【フランス(世界ランキング3位)―モロッコ(世界ランキング7位)】※世界ランキングは開幕時の6月11日時点

 2018年大会優勝、2022年大会準優勝のフランスはエムバペが7ゴールと絶好調だ。決勝トーナメント2回戦ではパラグアイの執拗なプレーにもチームとしてしっかり対応し、難敵を退けた。モロッコとは前回大会の準決勝でも顔を合わせており、2―0で下している。

 アシスト役として攻撃の流れを生んでいるオリセ、昨年のバロンドールを授賞しているデンベレ、気鋭の若手であるドゥエら個の強烈さは大会随一。ウパメカノとサリバのセンターバックの安定感がチーム全体としての攻撃的なベクトルを支えている。

 モロッコは2回戦のカナダ戦で負傷交代したサイバリの状態が気がかりだ。そのカナダ戦では代役のラヒミがゴールを挙げており、勢いはある。大会のサプライズの一つといえる18歳の司令塔ブアディは、年代別のフランス代表でプレーした経験を持ち、生まれ育った〝母国〟との注目の対決となる。モロッコが前回大会の雪辱を果たすには、シンボルといえる右サイドのハキミの奮闘も欠かせないだろう。


【スペイン(世界ランキング2位)―ベルギー(世界ランキング9位)】

 2024年欧州選手権覇者のスペインは、往年の「ティキタカ」とまではいかないものの、パスをつなぐスタイルをDNAとして受け継いでいる。FIFAのスタッツによると、ここまで5試合でパス総本数は3382本で大会2位(1位は延長を1試合戦っているアルゼンチンで3446本)。中盤に君臨するロドリが個人では最多の526本のパスを出しており、2位にクバルシ(441本)、4位にラポルト(427本)とスペイン勢が上位に名を連ねている。丁寧に短いパスをつないで相手を揺さぶり、相手のほころびを突く形はお家芸。決勝トーナメント2回戦で後半追加タイムにスルーパスで中央を崩してメリノが決勝点を挙げた形は、実にスペインらしかった。

 ルカク、デブルイネ、GKクルトワら2018年大会で日本を下した「黄金世代」がベテランとなったベルギーは多彩な攻めが光る。ルカクの3点を筆頭に、トロサールとデケテラーレ、ティーレマンスが2得点するなど、7選手が計12ゴールを挙げている。フランスやノルウェーのように絶対的エースがいるわけではないが、的を絞らせない攻撃で得点を奪っている。1次リーグは苦しんだ印象が強いが、決勝トーナメント2回戦は開催国米国に4ゴールを挙げて快勝し、波に乗る。


【ノルウェー(世界ランキング31位)―イングランド(世界ランキング4位)】

 準々決勝のカードのうち、世界ランキングで最も差のある顔合わせだが、ノルウェーは世界的なFWハーランドや、イングランド・プレミアリーグ王者のアーセナルの司令塔ウーデゴールを擁し、拮抗した好勝負が期待できそうだ。

 ハーランドは決勝トーナメント2回戦でブラジルから2ゴールを挙げた。大会屈指のセンターバックのガブリエルに悠々と競り勝ってクロスに合わせたヘディングの先制点や、ペナルティーエリア外からの地を這うようなミドルシュートによる追加点はまさに規格外だった。得点王争いでもメッシを1点差で追いかける大型FWは、普段マンチェスター・シティーでプレーしており、イングランド・プレミアリーグで直近4シーズンのうち3度の得点王。イングランドにとっても大きな脅威となる。

 60年ぶりの優勝を目指す「サッカーの母国」イングランドはケーンが6ゴールと好調。アウェーの戦いとなったメキシコとの決勝トーナメント2回戦で2得点したベリンガムや、縁の下の力持ちといえる中盤のライス、サイドにはゴードンやサカといったアタッカーがおり、選手層ではノルウェーを上回る。


【アルゼンチン(世界ランキング1位)―スイス(世界ランキング19位)】

 前回王者アルゼンチンは組み合わせに恵まれたかに思われたが、決勝トーナメントに入ってから苦しい戦いが続く。1回戦は初出場のカボベルデに2度のリードを追い付かれる展開から、延長の末に3―2で振り切った。同2回戦はエジプトに2点先行されながらも、大逆転勝ちで勝ち上がってきた。メッシが8ゴールと期待通りの働きを見せ、周囲のデパウルやフェルナンデスらがもり立てる戦い方は前回大会同様だ。

 スイスはフライブルク(ドイツ)でプレーする20歳の新星、マンザンビが1次リーグから好調だったが、決勝トーナメント2回戦のコロンビア戦を負傷のため欠場した。自国開催だった1954年大会以来、72年ぶりのベスト8進出で勢いに載りたいところだが、ほかにも負傷者が多く、苦しい台所事情といえる。コロンビアとのPK戦で活躍したGKコーベルの奮闘は欠かせないだろう。

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 少し話がそれる。大会は佳境を迎えているが、ここへ来て水を差すような事態も起こった。決勝トーナメント2回戦で本来なら出場停止になるはずの米国FWバログンが、「懲戒の執行を1年間猶予する」とのFIFA規律委員会の決定により、2回戦のベルギー戦に出場したのである。確かにFIFAの規定には、規律委員会が執行を猶予できるとの条文もあるし、複数試合の出場停止のうちの一部を猶予する例はこれまでもあった(クリスティアノ・ロナルドはW杯予選で3試合停止処分を受けており、1次リーグ1、2試合目に出られないはずだったが、出場可能となった)。今回の論点は判定の是非や、規定の運用ではなく、この決定にトランプ米大統領の圧力があったと受け止められていることこそが、問題の本質だろう。

 トランプ氏は、何の悪気もなく(というよりむしろ正義を強調しながら)FIFAのインファンティノ会長に処分の見直しを要請したことを認めている。スポーツの前提はルールであり、公平性である。それが崩れたら、真剣勝負のスポーツは成り立たない。FIFAのインファンティノ会長が昨年12月に「FIFA平和賞」をトランプ氏に授与するなどして、米政権へ追従するような姿勢を見せてきたことも批判に拍車をかけた。トランプ氏の介入によって、バログンの起用が可能になったとはいえ、米国代表は異例の注目を浴びる形となり、ある意味では「被害者」ともいえる立場に立たされた(実際にチームは精彩を欠いて1―4でベルギーに敗れた)。

 サッカーの主審はレフェリーと呼ばれる。ゆだねられる人、という意味である。両チームそれぞれの視点から見れば、プレーの解釈は異なれども、最終的には判断をこの人にゆだねよう、という前提があることを示している。VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)によって、細部にまで目が行き届くようになってもいる。わずか1ミリでもオフサイドは見逃されないし、ほんの一瞬の接触でもカメラが捉えていれば、さかのぼって判定を下すことが可能だ。

 しかし、トランプ氏のようにあらゆるルールを飛び越えて、自分にだけ正義があるという主張を押し通そうとするなら、サッカーそのものが成立しなくなってしまう。1次リーグ初戦で相手の足を踏みつけたメッシ(アルゼンチン)が退場とならなかったのはなぜか。決勝トーナメント2回戦でエジプトのゴールは直前のファウルがあったとして認められなかった一方、アルゼンチンの決勝点は認められたのはなぜか。物議を醸しているプレーはある。仮に一つ一つの判定は正しいとしても、FIFAや大会に注がれる疑念がやまない世界になってしまったこともまた事実だろう。


VictorySportsNews編集部

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