3割以上が経験。活動後「時間差」で現れる不調の実態
大正製薬株式会社が6月に全国の20代以上の男女731人を対象に行った調査では、全体の約35%が「暑熱環境(暑い場所)で活動した時には体調不調は感じず、数時間経過後、ないしは翌日以降に体調不良を感じた経験がある」と回答している(図1)。
具体的な症状としては「強い疲労感・ぐったり感」が最も多く、次いで「めまい・立ちくらみ」、「頭痛」と続いた(図2)。
大正製薬株式会社が行った調査【図2】 不調時の対処法については「水を飲んだ」「スポーツドリンクを飲んだ」といった基本的な対策が上位を占めた。一方で、熱中症対策としてより効果的とされる「経口補水液(水分と電解質を素早く補給できるように調整された飲料)を飲んだ」や「アイススラリー(液体と微細な氷が混ざったシャーベット状の飲料)を摂った」という回答は少なく、体の内側から深部体温を下げるといった踏み込んだ対策を取り入れている人は限定的だった(図3)。
熱中症・脱水症に詳しい済生会横浜市東部病院の谷口英喜医師は、この時間差熱中症について次のように解説している。
「熱中症は脱水症と異常高体温という病態が合わさって成り立ちます。体内の水分が失われて体温コントロール機能が徐々に低下し、臓器機能が低下して顕著な体調不良が出現するのに実際に数時間から1日かかることもあるのです」
谷口医師によると、暑さに暴露されてから半日〜24時間は発症の可能性があるという。屋外にいる間は気が張っていたり活動に集中しているため不調を自覚しにくいことも、発見が遅れる要因の一つだ。
大正製薬株式会社が行った調査【図3】予防のカギは「活動前」の準備と「内側からの冷却」
時間差熱中症を防ぐには、活動中だけでなく「活動前」の準備が大切となる。水・電解質・糖分が不足した状態での活動を避けるため、当日の朝食を抜かないことが重要だ。理想としてはごはんやパンなどの糖質に加えて、味噌汁やスープなどの水分・塩分、卵、魚、肉、乳製品、大豆製品などのたんぱく質を組み合わせることが望ましいが、食欲がない場合でも、塩分や糖分が適切に含まれたゼリー飲料などを活用してエネルギーと水分を補うことが推奨されている。
また、活動中の水分補給はのどが渇いてから飲むのではなく、時間を決めてこまめに補給することを意識したい。30分に1回程度を目安に、汗で失われるナトリウム(塩分)を補うため、水だけでなく電解質や糖分を含む飲料を取り入れることが重要だ。
さらに近年、有効な熱中症対策として注目されるのが「プレクーリング(事前冷却)」と「ポストクーリング(事後冷却)」というアプローチだ。活動前や帰宅後に、前述のアイススラリーを摂取することで、微細な氷が体内で溶ける際に熱を奪い、体の内側から効率よく深部体温を下げることができる。
帰宅後の「いつもと違う」サインを見逃さない
時間差熱中症を防ぐうえでは周囲のサポートが極めて重要になる。帰宅後に「ぼーっとしている」「顔が赤い」「頭痛や吐き気を訴える」といった様子が見られた場合、単なる疲労と決めつけず、熱中症を疑って涼しい場所で休ませ、水や電解質の補給を行い、症状が改善しない場合は、速やかに医療機関を受診する必要がある。
今年も全国的に厳しい極暑が予想されている。スポーツを楽しむ際や屋外でのイベントに参加する際は、活動中だけでなく、事前・事後の対策を講じることで熱中症のリスクを減らすことができる。個人がそれぞれ正しい知識を持ち対策を徹底することはもちろんのこと、自分自身の体調変化をうまく言葉にできない子供や、暑さを感じにくくなっているお年寄りに対しては、周囲が「いつもと違う」変化にいち早く気づき、積極的に声をかけるなど、社会全体で命を守るための行動を心掛けていきたい。
時間差熱中症リスクチェックテスト
以下の項目について、あてはまるものをすべて選択してください。
【生活・環境】
□ 猛暑日が続く中でも、屋外での活動や作業をすることがある
□ 暑い屋外と冷房の効いた室内を、頻繁に行き来することがある
□ 就寝時の室温が高く、寝苦しい夜が続いている
□ 睡眠不足や疲労がある日でも、予定通り屋外活動をすることが多い
【水分・食事補給】
□ 屋外活動の日でも、朝食(または昼食)を抜くことがある
□ 活動中、のどが渇いてから水分を飲むことが多い
□ 水分補給は水やお茶だけで、塩分・電解質の補給はほとんどしない
□ 活動後に水・電解質を補給する習慣がない
【体温調節・発汗】
□ 運動不足やデスクワーク中心で、日常的にほとんど汗をかかない
□ 冷房で体が冷えすぎることがある
□ 急に汗が出なくなる、または止まらないなど、発汗の乱れを感じることがある
【意識・行動】
□ 暑くても「まだ大丈夫」と思い、休憩を後回しにしがちだ
□ 体調が悪くても周囲に言い出しにくく、無理をすることがある
【経験・自覚症状】
□ 帰宅後にぐったりしても「疲れただけ」と思い、特に対処しないことが多い
□ 屋外活動後に、頭痛・だるさ・吐き気・めまいを感じたことがある
□ 屋外活動後の夜や翌朝に、体調不良を感じたことがある
<結果診断>
*0〜3個:リスク低
現時点での時間差熱中症リスクは比較的低い状態です。ただし、猛暑日や体調不良の日は油断せず、水分・電解質補給を意識しましょう。
*4〜7個:リスクあり・要注意
いくつかのリスク要因が重なっています。「活動中は大丈夫だった」という感覚を過信せず、帰宅後の体調変化にも注意を払いましょう。
*8〜11個:リスク高・積極的な対策を
複数のリスク要因が重なっており、時間差熱中症が起きやすい状態です。水分・電解質補給、休憩、睡眠環境の改善など、複数の対策を今すぐ始めることが重要です。
*12〜16個:リスク非常に高・今すぐ見直しを
生活習慣・環境・意識の多くにリスク要因が揃っています。「症状が出てから対処する」では遅い可能性があります。日常的なケアを根本から見直してください。