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文=新川諒、写真=新井賢一

カンファレンスの評価によって分配される放映権料も変わる

 NCAA(全米大学体育協会)にはアメリカンフットボールチームを持つ合計535の大学があり、それらはディビジョン1、2、3に区分けされている。フットボールに関しては1-A、1-AAと更に細分化されている。ディビジョン1には128校が8つのカンファレンスに区分けされ、4カ月近いシーズンを戦う。

 開幕から毎週トップ25校の順位表が発表され、このランキングに大学の名を残し続けるために全ての大学が必死で戦う。この順位表に名が残るのは大学にとって、またチームにとって大きな“ステータス”ともいえる。

 シーズン序盤は当然ながら、上位チームが敗れ、自チームがのし上がることだけを目指す。しかし、終盤に差し掛かるにつれて、同じカンファレンスに所属する大学はライバルであっても勝ち上がることを応援するようになる。なぜなら、毎週発表される全米トップ25校のランキングに同カンファレンスから1校でも多く入れば入るほど、自らの大学の評価も変わってくるからだ。

 カンファレンス全体の評価が上がれば、分配される放映権の価値も上がる。そして毎年成績上位校だけに出場権が与えられるボウルゲームで得るお金もカンファレンス全体に還元される。カレッジフットボールもプロと同じような仕組みで放映権などの収入はまずはカンファレンスに支払われ、その後に均等分配される仕組みだ。スタンフォード大学が所属しているPAC12カンファレンスでは、たとえ1位であっても12位であっても、獲得できる分配金は同じということになる。

徹底されるデュアルキャリア=文武両道の哲学

©Getty Images

 カレッジスポーツは各カンファレンスだけでなく、NCAA(全米大学体育協会)が中心となって機能している。アスリートが本業である学業を疎かにしないようGPA(成績評価値)4.0中2.0を下回った場合は練習にも試合にも参加出来なくなる厳しい規制を設けている。そのため各大学ではアスリート専用の家庭教師も用意しているが、スタンフォード大学では出場するための成績を維持するだけの指導ではなく、将来を見据えた上での指導を意識しているのだという。

 1991-94年まで4年間スタンフォード大学でアメリカンフットボールをプレーしていた現ヘッドコーチのデビッド・ショーはシーズン最初のミーティングである言葉を選手たちに伝えるという。”Play great football and graduate!” (最高のフットボールをして、卒業しろ!)

 卒業を強調することには訳があった。ショーHCは時に卒業生を応援しにNFLの試合にも足を運ぶようで、彼らを取り巻く選手の姿を見てフットボール以外の人生を充実させる重要性を意識させられるという話を河田氏は聞いたそうだ。現役中でさえも、フットボールに人生を捧げるあまり競技人生を重ねるにつれて不安を抱え、路頭に迷い、廃人のようになってしまっているプロの選手を見てきた。だから、自分が指導する選手たちにはフットボールをプレーするのは人生の全体像を考えれば微々たるものだという「デュアルキャリア」(キャリアの二重性)という考えを積極的に伝えている。

ビジネス界でも活躍する多くの卒業生を輩出するフットボール部

©VICTORY

 その考えも影響してなのか、米国スチューデントアスリートの卒業率低迷が問題視される中、スタンフォード大学のアメリカンフットボール部の卒業率は全米1位の99%以上を誇る。昨シーズンまでスタンフォード大学でプレーし、2016年ドラフトでサンフランシスコ49ersから1巡目28位指名を受けたジョシュア・ガーネットは卒業前まで医学部進学課程のコースを受けていた。ガーネットがNFLでキャリアを着実に歩み始めると同時に、多くのスタンフォード大学アメリカンフットボール部卒業生がビジネス界で素晴らしいキャリアを歩んでいるのだ。

 現在バンク・オブ・アメリカのCOOを務めるトーマス・モンタグはスタンフォード大学フットボール部でキャプテンを務めていた。以前は日本のゴールドマンサックスで共同社長も務めるなど大学時代での競技経験を受けて、今はビジネス界でも有数の存在となっている。

 それ以外にも上院議員を務め、一部では次期米国大統領候補とも言われるコーリー・ブッカーもスタンフォード大学のOBだ。ブッカーは在学中にスカラーシップを得て、アメリカンフットボール部でプレーしていた。授業と練習で多忙だったはずの大学時代に学生主導で裕福とは言えない東アルト・パルト地域の青年たちに向けてのホットラインを開設し、相談サービスを提供するなど学生時代から政治家の片鱗をすでにみせていた。

 カレッジフットボールの世界ではNCAAが文武両道をシステム化する土台をつくり、そして各大学がその意識をしっかりと植え付ける。スタンフォード大学のショーHCの言葉がまさしくそれを象徴している。

【Vol.3はこちら】なぜ大学のアメフト部が60億も“稼げる”のか? 河田剛氏に聞く米国カレッジスポーツ驚異の構造

すべてが桁違いのアメリカンスポーツ産業のダイナミズムは、アマチュアの大学スポーツにおいても際立っている。スタンフォード大学アメリカンフットボールチームでオフェンシブ・アシスタントを務める河田剛氏に、米国のカレッジスポーツの儲かり続ける「夢のビジネスモデル」についてお話をうかがった。

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新川諒

著者プロフィール 新川諒

1986年、大阪府生まれ。オハイオ州のBaldwin-Wallace大学でスポーツマネージメントを専攻し、在学時にクリーブランド・インディアンズで広報部インターン兼通訳として2年間勤務。その後ボストン・レッドソックス、ミネソタ・ツインズ、シカゴ・カブスで5年間日本人選手の通訳を担当。2015年からフリーとなり、通訳・翻訳者・ライターとして活動中。