ゴルファーだけでなく、これまでゴルフに縁がなかった地域の家族連れや子どもたち、そして音楽やスポーツを愛する地元住民をも巻き込み、老若男女総勢200名以上が参加する盛大なイベントとなった。
一般営業と並行しながらも、芝生の上には子どもたちの笑顔が溢れ、クラブハウスには音楽が響き渡る。そこには、従来の「ゴルフ場」のイメージを大きく超え、地域コミュニティの拠点としての可能性を広げる光景があった。
子どもたちが芝を駆ける「エンジョイパーク」
日本のゴルフ場は「敷居が高い」「お金がかかる」「ルールが厳しい」といったイメージが根強く、特定のプレーヤー層に限定された閉鎖的な空間と見なされてきた。この「Endless Summer」は、その固定観念を根本から覆すための挑戦として、様々なイベント実施し、中でもプレーヤーが帰りコースが空く午後から始まったのが「エンジョイパーク」だ。普段は大人のプレーヤーしか足を踏み入れないコースが、この日は子どもたちの遊び場に変わった。
フェアウェイの芝生の上に広がるエリアでは、スナッグゴルフ、ストライダー、そしてフットゴルフが体験でき、子どもたちは思い切り身体を動かしていた。特にスナッグゴルフは、専用のクラブとボールを使い、初めてでも安全に楽しくゴルフの基本を学べるため、ゴルフデビューには最適だ。小さな子どもたちが、親と一緒に芝の上で楽しそうにボールを打つ姿は、微笑ましい光景だった。彼らにとって、ゴルフは「難しいスポーツ」ではなく、「誰もが楽しめる遊び」として心に刻まれたことだろう。
一方、普段からサッカーを楽しんでいる子どもたちにとって、サッカーボールでゴルフをする「フットゴルフ」は、広大なフェアウェイを思い切り走り回る絶好の機会となった。この競技は、世代や性別を問わず誰でも楽しめるのが魅力。地域のサッカークラブ「鎌倉インテル」の選手や、普段はゴルフを教えるプロコーチも混ざってプレーし、会場は一体感に包まれた。サッカーとゴルフ、異なるスポーツ文化が芝の上で交わる瞬間を、子どもたちは目を輝かせながら見つめていた。

また、ゴルフコースを舞台にしたストライダー体験は、子どもたちにとって特別な体験となった。普段は立ち入ることができないゴルフ場の芝生の上を思い切り走り回ることができるこのアトラクションは、子どもたちの好奇心をくすぐり、多くの家族連れが笑顔で参加していた。こうしたゴルフ場を開放する試みは、新しいファン層の開拓だけでなく、地域住民にゴルフ場を身近に感じてもらう上でも極めて重要な役割を果たした。
大人も癒やされる特別プログラム
エンジョイパークと並行して、大人向けの企画も実施された。
まずは屋外練習場で行われた「ゴルフ場DEヨガ」。湘南で活動するインストラクターが指導し、風と緑を感じながら呼吸を整える時間は、参加者にとって日常から切り離されたリトリートのような体験となった。
また、人気の「家族DEゴルフ」も開催。親子でコースを回りながらゴルフを体験するこの企画は、技術の上達を目的とするのではなく、家族で芝の上に立つこと自体を楽しむというもの。普段クラブを握らない子どもが真剣にスイングする姿に親は声援を送り、その親のプレーを子どもが笑顔で応援する。世代を超えて同じ時間を共有できるのは、ゴルフ場ならではの魅力だ。

地域とアーティストがつながる「スペシャルライブ」
夕暮れ時、クラブハウスに移動すると、そこには一日を締めくくる音楽イベント「スペシャルライブ」の舞台が待っていた。
出演は、独自のジャズアレンジで人気を集める「COSMIC JUNGLE」、そして紅白歌合戦出場経験を持つシンガー・瑛人さん。加えて、地域からは「岩瀬中学校吹奏楽部」と「鎌倉インテル キッズチアダンスチーム」が参加した。
ステージは単なる音楽イベントではなく、「地域とアーティストの共演」という形にこだわったのが特徴だ。イベントの数日前には、瑛人さんとCOSMIC JUNGLEのサックス奏者・家永さんが岩瀬中学校を訪問し、吹奏楽部の生徒たちと合同リハーサルを実施。演奏指導を行うだけでなく、音楽への向き合い方や表現する喜びについて語り合う時間となった。
その成果は本番で存分に発揮された。生徒たちがプロアーティストと同じ舞台に立ち、堂々と音を奏でる姿に観客からは大きな拍手と歓声が湧き、吹奏楽部の保護者からは「子どもたちにとって一生の思い出になった」という声も寄せられ、地域教育の新しい形を示す場ともなった。
さらにライブのクライマックスでは、瑛人さんの代表曲「香水」が披露され、ステージと観客全員が共演。観客が口ずさみ、COSMIC JUNGLEの即興演奏と吹奏楽部の厚みあるサウンドが重なり合う。そこには「プロと地域」「大人と子ども」「音楽と自然」が調和する、かけがえのない瞬間が広がっていた。
ゴルフ場が描く未来像
「Endless Summer 2025」が示したのは、ゴルフ場が単なるスポーツ施設にとどまらないということだ。
子どもたちが走り回り、大人がヨガで心を整え、親子が一緒にゴルフに挑戦する。そして夕暮れには、地域の中学生がプロアーティストと同じ舞台で音を響かせる。そこには「地域とともに生きるゴルフ場」という未来像が確かに描かれていた。
参加者の一人は「ゴルフをするつもりで来たわけではなかったが、子どもと一緒に安心して楽しめた。地域の人とも自然に会話が生まれ、こんなに開かれたゴルフ場は初めて」と語る。別の参加者も「普段子どもが練習している吹奏楽が、こうしてプロとつながる場になるとは思わなかった」と驚きを隠さない。
鎌倉パブリックゴルフ場が掲げた「みんなの笑顔が、集まる、広がる、繋がる」というテーマは、まさにこの日の光景によって具現化されたと言えるだろう。
スポーツの枠を超え、地域社会の文化や教育、家族の時間と結びついたとき、ゴルフ場はただのプレーフィールドではなく“地域の広場”となる。
来年以降、この取り組みがどのように進化していくのか。鎌倉の自然に囲まれたこのゴルフ場から、地域とゴルフの新しい未来が広がっていくことに期待したい。