文=平野貴也
初優勝を目指す日本代表
かつては「ワールドユース選手権」の名前で知られ、中村俊輔(磐田)らが後のフル代表入りのステップとした大会「FIFA U-20ワールドカップ」が20日、韓国で開幕を迎える。日本のフル代表がジョホールバルで初めてワールドカップのアジア予選を勝ち抜いた1997年以降に生まれた世代が参加対象となる。U-20日本代表は、全国高校選手権で活躍してプロに進んだFW小川航基(磐田)やFW岩崎悠人(京都)、G大阪の育成組織で育ち16歳でトップチームデビューを果たしたMF堂安律(G大阪)、高校1年次にフランスへ渡り早くから海外に身を置いているGK山口瑠伊(ロリアン)、そして小学生時代にバルセロナに所属し、帰国後は15歳でJリーグ最年少ゴールを記録するなど話題を呼んでいる高校1年生のFW久保建英(FC東京U-18)ら様々な経歴を持つ21人で挑む。19日、スウォンで行った練習では、エースの小川が好シュートを連発。堂安も鋭いキックをゴールへたたき込んで好調ぶりを見せつけた。日本の過去最高成績は、小野伸二、稲本潤一(ともに札幌)、遠藤保仁(G大阪)らを擁した1999年大会の準優勝。優勝すれば初の快挙となる。
大会は、4チームずつ6組に分かれてグループリーグを戦い、各組上位2チームと、3位のうち成績上位の4チームが決勝トーナメントに進む。昨年のU-19アジア選手権で初優勝を飾った日本は、南米王者のウルグアイ、欧州2位のイタリア、アフリカ4位の南アフリカと同じD組。U-17ワールドカップで世界との戦いを経験している主将の坂井大将(大分)は「あのときは良い雰囲気でやれていて、初戦を勝ってグループステージ全勝で行けた。初戦を勝つことが大事だと思うし、それを伝えることが大事だと思う」と、まず初戦に集中する構えを示した。勢いに乗り、南米と欧州のトップクラスがひしめく厳しいグループを勝ち抜くためには、初戦の南アフリカ戦で勝利を収めることが重要となる。
大会全体では、前回王者のセルビア、過去優勝5回準優勝4回のブラジルがそれぞれ欧州、南米の予選で敗れており、両地域のレベルの高さがうかがえる。特に欧州勢では、すでにフル代表や強豪プロチームで活躍していて、出場対象年齢でありながら、出場しない選手もいて選手層の厚さがうかがえる。日本が対戦するイタリアは、GKジャンルイジ・ドンナルンマ、MFマヌエル・ロカテッリ(ともにミラン)、FWフェデリコ・キエーザ(フィオレンティーナ)が招集されていない。また、フランスのFWキリアン・エムバペ(モナコ)やポルトガルのレナト・サンチェス(バイエルン)も招集を見送られている。
あの名ストライカーの息子も参戦
©平野貴也 南米のウルグアイ、アルゼンチン、欧州のフランス、イタリアは優勝候補と言えるだろう。日本はU-19でチームを立ち上げて以降、何度も海外遠征を行い、ブラジルやアルゼンチン、フランスなどと対戦して来た。MF原輝綺は今年1月に話を聞いた際に「フランスとアルゼンチンは、アジアより格段に上。すべてのプレーが2~3ランク上。スピード感が違う。ボランチがアタッカー並に速く、ドリブルで中央突破をされた。うまく駆け引きをしないと簡単に置いて行かれるし、追いつけない」と肌で感じた強さを率直に明かした。ただし、欧州と南米だけが強敵とは限らない。アフリカ勢は、2013年大会でガーナ、2015年大会ではマリ、セネガルが4強入り。日本で直前合宿を行ったU-20米国代表もバランスが整った上でタレントを擁する好チームだ。
また、日本では久保が注目を集めているが、開催国の韓国でもバルセロナで育った選手が大きな期待を受けている。昨年のU-16アジア選手権で日本から2ゴールを奪ったMFイ・スンウと、彼とともにバルサBに所属しているペク・スンホだ。ちなみに、韓国はC大阪でプレーするGKアン・ジュンスもメンバー入りを果たしている。ほかに、少し見方を変えると、古くからのサッカーファンに馴染みのある名前も見つかる。米国GKジョナサン・クリンスマンは、元ドイツ代表FWユルゲン・クリンスマンの子息。イタリアの監督は、元代表MFエバーニが務めている。
U-20ワールドカップの最大の楽しみは、今後の世界を引っ張る選手たちの台頭を感じることだ。U-20は、3年後に開催される2020年東京五輪を年齢制限の23歳以下で迎える世代でもある。東京五輪では誰に期待ができるのか、日本にどのような成績を期待できるのか、どこがライバルになりそうかという見方もできる。もちろん、中村俊輔らがそうであったように翌年にフル代表に呼ばれるなど飛躍する日本の選手も出て来てもらいたいところだ。数年後、ワールドカップや欧州各国トップリーグのニュースに登場する選手を「U-20ワールドカップの時に気になった、あの選手か!」と振り返ることになるかもしれない。3年後の東京五輪、あるいは来年のロシアワールドカップで活躍する選手がいることは、ほぼ間違いない。日本の活躍を期待しながら大会の動向を幅広く見れば、今後の主要大会がさらに面白い物になる。読者の方には、現地観戦でも、メディアを通してでも、大会を楽しんでもらいたい。