エナジックスポーツ高等学院は、2021年に創立された沖縄県名護市の私立高校だ。開校当初は通信制のみだったが、その後、全日制も併設され、スポーツ教育に力を入れる学校として成長してきた。

 運営母体は、沖縄を拠点に世界展開する健康関連企業「エナジックグループ」。同グループは浄水器の製造・販売を中心に幅広い活動を行い、スポーツ振興にも力を入れている。野球部は2022年に創部されたまだ歴史の浅いチームながら、着実に力をつけ、2025年のセンバツ出場という快挙を達成した。強豪校と比較すると歴史は浅いものの、独自のスタイルと環境の充実によって、全国レベルの力をつけてきた。創部わずか3年での全国大会出場は、同校の指導力と環境の充実ぶりを示している。また、2024年には埼玉西武ライオンズから龍山暖選手がドラフト6位指名を受け、創部からわずか3年でプロ野球選手を輩出したことも話題となった。創部間もない高校からプロ選手が誕生するのは異例のことであり、エナジックスポーツ高等学院の育成環境の高さを証明する出来事となった。

 エナジックスポーツ高等学院の野球の最大の特徴は、「ノーサイン野球」を徹底している点だ。通常、高校野球では、監督やコーチがベンチからサインを出し、それに基づいて選手がプレーする。しかし、エナジックスポーツ高等学院では選手自身が考え、判断しながらプレーするというスタイルを採用している。この戦術は、自ら考え、瞬時に判断する力を養うため、選手の自主性を養うほか、決まった戦術やパターンがないため、相手に対策されにくく、状況に応じたプレーができるため、試合中の柔軟な対応が可能となる。この戦術は沖縄県大会や九州大会でも功を奏し、特に接戦での勝負強さを発揮する要因となった。全国の舞台でこのスタイルがどこまで通用するのか、今大会の大きな見どころとなる。

 エナジックスポーツ高等学院のセンバツ初戦の相手は至学館(愛知)に決定。至学館もまた、今回が初めてのセンバツ出場となるため、両校にとって歴史的な一戦となる。至学館高校は、1905年に「中京女子高等学校」として設立され、長らく女子校としての歴史を歩んできた。しかし、2005年に共学化し、同時に現在の「至学館高校」へと名称を変更。共学化後は野球部の強化が進み、近年では愛知県大会でも安定した成績を残してきた。また、レスリングの名門校としても有名で、オリンピック選手を輩出するなど、スポーツに力を入れる学校でもある。今回のセンバツ出場は、野球部にとっても学校にとっても新たな挑戦となる。この試合では、エナジックスポーツ高の「ノーサイン野球」が全国レベルでどこまで通用するかが最大の見どころとなる。エナジックスポーツ高が序盤から自分たちのペースに持ち込めるかが勝敗のカギを握るだろう。

 センバツでは、エナジックスポーツ高等学院の戦い以外にも見逃せないカードが目白押しだ。

3月19日 第2試合 横浜(神奈川) vs. 市和歌山(和歌山)
全国屈指の強豪・横浜が、和歌山の実力校・市和歌山と激突する注目の一戦。横浜は強力打線を誇り、市和歌山は堅守が持ち味だ。

3月19日 第2試合 沖縄尚学(沖縄) vs. 青森山田(青森)
沖縄尚学は昨年の夏の甲子園で活躍した実力校。青森山田も東北の強豪として力をつけており、両チームの攻守のバランスが試される試合となる。

3月22日 第1試合 早稲田実(東京) vs. 高松商(香川)
伝統の名門・早稲田実と、四国の雄・高松商がぶつかる注目のカード。名門校同士の対決は、球史に残る熱戦になる可能性が高い。

 エナジックスポーツ高等学院は、創部3年でセンバツ出場という快挙を成し遂げた背景には、選手主体の「ノーサイン野球」という独自のスタイルがある。全国の舞台でこの戦術がどこまで通用するのか、初戦の至学館戦が大きな試金石となる。さらに、今大会は横浜 vs. 市和歌山、沖縄尚学 vs. 青森山田、早稲田実 vs. 高松商など、全国の強豪同士の熱戦も多く、見どころ満載の大会となりそうだ。エナジックスポーツ高等学院が沖縄に新たな歴史を刻むのか。全国の舞台での戦いに期待が高まる。


VictorySportsNews編集部