12月27日、サウジアラビアのリヤドで行われる「THE RING V:NIGHT OF THE SAMURAI」。大のボクシングファンであるサウジアラビアのトゥルキ・アル=シェイク総合娯楽庁長官が巨額の資金をボクシングに投入し、これまでオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)、タイソン・フューリー(イギリス)、アンソニー・ジョシュア(イギリス)ら登場のヘビー級戦や、テレンス・クロフォード(アメリカ)−サウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)などのメガファイトを実現してきたが、今回は日本を主役にしたイベントになる。

 11月7日、都内で開かれた記者会見。井上を擁する大橋ジムの大橋秀行会長は言ったものだ。「サウジアラビアで行われるイベントは世界的な規模感であり、世界のボクサーのあこがれになっています。このような大会で、選ばれたボクサーたちとともに試合をできることは光栄」と。井上もこう語った。「サウジアラビアはスポーツのみならずエンタメを取り入れている国。そういった盛り上がりをみせる国で試合をするのは大事な意味がある。現状は限られた選手しか出られないけれど、もっといろいろな選手が出られるようになっていけば」——。

豪華すぎるリヤド・シーズン

 まずは当日の予定カードを整理しておこう。

・井上尚弥(大橋)−アラン・ピカソ(メキシコ)=世界スーパーバンタム級タイトルマッチ12回戦
・中谷潤人(M.T)−セバスチャン・エルナンデス(メキシコ)=スーパーバンタム級12回戦
・ウィリバルド・ガルシア(メキシコ)−寺地拳四朗(BMB)=IBF世界スーパーフライ級タイトルマッチ12回戦
・ジェームズ・ディケンズ(イギリス)−堤駿斗(志成)=WBA暫定スーパーフェザー級タイトルマッチ12回戦
・今永虎雅(大橋)−アルマンド・マルティネス(キューバ)=ライト級10回戦
・堤麗斗(志成)−レオバルド・キンタナ(メキシコ)=スーパーフェザー級8回戦

 今回のイベントがとりわけ注目を集めるのは、来年5月に直接対決が計画されている井上と中谷がそろって出場するからだ。PFP(パウンド・フォー・パウンド)ランキングの常連である両者の一戦は、日本のみならず世界のボクシングファンが待ち望んでいる。井上と中谷の「サウジ競演」はいわばその前哨戦ともいえる。

 メインの井上のタイトルマッチには、今回も保持する4つの王座がすべてかけられる。WBA(世界ボクシング協会)、WBC(世界ボクシング評議会)、IBF(国際ボクシング連盟)、WBO(世界ボクシング機構)のメジャー4団体のベルトを守り続けることだけでも大変なのに、2025年の井上は年間4試合目に臨もうとしている。このアクティブさもまた他の追随を許さないものである。

 さる9月のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)との防衛戦はアマチュア歴豊富なサウスポーを華麗なアウトボクシングで封じ込んだ井上。次のピカソ(32勝17KO1分)に対しては「しっかりと倒し切りたい」と予告しており、また前回とは異なる戦いが見られそう。

 かたや中谷は、抜群の強さを見せたバンタム級を卒業し、いよいよ井上の待つスーパーバンタム級に階級を上げてその第1戦となる。中谷が新天地でどのようなパフォーマンスをするかによって対井上の興味深さがまた違ってくるだけに、重要な一戦となる。対戦相手は20勝18KO無敗のメキシカン、エルナンデス。中谷はエルナンデスのパンチ力を警戒しつつ「しっかりと(エルナンデスに)黒星をつけたい」と語っている。

 井上と中谷は次のように意欲を表している。

「ここをしっかりとクリアして、その先に歩みを進めたい」(井上)
「この延長線上にビッグマッチが控えているので、スーパーバンタム級でもいいパフォーマンスができることをアピールしたい」(中谷)

 イベントは日本ではLeminoが独占ライブ配信し、日本以外ではDAZNが担当する。世界中が熱い視線を注ぐ一日になる。


VictorySportsNews編集部

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