#鶴竜
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相撲
失われる幕内最高優勝の価値~白鵬の引退とスイスドローの限界
もはや異変だ。1月の大相撲初場所は西前頭筆頭の大栄翔が初優勝を飾った。これで昨年以降実施された6場所のうち、平幕力士が賜杯を手にしたのが、半分の3場所となった。白鵬、鶴竜の両横綱は休場が目立ち、出場している上位陣には安定感が欠如。相撲界の根幹には番付があり、世界的に見ても屈指のランキング社会だ。誰が制してもおかしくないという状況は、独自の秩序が揺らいで幕内最高優勝の重みが薄れているという嘆かわしい側面を併せ持っている。
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相撲
調整能力がカギとなる“荒れる初場所“~徳勝龍の偉業と時代の変化
大相撲で〝荒れる〟との形容詞で表現されるのは、3月に大阪で開催される春場所と相場が決まっていた。番付で下位の力士が上位を倒す波乱が多いとされるためだ。しかし近年、異変が起きている。1月の初場所で、幕内で最下位の西前頭17枚目、徳勝龍がサプライズ初優勝を果たした。これで初場所は5年連続で優勝未経験の力士が制覇した。もはや〝荒れる初場所〟の様相を呈している。
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相撲
力士と観客の質の低下が招く大相撲の危機
2020年初場所もすでに終盤。冬の巡業で皆勤し場所前も好調と伝えられていた優勝候補筆頭の横綱白鵬は、初日は勝ったものの2日目から2連敗。大方の予想通り、前半戦で連敗した後の休場。横綱鶴竜も同じく5日目から休場。これでまた初優勝力士が誕生するか注目が集まっている。
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相撲
2019年大相撲を振り返って~世代交代を考える
2019年の大相撲界は「世代交代」というキーワードで語られてきた。貴景勝が3月の春場所後に22歳で大関に昇進し、5月の夏場所では25歳の朝乃山が初優勝と、次世代勢力の伸びがあった。ただ、幕内優勝力士を見ると白鵬2度、鶴竜と玉鷲が1度ずつと年6場所のうち4場所で30代が賜杯を抱いた。3場所はともに現在34歳の両横綱で、若手から中堅とされる力士たちが最高位の牙城を崩すまでには至っていない。
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相撲
相撲巧者の情熱家 ~角界に愛された井筒親方を偲んで
あふれ出る人間味に勝負師としての厳しい雰囲気。大相撲で元関脇逆鉾の井筒親方が9月、急逝した。享年58歳。元関脇鶴ケ嶺の先代井筒親方を父に持ち、兄の元十両鶴嶺山、弟の元関脇寺尾とともに〝井筒3兄弟〟として脚光を浴びた。色白で胸を張った立ち姿は力士としての色気を漂わせる一方、横綱を倒して思わずガッツポーズをしたり、一度立ち合い不成立とされた後で審判長をにらみつけたり。やんちゃな一面も憎めず、ファンの心をつかんだ。現役引退後は指導力を発揮し、横綱を輩出した。色紙にサインを求められれば、好んでしたためた文字は「情熱」。本人いわく「何事もパッションは大事だからね」。個人的な印象として、まさに〝情〟の人だった。
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相撲
横綱鶴竜が実践する人材育成術~ ハラスメントの対極にあるもの
パワハラをはじめ、各種のハラスメントが社会問題化している昨今で、権力を有する者の立ち振る舞いが見直されている。そんなご時世の状況改善や人材育成のヒントになるような珍しい現象が、大相撲界に起きた。12日から始まった夏場所で、錣山部屋に所属する彩(いろどり)が新十両昇進を果たした。どこが特筆すべきことかといえば、横綱鶴竜に付いて身の回りの世話をする「付け人」たちが続々と十両に昇進し、角界で一人前とされる関取になっているのだ。そこには、後輩たちの力士人生をより良い方向に導く鶴竜の生きざまと考え方があった。