大会副会長を務める福岡市長の高島宗一郎氏(46)はカウントダウンの催しが1年前ではなく200日前になったことに言及。「(1年前は)コロナの影響により難しかった。でも時は来た。ワクチン接種も進み、感染対策に関しても分かってきたことが多い。この大会をみんなが動き出すきっかけにしたい」と意気込みを語った。

 大会は来年5月13日に開幕。同29日までの17日間の日程で競泳、飛込、ハイダイビング、水球、アーティスティックスイミング、オープンウォータースイミングの全6競技76種目が実施される。日本で世界水泳が開催されるのは2001年福岡大会以来21年ぶり2回目。当初は21年夏の開催を予定していたが、東京五輪の1年延期に伴い、日程がスライドした。

 イベントには12年ロンドン五輪女子100m背泳ぎ銅メダリストの寺川綾(36)、12年ロンドン五輪男子200m背泳ぎ銀メダリストの入江陵介(31)、12年ロンドン五輪女子200m平泳ぎ銀メダリストの鈴木聡美(30)、飛び込みで6度の五輪出場を誇る寺内健(41)ら水泳界に名を残すオリンピアンが集結した。

 入江は東京五輪後に引退も考えたが、7大会連続の世界水泳出場を目指して現役続行を決断。「まだ泳ぎたい気持ちがあった。たくさんの人の前で泳ぎたいという気持ちもどこかにあって、そういった色々な気持ちが僕を世界水泳に繋げてくれた」と視線を上げた。

 同じく現役続行を決めた寺内は2001年世界水泳福岡大会も経験。20年前に3位となり日本飛び込み界初メダルを獲得しており「20年前はまさか21年後にまた福岡で世界水泳が開催されて、それを自分が目指しているとは想像もしていなかった。今でも日々の練習の中で以前よりも強くなれていると実感することがある。それが自分を突き動かしている。ぜひ福岡に恩返しをしたい」と力を込めた。

 20年前の世界水泳福岡大会で日本は金1、銀1、銅7の計9個のメダルを獲得。シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)のデュエットで立花美哉、武田美保ペアが獲得した金メダルが記念すべき日本勢の世界選手権第1号金メダルとなった。河童をモチーフに作られた大会マスコット「ぱちゃぽ」は現在も日本水泳連盟のマスコットとして活躍する。

 21年ぶりに福岡に戻って来る世界水泳。日本のエースとして期待されるのが東京五輪の競泳女子200、400mの個人メドレーで2冠を達成した大橋悠依(26)だ。東京五輪までは400mを軸に練習を積んできたが「今後は200mに重点を置く考えがある」と本命種目を200mにシフトする方針。200m個人メドレーを軸に、得意泳法のバタフライなどで代表権を狙う可能性もある。

 東京五輪競泳男子200mバタフライ銀メダルの本多灯(19)は同種目の絶対王者クリストフ・ミラク(21=ハンガリー)を倒すことを目標に掲げる。五輪でメダルなしに終わった競泳男子の瀬戸大也(27)は今冬に米国を転々として、複数の名コーチのもとで武者修行を積む予定。200、400m個人メドレーの2冠に輝いた19年世界選手権(韓国・光州)の再現を狙う。

 日本学生選手権(10月7~10日)の競泳女子200mバタフライで東京五輪代表の長谷川涼香(21)を破って優勝した林希菜(20)や、日本短水路選手権(10月16、17日)の競泳女子400m個人メドレーを制した中学3年の成田実生(14)ら若手の台頭もある。世界水泳の競泳の代表選考会は来年3月に開催予定。東京五輪ではリレー種目のみの出場だった池江璃花子(21)が個人種目で出場権を獲得できるかも注目される。

 飛び込みは41歳のレジェンド寺内、東京五輪で7位となり日本勢21年ぶりの入賞を果たした玉井陸斗(15)、女子では世界で数人しかできない大技5154B(前宙返り2回半2回ひねりえび型)を武器とする三上紗也可(20)らタレントが豊富だ。東京五輪でメダルを逃したASは井村雅代ヘッドコーチ(71)が退任を表明。現時点で発表されていない次期ヘッドコーチの人選と手腕に注目が集まる。東京五輪で男子が1勝4敗、女子が4戦全敗と惨敗した水球も巻き返しが期待される。

 大会の応援リーダーに就任した松岡修造氏(53)は「2001年の世界水泳福岡大会は日本のスポーツを変えた。 (コロナの影響による)ニューノーマルだからこそできるような大会に向けて、みんながひとつに気持ちを合わせて何かをやっていきたい。選手、そして伝える側の僕らも進化する必要がある」と熱く語った。日本がメダルラッシュに沸いた2020TOKYOから約9カ月、今度はFUKUOKAが世界を熱くする。


木本新也