ほぼ時を同じくして開幕した東アジアE-1選手権では、国内組で構成された日本代表の香港戦(19日、カシマスタジアム)の観客数が4980人だった。平日と祝日という曜日の差、東京と茨城という立地の差をさし引いても、注目度の違いが見えた。

カズやMIYAVIも登場!PSGはガチ布陣で参戦!

 川崎フロンターレ戦当日、国立競技場はおびただしい数の人であふれていた。グッズを販売するブースには、クリスマス時期のディズニーランドのビッグサンダー・マウンテン並の長蛇の列。夏休みに入った小中学生も多く駆けつけ、炎天下の中で列をなして記念品を求めた。

 キックオフ前には、世界的に著名なギタリストのMIYAVIが、ピッチサイドから立ちのぼる炎とともに派手なライブパフォーマンスを披露。日本ツアーのアンバサダーを務めるキングカズこと元日本代表FW三浦知良も登場し、キックインセレモニーでは主審ではなくネイマールにパスを送る粋なサプライズで特別なひとときを演出した。

 午後7時30分、試合はキックオフ。先発にはネイマール、エムバペ、そしてメッシという世界的スター3人が顔をそろえた。

【先発】
<パリ・サンジェルマン>
GKドンナルンマ
DFハキミ、キンペンベ、セルヒオラモス、マルキーニョス
MFメンデス、フェレイラ、ゲイェ
FWエムバペ、ネイマール、メッシ

<川崎フロンターレ>
GKチョン・ソンリョン
DF佐々木、ジェジエウ、車屋、登里
MF橘田、遠野、チャナティップ
FW家長、マルシーニョ、レアンドロ・ダミアン

PSGの攻撃陣を牽引し続けたメッシ

 序盤からボールを支配したパリ・サンジェルマンは、メッシの巧みなボールコントロールやネイマールやエムバペの強烈なシュートなど、個人技のレベルの差を見せつけながら観客を魅了した。対する川崎フロンターレは、GKチョン・ソンリョンや大怪我から昨年11月以来の公式戦復帰を果たしたDFジェジエウを中心に粘り強い守備を続け、FWマルシーニョが速攻からゴールに迫る場面も。だが前半32分、ついに均衡は破られた。

 先制点を挙げたのはメッシだった。一度ゴール右から放った右足シュートはゴールライン際で「タイのメッシ」ことMFチャナティップにクリアされたが、直後のスローインからチームは再びチャンスメーク。エムバペがハキミにつなぎ、マイナスのパスをゴール右前で受けたメッシが利き足とは逆の右足で合わせた。クリアを試みようとDF登里が伸ばした右足に当たってコースが変わり、ボールはゴール左へ。超満員の新国立にどよめきが広がった。

 それだけでは終わらなかった。エムバペ、ネイマールが退いた後半も出場を続けたメッシは、後半13分に2点目の起点となった。ペナルティーエリア付近までドリブルでボールを運ぶと、途中出場のベルナトとパス交換。このワンツーで左サイドを突破したベルナトのクロスから途中出場のカリムエンドの追加点が生まれた。

「いい滞在になることを願っている」。来日会見で口にした抱負を、初戦から早速結果で示した。自身が退いた終盤にはCKから1点を返されたが、本調子にほど遠いプレシーズンでも圧倒的な力量差がそこにはあった。

BIG3の圧倒的な攻撃力でJ1王者を粉砕!

 昨季はバルセロナから衝撃的な退団通告を受けて8月にパリ・サンジェルマンに加入。先発するまでに約1カ月と出遅れ、真価を発揮できないまま公式戦34戦11得点でシーズンを終えた。一転して今季は15日に行われたフランス2部クラブとのプレシーズンマッチから先発。3トップの右に入ることが多かった昨季とは変わり、川崎フロンターレとの一戦ではトップ下でネイマールとエムバペを操り、強烈な存在感を放った。

「メッシ!!ゴール!!子供の時からずっと見ていた選手が、ゴールした瞬間をこの目で見られて感激…!!」
「メッシのゴールを生で観られたのは一生の宝物になる」
ツイッター上では感激の声があふれた。

 ファンだけではない。刺激を受けたのは川崎フロンターレの選手も同じだった。

 持ち前のスピードと予測力を生かした好プレーもあったジェジエウは、試合後にネイマール、エムバペ、メッシについて「3人は素晴らしい選手だった」と改めて脱帽した。CKの流れからヘディングで1点を返したDF山村は「技術を見せつけられた試合だった」と表現した。そして川崎フロンターレ勢の中では卓越した技術と落ちつきでパリ・サンジェルマンに食らいついた家長は言った。「真剣勝負の中にも遊びがみんなある。それが見ていて楽しさや驚きになる。僕たちにはそういう余裕がまだない。それくらい余裕を持って楽しませるくらいの感覚を持てないと、ああいうレベルまではいけない。そうなれるように、真剣に遊べるように僕らも頑張っていかないといけない」。

 出場した選手にとっても〝一生もの〟の刺激となった今回の対戦。2022年7月20日は、新国立に集った全ての人が、パリ・サンジェルマンに酔いしれた一夜となった。


VictorySportsNews編集部