文=VICTORY SPORTS編集部

パヴィチェヴィッチとの個人トレーニングが転機に

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Bリーグ2年目のシーズンが開幕し、どのチームも4試合を消化した。本編のテーマである馬場雄大について、まずはざっとおさらいしておきたい。1995年11月7日生まれの21歳。元日本代表選手の父、馬場敏春が監督を務める富山第一高校時代に注目され、筑波大学へ。筑波大では去年までインカレ3連覇と負け知らずで、大学卒業を待たずしてBリーグ参戦を発表した。アルバルク東京に加入し、9月30日の開幕戦でプロデビューを果たしている。

彼は筑波大の4年生でありながらアルバルク東京とプロ契約をかわした。Bリーグには『特別指定制度』もあり、筑波大の同級生で同じく日本代表候補の杉浦佑成はこの制度を使い、サンロッカーズ渋谷でシーズン後半戦をプレーしている。今年の馬場も、大学最後のシーズンをプレーし、Bリーグの後半戦から特別指定選手として参戦することも可能だった。ただ、馬場は昨シーズンも特別指定制度を使っていない。経験を積むにはもってこいの舞台なのだが、彼はそれを選ばなかった。

その間、馬場には転機があった。

日本代表は昨年11月に体制を刷新した。それまでの馬場は「経験を積ませるため」の練習参加を主として代表に呼ばれていたが、2019年のワールドカップ、2020年の東京五輪を見据えたチーム作りが本格始動したことで、「戦力」として代表に定着することになった。その日本代表にコーチとして呼ばれたのがルカ・パヴィチェヴィッチだ。チームを率いて勝たせる『指揮官』よりも『教え魔』の印象が強いパヴィチェヴィッチは、若い馬場のポテンシャルを高く評価し、個人トレーニングを行っていた。Bリーグ1年目のシーズンが佳境を迎える中、馬場は代表トレーニングセンターにこもりっぱなしで、世界を知るコーチの指導を受けていたのだ。

実は馬場は、筑波大を中退してアメリカに渡るつもりでいた。渡邊雄太、八村塁という同世代で親交の深い2人がアメリカの大学で素晴らしい成長を見せている。彼らへのライバル心も、一緒の舞台でやりたいというあこがれもあった。

日本の価値観の中では馬場は期待の若手だが、世界のスタンダードとなると旬を過ぎつつある。今年のNBAドラフトで指名され、間もなく開幕するNBAでデビューするルーキーたちの多くが大学2年の八村塁と同学年だ。そこに焦りを感じないはずはない。

圧倒的な強さでインカレ3連覇を成し遂げて最上級生となった馬場に、もはや大学バスケで学ぶものはなかった。「より高いレベルへ」と考えた場合、アメリカに目が向くのは当然だ。

しかし、「Bリーグで力を付けたほうがいいのではないか」という意見もあった。パヴィチェヴィッチもその一人で、「Bリーグでプロを経験することには意味がある。Bリーグで1シーズンやって、準備をしてからでも遅くはない」とアドバイスしたそうだ。そして、代表コーチの契約期間が切れたパヴィチェヴィッチはアルバルク東京のヘッドコーチに就任する。「Bリーグで力を付ける」となれば、馬場がA東京を選ぶのは自然な流れだった。

レベルの高い舞台でプレーできることは「楽しい」

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日本バスケ界の『期待の星』である馬場だが、挫折も経験している。フリオ・ラマスが新ヘッドコーチとなった8月のアジアカップに、日本代表メンバー12名の一員として参加した馬場だが、大きなインパクトは残せなかった。身体能力を生かしたダイナミックなランニングプレーとダンクは大きな魅力だが、経験の浅さを露呈した面もあった。韓国に逆転負けを喫した試合では相手の勢いに飲み込まれ、戦術的に混乱してしまい、途中からはベンチを温める屈辱を味わっている。

アルバルク東京でのデビューからの4試合を見ても、まだ迷いながらプレーしている様子が見て取れる。ただ、豪快なダンクで観客を沸かせるなど、自らのストロングポイントは十分に発揮しており、Bリーグの中でもトップレベルの能力があると見ていいだろう。問題は戦術面、状況に応じた瞬時の状況判断などバスケットIQの部分。ただ、それは場数がモノを言う部分であり、パヴィチェヴィッチの下で試合を重ねることでの向上が見込まれる。指揮官はそれを予見して「Bリーグで1年を」とアドバイスしたのだろう。

それに、馬場はまだ大学4年生だ。他の選手が開幕に向けて万全の準備を整えた中、彼はアジアカップ終了からBリーグ開幕の間に、高校で教育実習を行っていた。A東京のチーム練習には10日程度しか参加できないままの「ぶっつけ本番」である。

10月10日の新潟アルビレックスBB戦を終えて、馬場はプロ選手としてのプレーについて「楽しい」と表現した。

「ゲームの流れが本当に一つのボールで変わってしまうし、外国籍選手もいて、一つのプレーがすごく大きいと感じます。大学だったら経験できていないレベル、雰囲気でやれているのが一番です。日本代表選手とも外国籍選手ともマッチアップして、全開で思いきってプレーしています。大学だと、どこか相手を見て気を抜いていた部分がありました。それが全力でやれる楽しみがあります」

2020年までに自分をどこまで高められるかが馬場の挑戦である。自身のキャリアデザインを考えた際にA東京でプレーすることは非常に大きな選択となったが、「Bリーグに来たことは正解です。いろんな経験ができているので」と迷いはない。

まだ21歳、リーグでも屈指のタレントが揃うA東京でいきなりすべてをやる必要はない。馬場自身もプロのレベルで迷いがある中で、「自分にできることを一生懸命やろう、自分の強みを出そうと心がけています」と、自分の強みを出すことを一番に考えている。

丸くなるな、星になれ──。渡邊雄太と八村塁とはまた違うアプローチで世界を目指す馬場が、この1年でどこまで成長し、Bリーグでどれだけの結果を残せるか。大いに注目に値する。

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