両者は5ヵ月前に激闘を繰り広げている。この時はデュボアが1ラウンドと3ラウンドにダウンを喫しながらも、それ以外はウォードリーを上回って終盤11ラウンドに仕留め、世界タイトルを獲得した。王者と挑戦者の立場を入れ替えた今回、1ラウンドに倒したのはデュボアのほうで、そのまま一気に2ラウンドのストップ勝ちになだれ込んだ。
半年足らずの間に、これぞヘビー級という迫力たっぷりの試合を2度も提供したデュボアとウォードリーの両者には、ボクシングファンから惜しみない拍手が送られている。
階級の常識を覆す規格外のフレーム
ところで、イギリスのヘビー級激突から数時間後、ラスベガスではWBC(世界ボクシング評議会)スーパーウェルター級タイトルマッチをメインにしたイベントが開催された。ここで4度目の防衛戦に臨む同級チャンピオンのセバスチャン・フンドラ(アメリカ)が、ヘビー級ボクサーと変わらない体格を持つと聞けば誰もが驚くのではないか。
フンドラは身長197センチ、リーチ203センチのサイズで154ポンド(69.85キロ)が上限のスーパーウェルター級にとどまる規格外のボクサーである。
スーパーウェルター級は200ポンド(90.72キロ)以上のヘビー級の5階級下になる。114.9キロのデュボア、112.6キロのウォードリーはともに身長が196センチ、リーチは198センチである。
単に長身、痩身で70キロ未満の体重をつくるだけならともかく、世界チャンピオンとして階級をけん引しているのがフンドラのすごいところだ。28歳のサウスポー、フンドラはプロで27戦して25勝17KO1敗1分の好戦績を残している。
荒野のストイックな日々が育んだ強靭な肉体
キューバ人の父親にボクシングを仕込まれ、アマチュアを経験して2016年9月にプロデビューした。フロリダ生まれだが、一家はカリフォルニアの山中コーチェラに移り住み、自宅とトレーニング施設をつくった。ラスベガス、ロサンゼルス、メキシコといったボクシングの盛んなエリアへと出やすい場所であるのも理由だった。現在もここがフンドラのキャンプ地である。人里離れた荒野で、毎朝7時に父が鳴らすサイレンで一日は始まる。山道を走り、ジムワークをし、ボクサーとして鍛え上げられた。
フンドラ一家は6人きょうだいで、いまのところプロはセバスチャンと妹のガブリエラの2人だが、ガブリエラもフライ級の4団体統一チャンピオンである。兄妹王者は世界でもこのフンドラと日本の山中竜也&菫ぐらいしか例がない。
デビュー後のフンドラはアメリカのみならずメキシコ、アルゼンチン、ウルグアイにも出かけた。ラスベガスのビッグイベントの前座に出場するようになり、挑戦者決定戦も勝ち抜き、プロ20戦目でエリクソン・ルビン(アメリカ)に9ラウンド終了TKO勝ちを収め、WBC暫定タイトルを手に入れた。
挫折もあった。2023年4月、ブライアン・メンドサ(アメリカ)の強烈なフックを浴びて7ラウンドKO負けでWBC暫定王座を喪失。巨木が切り倒されたようなシーンは、この長身ボクサーの将来について単なる一敗以上の不安を抱かせたものだった。
しかし勤勉なフンドラはこれにめげず、コーチェラで再び鍛え直し、1年かけてリングに戻ってきた。その初戦で豪州のスター、ティム・チューに初黒星をなすりつけ、一挙にWBCとWBOの両王座に就く。以降はチューとの再戦、ベテランのキース・サーマン(アメリカ)との一戦など注目試合で連勝し、いまや「全階級通じて最もホットな階級」の主役候補と目されている。
最新のエルマル・ハドリビア(アルバニア)戦は、頑張るハドリビアを最終12ラウンドの2分59秒で打ち倒して4連続KO防衛。破格のサイズを活かしたロングレンジはもちろん、接近戦の技術もチャンピオンにふさわしい力を示し、挑戦者にとって難攻不落の城壁となっている。
体格の話に戻すと、これまでフンドラが減量に苦しんだという話は聞こえてこない。毎試合、リミットを下回る体重で計量をクリアしているのだ。新陳代謝に恵まれているとのことだが、これは本人も言うように天の贈り物だろう。