そのドジャースが今年は今永昇太、鈴木誠也らのいるシカゴ・カブスを相手に、ここ日本でシーズン開幕を迎える(3月18、19日東京ドーム)。これを記念して、世界初の‟ドジャーステーマパーク”ともいうべき没入型体験イベント「ドジャース・エクスペリエンス展 at東京シリーズ」がスタート。初日の3月5日に会場のTOKYO NODE GALLERY(東京都港区)で行われたオープニングセレモニーおよび内覧会にお邪魔してきた。
ドジャースのビジネス戦略・アナリティクス担当部⻑であるマイケル・スペトナー氏、2008年にはドジャースのクローザーとしてオールスターにも出場したOBの斎藤隆氏らによるオープニングイベントが終わると、いよいよ内覧会がスタート。最初に通されるシアター風の部屋にはホームグラウンドのドジャースタジアムと同じ六角形のビジョンがあり、まずはデーブ・ロバーツ監督と大谷がウエルカムメッセージで来場者をお出迎え。
その後は歴代のヒーローたちの雄姿が次々に流れ、1988年のワールドシリーズ第1戦で満身創痍のカーク・ギブソンが放ったあまりにも劇的な代打逆転サヨナラホームランに、期せずして胸が熱くなる。昨シーズンのハイライトでは、そのギブソンの一発を彷彿とさせるようなフレディ・フリーマンのワールドシリーズ第1戦での逆転サヨナラ満塁本塁打。数々の名場面に連動して天井や壁にもさまざまな映像が映し出され、イマーシブ(没入感のある)体験にテンションは一気に高まる。
興奮冷めやらぬまま進んだ先に待っているのは、これぞ‟ドジャースミュージアム”。ブルックリン時代からの歴代の永久欠番選手のユニフォームや、サイ・ヤング賞、ゴールドグラブ賞などのトロフィーに、3度のサイ・ヤング賞を誇るクレイトン・カーショウが通算奪三振球団新記録を達成した試合で履いていたスパイク(土がついたまま!)のような実使用品まで、貴重な品々が並ぶ。日本との縁にフォーカスしたゾーンには、ドジャース初の日本人選手である野茂英雄のサインボールにサイン色紙、表紙を飾った雑誌や各種のスーベニアなどを集めた「野茂コーナー」も。55歳の若さでこの世を去った前出の生原氏の写真もここに飾られていて、筆者はそっと手を合わせた。

さて、この“ミュージアム”最大の見ものといえば、なんといってもドジャースが4年ぶりの世界一に輝いた2024年シーズンを振り返るゾーン。ここには大谷のヘルメットやユニフォーム、「40‐40」を達成した試合で40個目の盗塁を決めた際の二塁ベースなどが展示された「大谷コーナー」、ワールドシリーズの各試合で使用されたバットやボール、ユニフォーム、ラインナップカードなどが飾られた「ワールドシリーズ優勝記念コーナー」がある。

その中央に鎮座しているのが、日本初上陸となる昨年のワールドシリーズ優勝トロフィー。ティファニーのデザインによるこのトロフィーが米国外に持ち出されること自体レアで、内覧会でも行列ができる人気ぶりだった。さすがにこれに手を触れることはできないが、3種類のチケットのうち「チャンピオンパス」、「レジェンドパス」購入者は間近で写真を撮ることも可能。その横に置かれた2020年ワールドシリーズ優勝記念のチャンピオンリングは実際に指にはめることもでき、これも滅多にできない貴重な体験になる。

数々の展示の中で個人的に感銘を受けたのはボブルヘッドのコーナーで、およそ200体がズラリと並ぶ様はまさに壮観。これらは普段はドジャースタジアムに飾られているものだというが、ニューヨークのブルックリンを本拠地としていた時代の選手から現在の「ベッタニマン」(ムーキー・ベッツ、大谷、フリーマンの3人の愛称)に至るまで、ドジャースの歴史を彩ってきたスターが勢ぞろいしている。
愛犬デコピンを抱える大谷やトルネード投法の野茂など日本人選手のものもあるが、アメリカでも人気のキティちゃんはともかく、中にはドジャースとあまり縁のなさそうな人物のボブルヘッドもある。たとえば、あのベーブ・ルース。実は現役引退後に1年だけ、ドジャースでコーチをしたことがある。英国の歌手、エルトン・ジョンがドジャースのユニフォームでボブルヘッドになっているのは、彼のキャリアでもハイライトの1つに数えられるドジャースタジアムでの大規模公演の際のいで立ちをモチーフにしたものだ。

SNS映えを求めるファンにおススメなのは、今春のキャンプで大谷がロバーツ監督に対する“いたずら”で使った子供用のミニポルシェと、そのお返しとしてロバーツ監督が大谷の車に仕掛けたカラーボールが置かれたフォトスポット。また、ドジャース公認のプリントシール機もあって、前述の「チャンピオンパス」、「レジェンドパス」購入者であれば大谷、山本のみならずフリーマン、ベッツともツーショットを撮ることができる(フレームは2種類選択可能)。これも“ドジャース推し”のファンにはたまらない体験になるはずだ。

さらに「レジェンドパス」購入者限定で、現在はここででしかできないバーチャルな体験が2つ用意されている。1つは「ドジャースタジアムでのプレー」。これは360度のグリーンバックスタジオで撮影した自身の映像を、XR技術によりドジャースタジアムのマウンドから投げ、バッターボックスで打つ姿に加工してもらえるというもの。撮影の段階では実感がないが、完成した動画を見るとあのドジャースタジアムで選手としてプレーする自分がそこにいて、ちょっとした感動を覚える。
もう1つは「VR野球体験」で、VRゴーグルを装着すると目の前に仮想空間のグラウンドが広がり、バッターとして大谷、山本と対戦、もしくはキャッチャーとして彼らの投球を受けることができる。大谷の100.2マイル(約162キロ)のストレートや、山本が昨年のワールドシリーズでアーロン・ジャッジ(ヤンキース)から空振りを奪った91.5マイル(約148キロ)の高速スプリットは、バーチャルであっても打つのも捕るのも至難のワザ。改めて彼らのスゴさを体感できる。

このドジャース・エクスペリエンス展、2月に開設された日本公式ファンクラブ「ドジャースファンクラブ」の会員には種別によって入場料30%オフなどの特典があるというが、4つのコースで最も高額なMVP会員は募集開始とほぼ同時に定員に達して受付終了。エクスペリエンス展自体も「レジェンドパス」は既に全日程で完売していて(今後、追加販売の可能性あり)、日本におけるドジャースの人気はうなぎのぼりと言っていい。
この人気は、東京ドームの開幕戦に向けてさらに加速していきそうで、プレシーズンゲームを含む「東京シリーズ」のチケットが取れなかったというファンは、3月30日まで開催されるこのエクスペリエンス展でぜひドジャースを“体験”してほしい。