文=白鳥純一
かわいい見た目と厳しい批評のギャップで人気のつば九郎(東京ヤクルトスワローズ)
ヤクルトスワローズのマスコット、つば九郎。1994年のデビュー以来、愛くるしい姿で野球ファンに大人気マスコットです。ブログ(https://ameblo.jp/2896-blog/)を頻繁に更新し、ファンや選手、他球団のマスコットなどと積極的に交流する様子が見られますが、人気者のつば九郎には、もう一つの顔があります。
それは、つば九郎の特技スケッチブックを使った社会風刺。可愛らしい姿で時事的な話題をシュールな視点で語るギャップが一部のファンに人気です。最近では、神宮での巨人戦を告知する際に「きよみやくんはでません」(原文まま記載)と独自の切り口でPRしていました。
なんとか、つかみはおっけいだったかな。ながい1にちだった・・・。|つば九郎オフィシャルブログ「つば九郎ひと言日記」Powered by Ameba
つば九郎が注目されるのはシーズン中だけではありません。シーズン終了後の契約更改も話題を集める恒例イベントです。2009年から始められ、年俸は順調にアップ。2016年には約10倍の年俸22000円でサイン。球団からも広報として走り回る働きぶりが評価されています。
スタイリッシュなバク転に、書籍やDVDも発売! マスコット人気の第一人者ドアラ(中日ドラゴンズ)
©共同通信 1994年に登場し、マスコットとして多くの観客を楽しませてきたドアラ。ドラゴンのチームのマスコットがコアラなのは、東山動物園にいるコアラに由来しているからだそう。
数々のマスコットのなかでも、その活躍ぶりには目を見張るものがあるドアラ。得意のバク転パフォーマンスのほか、書籍や写真集、DVDの発売経歴があるなど、活動範囲は多岐に渡ります。ドアラの公式ブログ(http://lineblog.me/doala/)では、新商品のPRや試合でのバク転が成功したかどうかについて語られることが多く、球場に行けない人もドアラの魅力が伝わるよう最大限の工夫がされています。
悪役レスラーのような覆面で人気の非公式キャラクター、カラスコ(東北楽天ゴールデンイーグルス)
©共同通信 各球団の活躍するマスコットがチームのために活躍していますが、すべてのマスコットがチームの「公式な許可」を得ているわけではりません。
楽天イーグルスのキャラクターといえば、狗鷲をモチーフにしたクラッチとクラッチーナ。ですが、彼ら以上に奇抜で非公式キャラクターという存在ながら人気を博していたのがカラスコです。
まるで悪役のレスラーのような覆面と全身黒のユニフォームが特徴的なカラスコ。正式名はホセ・アントーニオ・S・カラスコ・ディアスで、バイクに乗ったりプロレス技をかけたりなど、他のマスコットが真似できない自由な振る舞いとアクロバティックな技で人気者になりました。楽天が優勝した2013年には優勝パレードに登場した様子などが報告されているカラスコですが、最近は活動休止気味。もしあなたが球場で出会えたら、とてもラッキーです。
驚きの手法で人気第一位! J初年度から活躍するサンチェ(サンフレッチェ広島)
サンチェ【サンフレッチェ広島】 (@sancce_jr) | Twitter マスコットが活躍しているのは、プロ野球だけではありません。サッカーJリーグに所属しているマスコットたちもプロ野球に引けを取らない活躍を見せています。
Jリーグの開幕前、J1〜J3までのマスコットたちによる「Jリーグマスコット総選挙」が行われているのをご存知ですか? 2017年の総選挙で第1位に輝いたのはサンフレッチェ広島のマスコット、サンチェ。初年度32位から、3位、そして念願の1位奪取と、急激に人気が高まっていますが、その背景には意外な理由がありました。
それはマスコットでは異例の「整形手術」。「もっとくろめを大きく、あとこうかくをあげてかわいくして下さい」(原文まま)というお望み通りに、ぱっちりとした目の印象に変わりました。ツイッター(https://twitter.com/sancce_jr)上でも整形をサポーターに報告。「(2014年)ことし2がつにせいけいしました。クリニックえらびがだいじかな?」というコメントはサポーターたちの笑いを誘ったそうです。
自由でいたずら好き! ヒール役でも大人気のベガッ太(べガルタ仙台)
©Getty Images 2016年の総選挙で第1位だったのはベガッ太。昨年は惜しくも2位でしたが高い人気はいまだ健在です。ベガッ太の特徴は、メーンマスコットでありながら、ヒール役設定のところ。鷲をモチーフにしたかわいらしい見た目とは対照的に、かなりのイタズラ好き。サポーターだけではなく、ときには対戦チームのチアガールをナンパするなど、かなりの自由奔放。
しかし最近では、書籍を出版したり、大好物のほやをPRした功績などが認められ、「日本ほや協会」の会長に就任するなど、多岐にわたる活躍を見せています。
多彩なパフォーマンスで観客を魅了する東京ドロンパ(FC東京)
©Getty Images 抜群な運動神経を生かしたパフォーマンスが人気なのが、FC東京のマスコット、東京ドロンパ(2017年5位)。ローラーブレードや一輪車のほか、ジャズからヒップホップまで幅広いジャンルのダンスで、来場者を楽しませてくれます。
観客のなかには「サッカーに興味なかったけど、ドロンパが可愛いのでスタジアムに来てしまう」という方もおり、FC東京の人気拡大に多大な貢献を果たしています。ヴァニッシングスプレーを使ったパフォーマンスなど、流行も頻繁に取り入れる傾向があるので、今後も新たなパフォーマンスで観客を魅了することが期待されます。
仕事サボって試合に来て! を続けて書籍を出版したふろん太(川崎フロンターレ)
©Getty Images 芸達者な東京ドロンパに対して、密かにジェラシーを抱いているのが、多摩川クラシコの対戦相手である川崎フロンターレのマスコット、ふろん太(2016年総選挙13位、2017年は不出場)です。ツイッター上(https://twitter.com/kawasaki_f)では東京ドロンパのことを「知人」と呼び、明らかに気にかけているものの直接名前で呼んだりすることはない微妙な立ち位置を取り続けています。
ふろん太が得意とするのは、ツイッターやブログを使った広報戦略活動です。一人でもスタジアムに呼び込もうとする姿勢は目を見張るものがあり、ときには言動がエキサイトすることもあります。
試合の前日には「きょうはお仕事頑張る日にしてね。明日はエスパルス戦があって、よろしくやっちゃう日だから。」(4月20日)
「きょうはそろそろ切れあげよっかなーってみんな。正々堂々と早めに出て等々力に来るために、もう一踏ん張りしたらいいよ。じゃ、僕はもうお仕事おしまい。明日ね、ばいばーい。」(2月21日)
と、次の日に「仕事があってスタジアムに来れない」という人を少しでも減らそうとインターネットで呼びかけています。
試合日になると、広報活動はさらにエスカレート。
「これを見てるみんなー。もうお仕事落ち着いたかなぁ。メドたってなかったら、もうきょうは切り上げて明日にしちゃえばいいよ。明日きょうのぶんを頑張ればいいかなって思う、試合のこと気になって集中できないだろうしね。」(4月12日)
「土曜も出勤なんだなぁ…ってみんなー。今日は朝から頑張っている姿を全開で見せて、お昼になってもそのままガツガツって姿を見せておいて…14時にやっと終わったってことにして遅いランチがいいよ。で、DAZNで観るの。後半までは厳しいと思うから続きの作戦は考えてね」(4月7日)
などと、「仕事よりもサッカーを優先すべし」と必死に訴えていた成果が実り、書籍の出版も実現しました。書籍発売時にも知人のぶんまで併せて買うように勧めたり、感情的に見えて営業策士な部分もある様子。誰よりもクラブへの想いが伝わる情熱的なマスコットです。
さまざまな手法で営業活動を頑張っているスポーツチームのマスコットたち。表現方法はさまざまですが、「試合観戦に来て欲しい」「少しでもチームに興味を持って欲しい」という気持ちはみんな一緒。もし、少しでもキャラクターに共感し、興味をお持ちになられたようでしたら実際にスタジアムに足を運ばれてみてはいかがでしょうか?