文=中西美雁

結果を残してきた中垣内監督の新たな挑戦

日本バレーボール協会は7日、都内で会見を行い、12日に開幕するワールドグランドチャンピオンズカップ男子大会に向けた日本代表のメンバーを発表した。

以下、発表された14名の全日本男子メンバー

選手名(年齢、ポジション、身長)

大竹壱青(21歳 WS、201cm)
深津英臣(27歳、セッター、180cm)
藤井直伸(25歳、セッター、183cm)
山内晶大(23歳、MB、204cm)
出耒田敬(26歳、WS、200cm)
柳田将洋(25歳、WS、186cm)
井手智(25歳、リベロ、174cm)
山田脩造(24歳、WS、193cm)
山本将平(26歳、WS、187cm)
石川祐希(21歳、WS、192cm)
李博(26歳、MB、194cm)
高橋健太郎(22歳、MB、202cm)
小野寺太志(21歳、WS、201cm)
浅野博亮(26歳、リベロ、178cm)

ぱっと見た印象は「若い」。最年長が深津主将の27歳。大学生も3人いる。全日本女子チームの平均年齢が高めなこともあり、対照的な印象だ。深津主将は、「チームの年齢が若返ったことで、言いたいことが言い合えるようになった。僕から見て、去年までは、石川や柳田は、言いたいことがあっても全部は言わないで我慢しているところがあったが、今年はどんどん言ってくれている」と話す。石川自身も「年齢が近いのでやりやすいのは確かですね」と認めていた。

そして、中垣内祐一監督が強調するのは「2メートル以上の選手が5人もいる。これは全日本男子史上一番の高さではないか」という高さである。さらに「2020東京五輪だけでなく、2024パリ五輪も見据えたメンバーを選んだ」とのこと。

ガイチジャパンは、ワールドリーググループ2で準優勝したあと、今シーズン最大の目標である世界選手権アジア最終予選を首位で通過し、来年の世界選手権の出場権を獲得した。続くアジア選手権でも優勝を果たし、ここまで順調な歩みを見せている。これまでの成果を背景に、中垣内監督が「大胆な試みをした」というのが、ミドルブロッカーの小野寺太志のウィングスパイカーへのコンバートだ。攻撃専門のオポジットではなく、レセプション(サーブレシーブ)もするサイドアタッカーへの転向である。小野寺は、過去にレセプションの経験は皆無だという。世界的に見ても、ともにレセプションをしないオポジットとミドルのコンバート、または兼任や、オポジットとレセプションアタッカーのコンバート、兼任は例があるが、ミドルとレセプションアタッカーの例はあまり見ない。それだけ、中垣内監督の「大型化」への意気込みが見られるメンバー構成となっている。

未来を見据えての大胆な選出とコンバート

中垣内監督は、世界選手権予選の直前にも、出耒田をミドルブロッカーからオポジットにコンバート。世界選手権の切符が掛かったオーストラリア戦では、その出耒田をオポジットで起用して見事に勝ちきっている。

出耒田や小野寺のコンバートは、早い段階からフィリップ・ブランコーチと話し合っていたという。当初ブランコーチはコンバートに懐疑的だった。それでも、2m超の人材がミドルに集中していることで、少なくとも二人はベンチアウトになってしまうのが「もったいない」ということを理解してくれたようだ。出耒田のオポジットへのコンバートが世界選手権予選直前になったのは、その時点ではミドルブロッカーが出耒田を入れて3人しかおらず、高橋健太郎が合流してミドルの控えを確保できたために実行したとのことだった。

もう一人のオポジット、大竹壱青も、1年前にミドルブロッカーから転向したばかり。中垣内監督は、「コンバートして2年や3年で、果たして1流の選手になれるかというのは難しいところがあるが、それでもあえてやらなければならないと思った」と決意を表明している。

コンバートといえば、もう一人。2015年から全日本に選ばれている浅野博亮が、守備専門のポジションであるリベロ登録となった。浅野は178cmとバレー選手としては非常に小柄ながら、キレのあるスパイクで会場を盛り上げてきた。中垣内監督は、「レセプションの数字はそれほど良くないが、ディグ(スパイクレシーブ)はいい。何より、雰囲気がよく、コートの中を盛り上げてくれる献身性がある。アタッカーとしてみると、やはりブロック面で前衛で使うことは難しく、説得してリベロになってもらった」ということだった。

そして、追加登録の山本将平。彼は移籍の際に所属チームの同意書が得られず、リーグに1シーズン出場できなかったため、全日本の登録締め切りには間に合わなかったが、5月に行われた黒鷲旗で、目覚ましい活躍を見せ、JTの優勝に貢献した。これが中垣内監督の目に止まり、「機会があったら追加で呼んでみよう」と思っていたのを実現した形となる。

グラチャンでは、これまでの好成績を背景に、3年後、7年後を見据えた大胆な選考を行ったガイチジャパン。強豪国揃いの今大会で、中垣内監督の思惑はどれほど果たせるのだろうか。

毎年世界大会のあるバレーボール 2017年は「グラチャン」イヤー

バレーボールの国際大会は頻繁に地上波で放送されている。「4年に1度の世界一を決める大会」というフレーズが頻繁に聞かれるが、それもそのはず。毎年「4年に1度の世界一を決める大会」があるのだ。今年、開催される「グラチャン」ことグランドチャンピオンズカップは、どのような大会なのか。

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中西美雁

名古屋大学大学院法学研究科修了後、フリーの編集ライターに。1997年よりバレーボールの取材活動を開始し、専門誌やスポーツ誌に寄稿。現在はスポルティーバ、バレーボールマガジンなどで執筆活動を行っている。著書『眠らずに走れ 52人の名選手・名監督のバレーボール・ストーリーズ』