今年はオリンピックや世界陸上がないだけに選手たちは〝思い切ったチャレンジ〟ができる年でもある。そのなかで大嶋RDは〝未来〟を見つめた人選を行ったという。
「将来的に活躍しそうな選手。特に海外招待選手はフルマラソンの経験が浅いんですけど、今後は世界で活躍しそうなランナーをお呼びしたつもりです」
男子は前々回大会で2時間2分55秒の2位に入ったティモシー・キプラガト(ケニア)と2024年のベルリンを制したミルケサ・メンゲシャ(エチオピア)が欠場。キャリアでは2時間3分11秒の自己ベストを持つアレクサンダー・ムティソ(ケニア)がナンバー1か。実業団のNDソフトに所属している選手で、2024年のロンドンで栄冠に輝いた実力者だ。
前回大会を2時間3分23秒で制したタデセ・タケレ(エチオピア)は23歳と若く、伸び盛り。ムティソとタケレのV争いに東京2020オリンピック10000mの金メダリストであるセレモン・バレガ(エチオピア)が割って入るかもしれない。
「ムティソ選手は2023年のバレンシアでも2位に入っており、自己ベストも出場予定選手では最速です。記録も含めて期待したいですね。タケレ選手は若いですから、一気にタイムを伸ばすかもしれません。それからバレガ選手です。昨年は4月のセビリアを2時間5分15秒で優勝。10月の東京レガシーハーフマラソン2025(優勝)に出場したのは、東京マラソンで記録を伸ばしたいという強い要望もあってのことでした。レガシーハーフでも走った前半部分でうまくリズムをつかんでいただき、大幅ベストを期待したいなと思っています」
他にも前回3位のヴィンセント・キプケモイ・ゲティッチ(ケニア)、前回6位のジョフリー・トロイティチ(ケニア)、それからダウィト・ウォルデ(エチオピア)も2時間3分台の自己ベストを持っている。なかでもゲティッチは2年連続で表彰台に上がっており、悲願のタイトルを目指す。
海外勢は2時間3分台が5人、4分台が3人、5分台が5人。それから東京2025世界陸上で銅メダルを獲得したイリアス・アオアニ(イタリア)が出場する。
「正直、誰が勝つのか。ちょっと予想がしにくいと思います。実力が拮抗しているので、優勝争いは非常に楽しみです」
一方、強力な海外勢を迎え撃つことになる国内選手は新旧の日本記録保持者が出場する。昨年12月のバレンシアで2時間4分55秒をマークして、自身3度目の日本記録を打ち立てた大迫傑(LI-NING)と、日本人で初めて2時間4分台に突入した鈴木健吾(横浜市陸協)だ。
「大迫選手は前々から春のマラソンは東京を意識しているというお話をされていましたが、バレンシアが終わってすぐに、『東京を走りますよ』と即答いただいたんです。彼の頭のなかには、ロサンゼルス2028オリンピックがあるみたいですので、そこに向けて、東京をどういう位置づけで走るのか。非常に楽しみです。鈴木選手はプロランナーに転向して、11月のヒューストン・ハーフマラソンで1時間0分56秒の自己新をマークしました。調子を戻しつつあるので、また日本記録を奪い返すような走りを期待したいですね」
大迫傑と鈴木健吾が東京で激突。新旧日本記録保持者同士のハイレベルな戦いにも注目だ。©︎東京マラソン財団 国内招待選手では小山直城(Honda)と西山和弥(トヨタ自動車)が故障のため欠場となったが、東京2025世界陸上で日本勢トップの11位に入った近藤亮太(三菱重工)、前回大会で日本勢最上位の市山翼(サンベルクス)が上位を狙っている。
「近藤選手は豪州合宿を経て、参加すると聞いています。市山選手は前年と同じく全日本実業団山口ハーフマラソンで好走しており、今年も期待できそうです。また前回、初マラソンながら果敢な走りを披露した太田蒼生選手(GMOインターネットグループ)には、今回も意欲的な走りを期待したいと思います」
他に2時間7分台を持つ荒生実慧(NDソフト)、高田康暉(住友電工)が国内招待選手として参戦する。大学勢は今年の箱根駅伝5区3位の工藤慎作(早大)と同4区5位の島田晃希(帝京大)が初マラソンに挑むことになる。
そしてペースメイクに関しては男女ともに3段階、もしくは4段階のペースメーカーを考えているという。選手・コーチの要望と当日の天候を考慮したうえで決定するが、大嶋RDはこんなイメージを持っている。
「1つ目はキロ2分51~52秒ペースです。下り基調となる前半のハーフを1時間0分台前半で通過して、後半粘って、大会記録(2時間2分16秒)の更新だけでなく、2時間1分台でフィニッシュしていただけると本当に有難いですね。2つ目はロサンゼルス2028オリンピックに向けた『MGCファストパス』の設定記録(2時間3分59秒)を狙えるキロ2分55~56秒ペース、3つ目は日本記録を狙えるキロ2分57~58秒ペース、4つ目はキロ2分59秒ペースです」
ペースメーカーと並走して、指示を出していたサポートバイクは例年1台だったが、今回は男女のトップ集団と男子の日本人グループの合計3台を用意する予定だ。
「日本人選手に『MGCファストパス』を狙う意思があれば第2集団に、日本記録を目指すということでしたら第3集団にバイクをつけるかたちになると思います。選手・コーチと相談をして、『日本人選手のため』といっても過言ではないぐらいのペースメイクを設定していきたい。選手にペースとフィニッシュタイムの予想などの情報を伝えるなど、より良いサポートができればと考えています」
男子は海外勢が大会記録を目指すだけでなく、日本勢も〝大記録〟にチャレンジする姿が見られそうだ。
女子は2時間20分を切る選手が8人も出場する。3連覇を目指すストゥメ・アセファ・ケベデ(エチオピア)は自身の持つ大会記録(2時間15分55秒)の更新を狙っており、昨年のシカゴで当時・世界歴代5位となる2時間14分57秒で優勝したハウィ・フェイサ(エチオピア)も強力だ。それから元世界記録保持者のブリジット・コスゲイ(ケニア)は昨年の上海マラソンを制しており、ローズマリー・ワンジル(ケニア)は昨年9月のベルリンマラソンで優勝している。この4人がトップを争うことになりそうだ。
大会三連覇がかかるストゥメ・アセファ・ケベデ選手(エチオピア)©東京マラソン財団「ケベデ選手は東京のコースを知り尽くしていますし、本人はエチオピア記録(2時間11分53秒)を意識しているようです。なおペースメーカーは1つ目が2時間15分前後、2つ目が同17分前後、3つ目は同20分前後の設定を考えています。ケベデ選手は調子が良ければ、ペースメーカーに先行することがあるかもしれません」
日本勢では引退を表明している細田あい(エディオン)が〝ラストラン〟に挑む。
「細田選手は決して記念のレースではなく、自己記録の更新を目標に有終の美を飾ろうとしています。同僚の矢田みくに選手が大阪国際女子で2時間19分57秒(日本歴代6位)をマークしていますし、2時間20分切りを期待したいですね。あと吉川侑美選手(キヤノン九州)、森智香子選手(積水化学)も日本勢上位に入ってくるでしょう」
今大会は気温上昇が予想されているが、女子もエキサイティングなレースが展開されそうだ。
東京マラソンは来年、20回の記念大会を迎える。「近い将来、世界記録が更新されるようなレースをしたい」と大嶋RD。世界屈指の高速レースになりつつあるTOKYOからますます目が離せない。