロ野球選手は違うよ」との返答があった。人気球団の幹部を歴任したその人は、南海監督として、歴代最多1773勝をあげた、親分こと、鶴岡一人氏のセリフを引き合いに出した。ファンは品行方正なふるまいを求めているのでなく、野球場という非日常空間で繰り広げられる高いパフォーマンス見たさに入場料を払っているわけだ。契約し、高い年俸を払う球団もしかり。もちろん不法行為であれば、球団も厳しく取り締まるであろうが、不倫は本来、その家族の間の問題である。

 球界が不倫に寛容というわけではない。むしろ、芸能人に対する世間からの締め付けがあまりにも、厳しいのだろう。プロ野球選手に求められているのは、好感度でなく、圧倒的な成績なのだ。だから、「みそぎの完投」などという、よくわからない贖罪がまかり通るのである。


VictorySportsNews編集部