文=Noriko NAGANO

かつてはラモス瑠偉監督も指揮

 ブラジルで生まれたビーチサッカーの世界選手権が初めて開催されたのは、95年のことだ。リオデジャネイロのコパカバーナ・ビーチで行われ、開催国のブラジルが優勝した。05年からはFIFA(国際サッカー連盟)主催となり、コパカバーナ・ビーチで装い新たに第1回FIFAビーチサッカーW杯が開催。アジアからタイとともに招待された日本は、元サッカー日本代表のラモス瑠偉監督のもと、4位の成績を収めている。

 以来、ビーチサッカーW杯は09年までは毎年、それ以降は2年に一度開催され、今大会で9回目を迎える。日本代表はこれまで連続出場を果たしており、06年の第2回大会ではベスト8、その後2大会はグループステージで敗退したが、復帰したラモス監督に率いられた09年の第5回大会では、元サッカー日本代表の前園真聖が招集されて話題を集め、チームもベスト8入りを果たした。

 13年の第7回大会では最多4度の優勝を誇るブラジルを追い詰めたものの3−4と敗れ、ベスト8で散った。15年の前回大会では、ラモス監督からバトンを受けたマルセロ・メンデス監督のもと、ベスト4進出を懸けたイタリア戦に2−3と敗れた日本は、鬼門となっているベスト8超えを今大会で目指している。

サッカーやフットサルとの違いは?

©Getty Images

 サッカーやフットサルとビーチサッカーの大きな違いは、スパイクやシューズを履かず、裸足でプレーすること。そのためビーチサッカーボールは、スポンジコーティングされ、サッカーボールよりも柔らかい。ゴールキーパーは、投げるときのコントロールを重視して、グローブを使わず素手でプレーする選手もいる。

 ピッチとして使用されるビーチの砂は粒が細かく、40㎝以上の深さがある。デコボコした砂の上でプレーするため、リフティングを用いたドリブルや浮き球のパスが多用され、ゴールシーンだけでなく、華麗なテクニックの応酬や砂を巻き上げて繰り広げられる競り合いも見どころだ。

 砂のクッションで衝撃が少ないうえに、オーバーヘッドシュートの態勢に入ると、邪魔をしてはならないルールがあるため、アクロバティックなプレーでゴールを狙う選手も多く、そうしたプレーでゴールが決まると、観客が一気に盛り上がる。

 試合は12分(プレーイングタイム)×3ピリオド。フットサル同様1チーム5人で試合が行われ、選手交代は制限なし。ピッチはフットサルよりやや大きく、正方形に近い形で、ゴールもフットサルより大きい。最近はゴールキーパーを使う戦術が主流で、ゴールキーパーがロングシュートを打つことも珍しくない。わずか数十秒で試合が大きく動くため、一瞬も見逃せない。

日本はブラジルと同居する「死のグループ」

©Getty Images

 27日に開幕する今大会には、各大陸予選を勝ち抜いた15チームと開催国のバハマを合わせた16チームが出場する。4チームずつ4グループに分かれ、総当たり方式でグループステージを戦い、上位2チームが決勝トーナメントに進出する。

 アジア予選で3位だった日本は「死のグループ」と言えるグループDに組み込まれ、初戦でヨーロッパ予選優勝のポーランド、2戦目で前回準優勝のタヒチ、3戦目で最多優勝を誇るブラジルと対戦することになった。

 11年、13年で優勝し、前回3位のロシアがヨーロッパ予選で姿を消したが、そこに入ってきたのがポーランド。日本は、バハマ出発直前に仮想ポーランドとして対戦したドイツとの国際親善試合で2連勝し、いいイメージをつかんだ。

 2戦目に当たるタヒチは日本と戦い方が似ており、昨年の国際親善試合でも対戦。互いによく知る相手だ。その試合では日本が2連勝を飾ったが、タヒチはケガで来日できなかったメンバーもいた。今大会では1カ月程前から現地に入っており、しっかりと仕上げてくるだろう。

 グループステージ最後に対戦するのは、ブラジル。13年W杯で日本は準々決勝でブラジルと対戦して3−4で敗れたが、延長戦に持ち込めるチャンスもあった。昨年10月、サンパウロ州サントスでの対戦では4−4の同点から延長戦を経てPK戦へと持ち込んだものの、敗れた。王国ブラジルに勝てば世界を驚かせることができるため、選手たちが一番勝ちたい相手である。

 開催国の試合には朝からチケットを求めて長蛇の列ができ、チケットを取れなかった観客は敷地内に設置される大スクリーンなどに集まって声援を送る。13年のタヒチ大会ではタヒチが初のベスト4、15年のポルトガル大会ではポルトガルが初優勝に輝くなど、ホスト国が結果を出しているが、果たして今大会のバハマはどうか。

 すでに現地入りし、直前合宿を行っている日本チームは、4月21日にホスト国バハマと練習試合で対戦。12人の選手全員が出場したうえに2ケタ得点をマークして10−4と勝利した。W杯で勝つために2年間かけて作り上げた日本チームは、大会の雰囲気を感じながら、仕上げ段階に入っている。


Noriko NAGANO

テレビ番組の取材でJクラブの練習場に足を運んだことをきっかけに、サッカーの現場に転向。その後、ビーチサッカーと出会い、W杯の取材は今大会で4回目となる。