—ガンバ大阪のパートナーになろうと思ったきっかけと経緯を教えてください。

「ガンバ大阪のパートナーになる少し前からACミランやレスター・シティーなど、海外のプロリーグでいくつかのサポートをしていました。サッカーは走り続けるスポーツで、当社も車を足元から支えるタイヤメーカーとして親和性を見出していました。Jリーグの中でも、ガンバ大阪は発足時から加盟しているオリジナル10の一角であり、その戦う姿勢に当社の企業姿勢と相通じるものがあったので支えていきたいという思いでパートナーになりました。当社はサッカーという世界で最も多くの人々に影響力のあるスポーツコンテンツを介して、ブランドステータスを向上させる取り組みを進めてきたこともあり、関西企業として関西を代表する名門クラブとの契約に至りました」

—パートナーになって、ガンバのどんなところに魅力を感じましたか。

「クラブもさることながら、サポーターの皆さんが地元チームに対する強い愛情を持って『わが大阪、自分たちの大阪』の象徴と感じているところです。ガンバサポーターであることのプライドや誇り、アイデンティティが溢れていて、サポーターに愛されるとても一体感のあるクラブだと感じました。そういう皆さんが支えてこられたものがあるので、当社は一緒に応援させてもらう新参者として、サポーターの皆さんに受け入れてもらうことを意識してリスペクトし、それを表現し、さまざまな活動に取り組みました」

—パートナーデーの紹介で「サポーターとともに」という部分を強調されていたのも、その熱意に寄り添うことを意識されていたのでしょうか。

「その通りです。私たちにとってパートナーデーとは『TOYO TIREはサポーターとともにあり、ガンバ大阪とともにある』ということを伝える日であり、その日の空間をいつもよりも特別なものに盛り上げる、という積み重ねをしてきたつもりです。ガンバが勝っても負けても一緒にいて、サポーターの一員として認められたいという思いがありましたね」

—数ある取り組みで最初に浮かんだのは、パートナーデーとして行われた2019年の大阪ダービーでした。注目度の高い試合で、ビッグフラッグやバルーンをどのような思いで実施されましたか。

「やはり大阪ダービーはひときわ熱のこもる特別な試合です。選手の皆さんにとっても、関係者にとっても、サポーターにとってもそうだと思います。そういう意味でライバルという存在は大きく、セレッソ大阪さんがあって初めてここまで盛り上がるのだというリスペクトも持っていました。えも言われぬ空気感、スタジアムが作り出す独特の雰囲気はホームの選手にとって一番のサポートになると思いました。その日のスタジアムには、いつもはないものを設置してみようと考えました。『絶対に勝つんだ!』という思いを表現するためにビッグフラッグやバルーンを掲出しました。バルーンで試合が見えにくくなったり、風で動いて危険だったり、調整も簡単な話ではなかったのですが最終的には皆さんに喜んでいただけたと思っています」

—コレオグラフィーも大阪の街並みが圧巻でした。全ての施策を踏まえて、思い描いていた光景になった手応えはありましたか。

「あのコレオグラフィーは、サポーターの皆さんと一緒に考えた図柄なんです。コレオをダービーで掲げられないかという話は以前からしていましたが、それには様々なサポーターの皆さんのご理解とご協力が必要でした。吹田の街並みや大阪の街並みを表しながら、観戦される皆さんの気持ちを具現化するため、コレオのパネルが何枚いるかという計算から始まりました。他にはない、大阪らしいコレオづくりをサポーターの皆さんと共に取り組めたことはとても印象深い足跡になったと思います」

大阪ダービーのコレオグラフィー。サポーターと一緒に考えた図柄だ。

—コロナの影響でスタジアムになかなか集えない中、昨年の「大阪が、ふたつに分かれてひとつになる日。」という取り組みは、SNSでの展開や交通広告など新たな展開も見せました。

「昨年のパートナーデーは、たまたまコロナ禍で中断を余儀なくされたJリーグが再開され、ガンバ大阪にとっては再開後の最初のホームゲームを大阪ダービーで戦うことになりました。これを当社がパートナーデーとしてサポートする好機に恵まれました。無観客でしたが、サッカーの試合が再開されることは当時、コロナ禍を乗り越えて日常に近づくシンボリックなものという機運がありました。そういう意味では「チームは違えど、同じ大阪の2クラブが戦えることを喜び合い、ともにコロナを乗り越えていこう」というメッセージに共感してもらえるタイミングであったと思います。事実、ガンバのパートナーである当社の企画に対し、セレッソ大阪さんからエンブレムをお借りできたことはこれを象徴しており、画期的なことでした。まさに『大阪がひとつになれた日』と思っています。SNS上でも思った以上に好意的な反応をいただいて、大阪が元気になれる施策として浸透できたと考えています」

—サポートを始めてから、社外で感じた影響はどんなものですか。

「やはりサポーターの皆さんの認知は高まっていると感じます。パンツスポンサーからユニフォームスポンサーになったのが2020年でした。パンツにTOYO TIRESロゴが消えたことに『あれ?TOYO TIRESがなくなってるやん』という反響があったことは嬉しい驚きでした。袖にロゴが移ったことで反響を得られるくらい認知度があったんだ、と社内のメンバーと喜び合いました」

—社内にもガンバファンは増えたと感じていますか。

「圧倒的に増えたと実感しています。社内の一体感を作るために、ユニフォームのプレゼントなどさまざまな施策を行いますが、応募の数も多く、パートナーデーに社員を招待するとあっという間に席が埋まってしまいます。なにより『子供に自慢できた』とか『家族が喜んでくれた』という声が多くあります。パンツスポンサーからユニフォームスポンサーに移るシーズンの前後では、街角に展示されているユニフォームが更新できていないものも一部あり、それをたまたま見た社員が電話をかけてきて、『袖のスポンサーになったのについてない。ちゃんと交換しとかないと』と怒られるんですよ(笑)。そこまで浸透してきたのが嬉しいですね」

—クラブ、サポーター、パートナーと関わる全ての人がハッピーになる視点というのは、パートナーになる企業の中でもなかなか持ち得ないものだと思います。それを実現するために考えられていることはなんですか。

「選手やチーム、ネームブランド、ネームバリューを自社の宣伝のために利用しようという考えを排除して取り組んでいます。文化を支え、一緒にやっていくことでwin-winの関係にしっかり紐付けることが重要だと考えています。慈善事業でサポートしているわけではありませんが、チームや選手はもちろん、応援している人たちに寄り添って応援し続けることで一人でも多くの人たちに『TOYO TIREっていいね』、『TOYO TIREの企画はいつも楽しみだ』と思ってもらえると、ブランドに対する親近感や共感が生まれ育っていくと信じています。当社はパートナーであって主役ではありません。あくまで黒子として、多くの人々とチームが結びついていく場面、良い循環を作ることができたらと思っています」

—パートナーを務められてから、チームを取り巻く環境も社会情勢も大きく変化しました。ガンバは今年で30周年という節目も迎えますが、その中でサポートのあり方や想いに変化はありますか。

「コロナ禍で無観客試合や試合自体が中止や延期と制限がある中ですが、当社は今までやってきたスタンスを基本に持ちながら、より一層サポーターの皆さんの声や選手の声を相互に感じられる空間作りをしていくことを目標にしています。これまでなら届かなかった声や想いを見える化できる施策に取り組んでいきたいと考えています。ガンバの節目の年ではありますが、当社ができる限りのよりよいサポート方法を模索していきたいと思っています」

邨田直人

著者プロフィール 邨田直人

サンケイスポーツ運動部(大阪)。1994年、大阪府高石市生まれ。2018年度に入社し、2019年2月から関西サッカー担当。現在、2022カタールW杯予選全試合を取材中。第38、39回大阪国際女子マラソンの広報を務めた。