文=池田敏明

「よりよいW杯にするために、我々はすでに動き出している」

 2017年5月24日(水)、表参道ヒルズ スペースオーにおいて、「ウブロ ポップアップブティック表参道」期間限定オープン記念イベントが開催された。イベントでは2018 年ロシア・ワールドカップで優勝国に贈られる優勝トロフィーが日本で初めてお披露目され、ウブロアンバサダーで日本代表監督のヴァイッド・ハリルホジッチ氏、元サッカー日本代表の中田英寿氏、『キャプテン翼』の作者である高橋陽一氏が登壇し、W杯や『キャプテン翼』にまつわるエピソードを語った。

 ハリルホジッチ監督はこの日、日本に初お目見えした黄金のトロフィーについて「世界で最も価値があり、美しいもの」と表現。「すべてのサッカー関係者が求めているもので、これを持ち帰るにはW杯で優勝しなければなりません」と、トロフィーがいかに高い価値を持っているかを語った。

 18年のW杯はロシアで開催される。ハリルホジッチ監督は、大会自体に大きな期待を寄せているようだ。

「ロシアW杯は素晴らしい大会になると思います。アジア最終予選のイラク戦(6月13日)を終えた後、私はコンフェデレーションカップを視察するためにロシアに向かいます。私が目星をつけている日本代表のキャンプ予定地も視察に行きます。よりよいW杯にするために、我々はすでに動き出しているのです。しかし、まだアジア最終予選を突破していないので、油断は大敵です」

 6月13日のイラク戦はアウェイゲームだが、イラク国内情勢の影響によって試合は中立地であるイランのテヘランで開催される。難しい戦いになることが予想されるが、ハリルホジッチ監督はどのように見ているのだろうか。

「クオリティー、フィジカルに秀でたイラク代表はとても強い相手です。決定的な試合になるでしょう。グラウンド状態が悪いようですので、JFA(日本サッカー協会)を通じてグラウンドの管理者にコンディションの改善をお願いしました。可能な限り良い準備ができていると思います」

 最終予選のイラク戦に臨む日本にとって追い風となり得るのは、海外組が結果を残していることだ。FW大迫勇也(ケルン)はブンデスリーガ最終節で1ゴール1アシストを記録し、FW乾貴士(エイバル)はカンプ・ノウでのバルセロナ戦で2ゴールを挙げる活躍を見せた。

「海外組のゴールラッシュ、素晴らしいことです。代表の試合でもゴールを決めてほしいですね。特に大迫は身長が高いので、空中戦でも活躍してくれると思っています」

©VICTORY

「ミランで試合に出られないようだったら、出られる環境に移りなさい」

 チームの中心的存在であるFW本田圭佑(ミラン)は、ホーム最終節のボローニャ戦で直接FKを決め、その後、開設した自身のツイッターアカウントで、16-17シーズン限りでミランを離れることを明言した。ハリルホジッチ監督は、本田に対する変わらぬ信頼を明言した。

「ケイスケとはよく連絡を取り合っていますし、今回も話をしました。ミランで試合に出られないようだったら、試合に出られる環境に移りなさいと話しました。そのほうが、個人的にも代表チームにとってもいいと思っています。彼は試合に出ていない間もものすごいトレーニングを積んでいますし、行動、考えともに素晴らしい。私は彼を信頼しています。ケイスケはもうすぐ30歳ですので、これからは“伸ばすこと”よりも“キープすること”に重きを置いたほうがいいと思います。スキル、フィジカルともに素晴らしいものを持っていますので、公式戦で定期的にプレーして、これらをキープする必要があります」

 未来の日本代表を担うべきU-20日本代表の選手たちが現在、韓国で行われているU-20W杯で奮闘している。グループステージを1勝1分け1敗という成績で乗り切り、決勝トーナメント進出を果たした。

「U-20代表の内山篤監督とも会い、私の考えを伝えて激励しました。とても良い世代で、豊かなタレントが大勢いますので、大切に育成しなければなりません。2020年の東京オリンピックに出場する選手も出てくるでしょう。彼らがU-20W杯で活躍すれば、次のA代表の強化がやりやすくなります。そのためにも、我々が100パーセントのサポートをしていかなければなりません」

 ハリルホジッチ監督が語る「豊かなタレント」の一人が、15歳にしてこの大会に参加しているFW久保建英(FC東京U-18)だ。この稀有なタレントに対しても、ハリルホジッチ監督は大きな期待を寄せているようだ。

「多くの日本国民が彼の話をします。しかし、まだ早いと思います。能力はあると思いますが、まだ若い。それでも、早くA代表に入ってくれればいいと思います。私は若い世代の選手にプレー機会を与えることが大好きですからね」


池田敏明

大学院でインカ帝国史を専攻していたが、”師匠” の敷いたレールに果てしない魅力を感じ転身。専門誌で編集を務めた後にフリーランスとなり、ライター、エディター、スベイ ン語の通訳&翻訳家、カメラマンと幅広くこなす。