1970年から行われているPK戦
サッカーのPK戦が行われたのは、1970年に開催されたワットニー杯のハル・シティ対マンチェスター・ユナイテッド戦が最初だったとされている。初めてPK戦を蹴ったのは、ジョージ・ベストで、初めて失敗した選手はデニス・ローだった。
その後、1976年にユーゴスラビアで開催された欧州選手権の決勝で、史上初めてPK戦によって優勝チームが決められた(5-3でチェコスロバキアが西ドイツに勝利)。そしてFIFAワールドカップでは、1982年に開催されたスペイン大会の準決勝、西ドイツ対フランスの一戦で初めて行われ、西ドイツが勝利(3-3PK5-4)している。
そもそも、PK戦を行うきっかけになったのは、日本が銅メダルを獲った1968年のメキシコ・オリンピックがきっかけだった。この大会の準々決勝で、イスラエルはブルガリアと対戦し、1-1で引き分けた。当時はまだPK戦で決着を付けるルールがなかったため、当時の規定通りに抽選によって勝ち上がるチームが決められ、イスラエルは敗退となった。この結果を受けて、当時のイスラエルサッカー協会(IFA)会長のミカエル・アルモグ氏が、FIFAに提案し、PK戦が導入されることになったのだ。
1970年のワットニー杯のときからPK戦は、先攻と後攻を決めて、各チーム5人ずつがシュートをする、現在と変わらないやり方で行われていた。しかし将来的に、このやり方が変わっていくかもしれない。競技規則を定める国際サッカー評議会(IFAB)が、両チームの選手たちが交互にシュートをする現行のPK戦の変更を検討しているというのだ。
『ABAB』方式から『ABBA] 方式に?
©Getty Images なぜ今回、PK戦の実施方式を変える必要があるとされたのか。IFABの統計調査によると、PK戦では先攻のチームが60%の確率で勝利しており、偏りが生じているという。PK戦の蹴る順番は、コイントスによって決められているが、実際にほとんどの場合でコイントスの勝者は先攻を選択しているというデータもあり、IFABはこの優位を解消するためのやり方を考えているという。
では、具体的にどのような方法を考えているのか。案として挙げられているのは、『ABBA』方式だ。
現在の交互に行われているPK戦は、Aチームが蹴ったら、次にBチームが蹴り、2巡目もAチームが先にキックを行い、Bチームが後攻になる。つまり『ABAB』方式だ。これに対して『ABBA』方式は、1巡目はAチームが先攻、2巡目はBチームが先攻と、3巡目はAチームと、先攻と後攻が交互に入れ替わるやり方だ。これはテニスでタイブレークになった際のサーブの順番と同じであり、より公平性が高いと考えられているという。
IFABを構成するスコットランドサッカー協会のスチュワート・レーガンCEOは、「現在のPK戦では、60%のケースで先に蹴ったチームが勝利しています。私たちは『ABBA』方式が、この偏りを解消する可能性があると考えており、今後、試していくことを検討しています」と語っている。
ちなみに、テニスのタイブレークでは、ポイントの総数が6の倍数になったとき、コートチェンジが行われている。サッカーでは、ゴール裏に熱狂的なサポーターがいることが多く、どちらのサイドでPK戦を行うかも、大きな影響がありそうだが…。