梅雨の時期になるとラウンドを控えるゴルファーは多い。せっかくゴルフ場に行って一日を過ごすのだから、晴れた日に気持ちよくプレーしたいという気持ちはよく分かる。ゴルフ場関係者の話によると、天気予報で雨の確率が高くなるとキャンセルが増え始め、実際に雨が降ると当日キャンセルが続出するという。ゴルフはかつて多少の雨でもプレーするスポーツだったが、近ごろは雨が降ったらラウンドしない人が一定数いるようだ。

 ただ、アマチュアゴルファーを数多く取材してきた経験の中で、最も印象に残っているラウンドとして雨の日のゴルフの思い出を語る人はけっこういる。「バケツをひっくり返したような雨の中で懸命に18ホールをプレーしたら、クラブハウスに戻ったとき他の組はみんな途中でリタイアしていて、完走したのは自分たちの組だけだった」とか、「冬の雨の日にブルブル震えながらプレーしていたら、雨が途中から雪に変わってグリーン上でボールを転がすと雪だるまみたいになった」といったエピソードをうれしそうに話す。

 「そんなエピソードなんて別にいらない」と思うかもしれないが、アマチュアゴルファーが人に語れるエピソードなんて、だいたいパターン化している。「初ラウンドのスコアはいくつだったか」、「ゴルフを始めて何年で100を切ったか」、「ベストスコアはいくつか」、「1年間で何ラウンドするか」、「どこのゴルフ場がよかったか」、「ホールインワンを出したことがあるか」といったことくらいだ。それであれば、特異な天候条件でプレーした思い出をエピソードとして持っておくのは有意義かもしれない。そう考えると、雨の日のラウンドをキャンセルするのは少しもったいない気がする。

“雨の日ゴルフ”を楽しむために

 個人的にはゴルフ場がクローズしない限り、同伴者がプレーを中断しようと言わない限り、雨でもプレーする。なぜならば、ゴルフはそういうものだと教わってきたし、大人になってから雨の日に屋外で長時間過ごす機会なんてゴルフくらいしかないので、非日常的な体験を味わうことができるからだ。

 20代のころはゴルフ場でその場しのぎに購入した1着1000円程度の安物のレインウェアを着て、シャツやパンツまでびしょ濡れになりながらプレーしていた。30代になってからはもう少し対策が必要だろうと思い始め、高性能レインウェアの購入を検討したが、1着3万円前後の商品の購入はさすがにためらい、1万円前後の商品にした。ただ、これは結果的にミスジャッジだった。最初のうちは安物に比べてはるかに快適だと思っていたが、しばらくすると大差がなくなってきた。

 40代になってから思い切って1着3万円前後のレインウェアを購入した。これが大正解だった。感動的なほど雨をはじいてくれる。購入して4年が経過した今も性能の高さを維持しており、雨ゴルフがまったく苦にならなくなった。

 もっとも、レインウェアの性能は必ずしも値段で決まるものではないようだ。高価格帯の商品を購入したにもかかわらず、性能に不満を感じているケースもある。レインウェアの性能は耐水圧と透湿性で決まるので、その数値が大きければ大きいほど性能が高い。耐水圧と透湿性はメーカーによって異なるので、しっかりチェックしたほうがよい。

 また、レインウェアの性能に満足していたにもかかわらず、洗濯機で洗ったことによって性能が劣化してしまうケースもあるようだ。専門家に聞けば性能が劣化しない洗濯の仕方もあると思うのだが、私はその話を聞いて怖くなり、レインウェアの汚れは布に洗剤液を染み込ませてこすり落とし、乾いた布で拭き取るというメンテナンスを行っている。

 ただ、どんなに性能の高いレインウェアを着用していても、守り切れないのが頭と手だ。この点については雨に強いキャップとグローブを導入するのがオススメ。そういった機能をアピールしている商品はそんなに外れることがないし、価格帯もそれほど高額ではない。

 私は普段、薄手のグローブを使用しているが、雨の日は握りづらくなると感じるので、キャディバッグに雨の日用の厚手のモデルも常備している。グローブを変えると握り心地も変わるが、雨の日にいいスコアで回ろうなんて思っていないし、楽しく回れればOKなので水濡れに強いことを優先する。キャップも雨に強い商品はそれなりに性能が高い。雨用のキャップを用意するのが難しければ防水スプレーを吹きかけるだけでも効果がある。こういった対策を施せばゴルフは雨の日でも楽しめる。

 雨の日のゴルフが好きではない人に話を聞くと、やはり晴れの日と比べてわずらわしいことが増えると感じてしまうようだ。でも、晴れの日と比べるのではなく、雨の日ならではのゴルフの面白さがあると発想を変えれば、それなりに楽しくラウンドできる気がする。


保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。