JFAは全国各地のサッカー協会と被災地の復興・復旧を図ることを目的に、47都道府県のサッカー協会と連携。サッカーを通じて被災地に希望の灯りをともす支援活動を長年にわたって行ってきた。24年1月に発生した能登半島地震の支援活動は25年6月までに153回開催し、574人のアスリートが参加。12,495人の子どもたちに手を差し伸べた。さらにJFAサッカーファミリー復興支援金として全国から募った募金は8700万円を超え、多様な形で被災地を支え続けている。

 プロジェクト名は「47都道府県のサッカー協会が連携。サッカーを通じて被災地に希望の灯りをともす」。日本代表の森保一監督もオンラインで支援活動に出席するなど、代表のトップも積極的に参画している。森保監督は「励ましの言葉掛けをしたりとか、さまざまなコミュニケーションを取ったりして、元気になってもらいたいという思いはあるが、それだけでなく我々の活動を通じてみんなが『ここから立ち上がれるよ』という思いを受け取ってもらって、みんなが這い上がれる、『立ち上がって、また前を向いて前進できることを信じているよ』ということを伝えたいと思っている」と狙いを明かした。

 アスリートの支援と言えばスポーツ教室が思い浮かぶも、JFAは現場の現状を第一に考えて行動してきた。リスペクト委員会防災・復興支援部会部会長の永島昭浩氏は「サッカーを教えることは少なかったけど、現場のニーズに応えるという形で日本代表、OB・OG会を中心に派遣することができた。テレビなどのメディアの映像を見ながら考えるのではなく、現地に足を運んで本当に今何が起こっているかということを十分理解した上で、行動することが一番大事だと思っている」と力説した。

 26年3月は東日本大震災の発生から15年となる。日本列島で生活をする以上、災害とは向き合なければならない。「本当にこの日本列島において、いつ、どこで何が起こるかわからないということを考えると、表面的なところで復興ができているように見えても、人の心というものは本当にまだまだ大変な人がたくさんいると認識している。目に見えないところでも考えていることを聞いてコミュニケーションをとる、顔を見て話すということが非常に重要ではないかと思っている」と意義を強調した。

受賞に笑顔を見せるソフトバンクの代表取締役 副社長執行役員 兼 COO 榛葉淳氏

 ソフトバンクは「AIスマートコーチ」を使い、部活動・体育における指導者不足や地域における教育格差の社会課題に対し、デジタル指導サービスの提供や動画コンテンツ配信を敢行。教育・部活動・イベント活用促進に加えスポーツ技術・スキル向上支援を目指している。創業者の孫正義代表取締役会長兼社長執行役員は「スポーツと我々のテクノロジーは融合していく、我々のテクノロジーはスポーツの役に立てる」との思いで、スポーツとテクノロジーを融合させる活動に尽力。現在はプロ野球・福岡ソフトバンクホークスを中心にサポートしているが、野球以外の他競技でも何らかの形で貢献できないかと考え「AIスマートコーチ」プロジェクトをスタートした。

 22年から活動を始め「AI骨格解析などで自分の動きとプロのお手本動画を比較し、スキル向上と主体的学習をサポートするスポーツ練習アプリの提供を通して、地域や指導者の格差解消に貢献する」ことを目標に掲げる。榛葉淳代表取締役 副社長執行役員 兼 COOは「ゼロからメンバーが立ち上げたプロジェクトだったので、最初は手探りだった。各学校の先生、生徒、自治体の方々の困り事に対して、一つひとつ答えを出しながら進めてきた。見本があったわけではないので、いろいろな意見、困り事に解決策を出していくことが一番苦労した」と振り返った。

 学校教育の現場は変革期に突入。部活動の在り方は議論の対象となっており、教師の負担増加や専門的な指導を受けられないなどの問題が浮かび上がっている。「このプロジェクトは、ゼロからさまざまな先生や学生、プレイヤーの方々のご意見をいただきながら、試行錯誤してきた」と切り出した上で「なかなかスポーツ学習の機会に恵まれない地方や離島を中心に進めていけたらと思っている。スポーツの中でも競技人口が少ない、指導者が少ないというスポーツもあるので、そういったスポーツにも我々の『AIスマートコーチ』を使っていただくということで、両面から頑張っていけたら」と展望を口にした。

 スポーツは結果が注目を浴びるケースがほとんど。ただ、内面からアプローチすることで発展に寄与する方法もある。スポーツ界のさらなる進化へ、アスリートだけでなく、企業も挑戦を続けていく。

競技人生のその先へ 池田めぐみ氏と白鵬翔氏が描く引退後の社会貢献

スポーツやアスリートの力が社会課題の解決を加速させることを社会に可視化・発信するために、社会貢献活動に取り組むアスリートを表彰する「HEROs AWARD」は2025年で9回目を迎えた。今回はフェンシング女子エペで五輪2大会連続出場の池田めぐみ氏と大相撲の元横綱白鵬翔氏が受賞し、15日に都内で行われた表彰式ではそれぞれの取り組みについて熱弁をふるった。

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サッカー元日本代表の永島昭浩さんが能登の子どもたちと交流 JFA夢フィールドデー

 日本財団がスポーツやアスリートの力を活用した社会貢献活動のロールモデルを表彰する「HEROs AWARD 2025」にて、公益財団法人日本サッカー協会(JFA)の受賞が決まった。

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中西崇太

著者プロフィール 中西崇太

1996年8月19日生まれ。愛知県出身。2019年に東京スポーツ新聞社へ入社し、同年7月より編集局運動二部に配属。五輪・パラリンピック担当として、夏季、冬季問わず各種目を幅広く担当。2021年東京五輪、2024年パリ五輪など、数々の国内、国際大会を取材。