引退を覚悟していた平山選手と、一度は引退をした立野選手による新たなカップル結成

平山姫里有選手(ひらやま・きりあ、以下平山)
「2019年の全日本でリズムダンスの成績が良くなかったんです。親にお金を出してもらってやっているので、結果を出さないと続けられないとの思いが強く、フリーダンスの時には(ああ、もう終わりだな)と、引退を念頭において、最後だと思って演技をしていました。」

その時期に立野選手が、怪我のために若くして現役を引退し、同じチームでアシスタントコーチを務めていたのだ。やはり怪我が快復したことで現役復帰を決断したのだろうか。

立野在選手(たての・ある、以下立野)
「怪我が良くなったのもあるんですけど、アシスタントコーチをしていて、現役の若い選手達の練習を見ているうちに、(いいな、やっぱりやりたいな)という気持ちが強くなったんです。」

奇しくも現役引退を視野に入れていた平山選手、現役復帰を志していた立野選手という組み合わせが同じチーム内で成立。そうしてカップルを組んでから早1年。平山選手にとって立野選手はシニアに上がってからは3人目、ノービス時代からの通算では7人目のパートナーとなるそうだ。

平山
「色んな人と組みましたが、立野選手は昔からやっているので、コンパルソリーを含め、とても技術があると思います。」

立野選手はコンパルソリーダンスが大好きだと良く取材で語っている。ただ現在のリズムダンスの中のコンパルソリーの部分については、独特の考え方を持っているようだ。

立野
「元々僕が好きなのはコンパルソリーなので、フィンステップならフィンステップでちゃんと一周やりたい。そこに何かこだわりがあるというよりは、最近はあまり注力はしてなくて、プログラムとしてちゃんと成立する、レベルの高いものに仕上げたい、という気持ちが強いです。」

(C)Unlim

カップル結成から一年、一段とレベルを上げ、順調に進む調整

結成から1年を経た今の練習の進捗具合、心境の変化などについて聞いてみた。

立野
「お互いにアイスダンス歴が長いので、当初から合わせようとしなくても合っていたと思います。なので昨年の全日本が終わってからの練習では、合わせることではなく、個々のスキルアップであったりとか、スケーティングスタイルだとかに重点を置いています。」

平山
「合わせようというよりは、二人でスピードを出すためのエクササイズだとか、スケーティングをやってきてます。」

立野
「結成当初とは根本的に練習内容が変わっている感じです。フィジカルもそうですし、一個一個のスケートの伸びを重視して、普通にただただ滑っているだけじゃなく、ちゃんとスケーティングが伸びていくように練習しています。」

伸びがあってスピードがあって、エッジが深くて、という方向だろうか。

立野
「そこにプラス、パワーもあるように、全部が両立できるようにトレーニングしています。」

それらの項目は、まさにPCS(演技構成点)の評価に直結する内容だ。

立野
「PCSにも直結しますし、ターン一つ取っても、エッジの明確さだとか、テクニカルな面にもつながるのではないかと思います。」

例えばキーポイント(パターンダンスのステップの中で、テクニカルパネルがレベル判定のためにチェックをするポイント)を確実に取るなどの点だろうか。

立野
「それもそうですし、例えばステップシークエンスのエントリーのエッジがぶれてしまうとターンを取ってもらえなかったりするので、そういった点の改善にもつながります。」

昨年よりも上のランクを目指して練習を続けていることがひしひしと感じられる内容だ。その手応えについて質問してみた。

平山
「試合に出てみないと手応えが分かりません。6月に予定されていた三笠宮杯でおおよそのレベルが分かるかな、と思っていたんですが、それが延期になってしまったので、難しいです。」

三笠宮杯アイスダンシング競技大会という大会があり、ここで新プログラムを披露し、ジャッジの方々に評価してもらうことで、練習の進捗具合を客観的に見つめることができるはずだったのだが、新型コロナ禍の影響で9月へと延期されてしまったのだ。

立野
「ジャッジの方々に評価してもらえるのが大分先になってしまいました。ローカル大会ではアイスダンスのカテゴリーがなかったり、あってもオープン競技という形で点数を出してもらえなかったりします。現状はコーチを信じてやっていくしかないです。」

(C)Unlim

成果発表の場を得られない状況で、アルバイトをして活動を続ける二人

練習の成果を発揮する機会がなかなか得られないというもどかしさが伝わってくる。これにはスポーツギフティングサービス、Unlimで受けた支援に恩返しをしたい、という思いも絡んでいるようだ。

立野
「全日本の直前にUnlimへの参加を発表して、全日本期間中に集まった寄付が多かったんですよ。ただそれ以降、出られる大会がなく、何か発表できることもない。元々Unlimというサービス自体が、ファンからのギフティングに対して、結果を出すことでお返しをする、という仕組みじゃないですか。その結果を出す場がない、ということがなかなか厳しい現状だな、と感じています。」

彼らは競技を続けるため、資金集めのために飲食店でアルバイトをしているという話だったが、こちらの現状も厳しいものがあるようだ。

立野
「最近は時短営業が続いて、アルバイトのシフトで入れるところが少ないんです。大体、半減している感じです。」

そんな中、スポーツギフティングサービス、Unlimに参加して、多くの支援をファンからいただけている。毎月支援して下さるファンもいるのだそうだ。そんなファンの皆様に現状報告をする場が欲しいと、インスタグラムで発信をすることも始めたとのことだ。競技を続ける上での活動資金についての現状も語ってもらった。

立野
「僕個人で言えば、家賃から活動資金からほぼ自分で賄っている状況なので、プラスマイナスで言えば完全にマイナスです。それも仕方ないのかなと思っています。仕事しながらできることではないので。それを支援していただけることは本当にありがたいなと感じています。」

平山
「親の支援や、アルバイトの収入だけでなく、Unlimで支援が集まるので、練習以外のトレーニングや体のケアに使うことが出来て、とても助かっています。」

難しい状況の中、目標とする北京五輪のシーズンが始まる。今の時点での手応えについて聞いてみた。

立野
「手応えで言ったら、まだ客観的な評価をいただいていないので何も分からない状態です。」

平山
「曲は決まって、今決まっていることについては自信はありますけど、実際まだ見せられてないし、何も言えない、という感じです。」

立野
「ただ、何か、根拠のない自信はあります。」

試合に出れば、評価をしてもらえる、と言えるだけの練習が積めているということだろうか。

立野
「そう思います。実際、先シーズンも同じで、根拠のない自信はあったんですけど、結局評価につながらなかった部分はあったんです。ただ1年目は厳しく見られがちだということもあったと思いますし、やっている練習内容もレベルアップしているので、自信はあります。自信がなかったら言わないし(笑)、これで結果が出なかったらただの大ぼら吹きです(笑)」

アイスダンスは、フィギュアスケートの中でも特に、評価が出るまでに時間がかかる競技だという面がある。良いスケーティングをして、良いステップを踏んでいても、それが点数に反映されるまでにタイムラグがある。また今のコロナ禍で、国際大会でアピールする機会が得られていない、という厳しさもあるように感じる。

立野
「そうですね。純粋に、我々のことを知らない海外のジャッジに一回評価をしていただきたいな、と思っていて、ただその機会がない。海外に練習拠点を持つことも今は難しいですし、今季が既にオリンピックシーズンなので、今から拠点を変えることは難しいと考えていて、国内で練習することになるんですけど、そうなると海外のローカル大会に出ることが難しいと思うんですね。どこかで第三者の評価をもらいたいと思うんです。どうにかならないかと。」

(C)Unlim

今季にかける思い、そして今の彼らにモチベーションを与えているものは

気の早い話かもしれないが、北京五輪の先についても聞いてみた。二人はアイスダンサーとしてはまだ若く、長く続けることで真価を発揮できるように感じたからなのだが、当人達の思いはこの1年に集中することに向かっているようだ。

立野
「先のことは、考えてないです。本当に考えてないです。まず大きい目標を立てて、そこに向かって行くことを考えようと。その先のことを考えてしまうと、(まだ先もあるし)という気持ちになってしまう気がするので、オリンピックという目標に突っ走っていくだけですね。オリンピックの選考のためには、全日本ももちろんですが、その前にある東日本選手権、そこで結果を出さないと全日本での選考対象にすら上がらないので、まずは東日本選手権で結果を出さないと、と思っています。」

彼らは西日本の所属だが、アイスダンスの西日本選手権は、東京での東日本選手権にて東西合同で開催される。まずは9月の三笠宮杯で上達した姿を見てもらい、それから10月末の東日本選手権に向けて仕上げていく、というプランのようだ。

立野
「三笠宮杯が9月に延期されたことでそこに向けて完成度を上げていけるかなと。そこから東日本に向けて、もう一度ピークを作って行くことは可能だと思うので、自信はあります。ベースのスケーティングスキルの強化をしているので、先シーズンとはまた違ったものを見せられるのではないかと思います。」

最後にファンに向けての感謝の気持ちを語ってくれた。

立野
「大会が延期になっている状況で、そんな中でもギフティング、応援のコメントをいただけるとモチベーションになります。今は頑張れるものがそれしかない。自分達のスケートに納得して終わりたい、という目標はあるんです。ただ、それだけを軸にモチベーションを維持するのは難しくて、応援のコメントをいただけると、頑張ろう、ギフティングをしていただけると、頑張ろう、と。今は本当にそれが自分達の中にある支えの一つなんです。」

平山
「もちろん東日本、全日本や、もっと先の北京五輪という目標はありますが、どれも先の目標です。三笠宮杯が延期になって直近の目標がなくなってしまった今、モチベーションを維持できる理由が応援、ギフティングなんです。モチベーションの継続につながっているので、応援をいただけることは本当に嬉しいです。」

選手からこんな率直な感謝の気持ちを聞けることは、ファンにとっても応援することの励みになる。かつては選手とファンの思いを直接つなげることは難しかったのだが、今ではギフティングサービスやSNSによって新たな関係性が作られ、その新たな応援の形が選手のモチベーション、パフォーマンスに大きな影響を与える時代になったのだと感じる。二人が遺憾なくパフォーマンスを発揮し、北京五輪という夢を叶えられることを大いに期待したい。

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(C)Unlim
VictorySportsNews編集部

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