今大会の日本は1次リーグF組でオランダと2―2、チュニジアに4―0、そしてスウェーデンに1―1で引き分け、勝ち点5で2位通過した。三笘薫(ブライトン)が不在の左サイドで中村敬斗(スタッド・ランス)が躍動し、上田綺世(フェイエノールト)はストライカーらしい強烈なゴールを決めた。GK鈴木彩艶(パルマ)は好守を連発して最後尾でチームを引き締め、快足の前田大然(セルティック)も持ち味を生かしてゴールを奪っている。遠藤航(リバプール)は初戦の直前に負傷からの復帰が見込めないとしてチームを離脱したが、中盤では佐野海舟(マインツ)や田中碧(リーズ)、そして鎌田大地(クリスタルパレス)が存分に長所を発揮している。
「誰と組んでも勝つ」ことを掲げる森保一監督のチームづくりが実を結び、誰かが不在だから、誰かの穴を埋められないからという声は聞こえてこない。
堂安律(アイントラハト・フランクフルト)は「この大会を10回やっても、これぐらいの内容を出せる。前回(ドイツやスペインに番狂わせを起こしたカタール大会)とは違う内容で突破できた自信がある」と語っている。もはや1次リーグ突破は通過点であるというプライドがにじむ。「最高の景色を」との合言葉へ、チームは着実に進んできた。
28日、ブラジル戦の試合会場となるヒューストン競技場での記者会見。森保一監督は「本気のブラジルとW杯で戦えることが、われわれの未来にとって大きな財産になる」と語った。昨年10月に国際親善試合で3―2と逆転勝ちしたことは記憶に新しいが、舞台も相手のメンバーも全くの別物。それは日本の選手たちも十分に理解しているだろう。
ブラジルは1次リーグC組で、ライバルのモロッコと1―1で引き分け、その後はハイチ、スコットランドという格下に3―0で連勝して首位通過した。エースはレアル・マドリード(スペイン)に所属するビニシウスで、今大会4ゴールと好調。前線の真ん中に入るクニャ(マンチェスター・ユナイテッド)も決定力は高い。守備ラインも豪華で、主将のマルキーニョス(パリ・サンジェルマン)とガブリエル(アーセナル)が組むセンターバックは大会屈指といえる。2025/26年シーズンの欧州チャンピオンズリーグ(CL)決勝を争った名門クラブの大黒柱同士で、日本にとっては大きな壁として立ちはだかりそうだ。
日本が世界の舞台でブラジルを破った記憶と言えば、1996年のアトランタ五輪だろう。西野朗監督が率い、前園真聖や中田英寿、そしてGK川口能活といった若き才能が挑んだ一戦だった。序盤から矢のように飛んでくるブラジルの鋭いシュートを川口が止め続けた。次第に焦るブラジル。劣勢に耐え続けて迎えた後半、伊東輝悦が決勝ゴールを挙げて1―0と勝利した。「マイアミの奇跡」として語り継がれる。
W杯で日本がブラジルと顔を合わせるのは、2006年大会以来、2度目となる。20年前のドイツ大会の1次リーグ最終戦で相まみえた。日本は2点差で勝てば突破の可能性があり、かすかな希望を抱いて試合を迎えたが、結果は1―4の大敗。「怪物」ロナウドやロナウジーニョ、カカらがいたスター軍団に夢は打ち砕かれた。
30年前の奇跡と、20年前の大敗。そして今回。相手の得点源のビニシウスを封じられるかが勝負の大きなポイントになるのは間違いない。期待されるのは、冨安健洋(アヤックス)。日本では数少ない、1対1で世界レベルのストライカーを封じることができるストッパーだ。ブラジルも以前のような、曲芸的な技術やパスワークで相手を圧倒するようなスタイルではない。高いフィジカルとスピードを生かした「欧州的」なサッカーを繰り出してくるだろう。日本がボールを保持して相手陣内に入ったときに、不用意な失い方をするようだと鋭いカウンター攻撃を浴びかねない。
一発勝負の決勝トーナメントは、前後半の90分で勝敗が付かなければ、延長さらにはPK戦もある。日本は、過去4度1次リーグを突破しながら、ことごとくベスト16の壁にはね返されてきた。
ジーコやドゥンガらが種をまいてJリーグを成長させ、日本のサッカーはこの30年で格段に進歩した。その成果をぶつける舞台は整った。
最高の舞台、最高の相手 日本、決勝T1回戦でブラジルに挑む
サッカーのワールドカップ(W杯)で「王国」ブラジルに挑む―。長年、日本サッカーの「恩人」として、成長を手助けしてくれたブラジルに、真剣勝負を挑める機会は、願っていてもなかなか巡ってこないチャンスでもある。過去の対戦成績は1勝2分け11敗。カナリア軍団に挑戦する日本も「歴代最強」の呼び声が高い。
スコットランド―ブラジル 前半終了間際、自身2点目のゴールを決め喜ぶブラジルのビニシウス(ロイター=共同)